博多町家 ふるさと館

所得税・住民税の一部を他の自治体に納められる「ふるさと納税」

「住民税」と言う税目の特性上、原則として現在住民登録してある地方自治体に対して納める制度設計になっています。しかし、2008年以後は「ふるさと納税」と言って納税額の一部をそれ以外の地方自治体に対しても納められる様になりました。名称は「ふるさと納税」となっていますが、今まで一度も住所登録していない地方自治体に対しても納められます。2011年には合計70万人以上の人が同制度を活用していて年々利用者が増え続けている様です。また、市町村に限らず都道府県に対して納付する形も認められていますが、何故か都道府県に対して活用する人は少なく、「ふるさと納税」の約87%が市町村に対する納税で占められています。

①「ふるさと納税」の仕組み

正確には「ふるさと納税」は「任意の地方自治体(住民登録してある地方自治体を含む)に対する寄付金」と言う形を採っていて、寄付した金額中2000円を超える部分が所得税・住民税から軽減される(1万円寄付すると8000円軽減される)システムになっています。確定申告時、「ふるさと納税」として申告すると寄付金が所得税・住民税の軽減対象になります。

ただし、全額軽減対象となる限度額が設けられていて、{課税所得×0.01/(1-最高税率)}が上限です。要するに、最高税率15%(課税所得195万円以下)の人の場合、0.01÷0.85≒0.012、課税所得の約1.2%以下の寄付金が全額軽減対象となり、最高税率55%(課税所得4000万円超)の人の場合、0.01/0.45≒0.022、課税所得の約2.2%以下の「ふるさと納税」が全額軽減対象になります。

②生まれ故郷に納税するには

「ふるさと納税」を活用する中で最も多くなると思われていたパターンが本人の出身地や前住所へ寄付する形です。設計者の予想通り、関係する制度が作られてから数年間は大部分がこの形でした。学生の場合(アパートを借りていても)住民票をそのままにして置く例が大半を占めますが、就職や婚姻に伴い引っ越す様な場合、必然的に住民票を移しているはずなので、生まれ故郷に関しては今まで1円も住民税を支払わなかった人が多い様な気がします。その様な地方自治体に納税するために「ふるさと納税」と言う制度が存在しています。特に農村部出身者の場合、過疎化している出身地の財政を改善するため「ふるさと納税」を活用している人が多い様です。

③愛着ある地方自治体に納税する人も

「ふるさと納税」は全国各地のあらゆる地方自治体に対して可能なため、本人が愛着を持っている市町村に寄付する人も数多く、具体的には、母校の所在地や恩師の出身地、思い出の観光地やお気に入りのメディアの舞台等、寄付先は色々考えられます。また、国や都道府県の取り分を少しでも減らすため、住んでいる市町村に対し「ふるさと納税」する人も稀に存在する様です。

2011年には東日本大震災に伴い被災地へ寄付する人が増えました。ただし、メルトダウンが発生している福島県内の市町村(一般的に福島県は浜通り・中通り・会津地方の3つに別れ、山脈に隔てられているせいかお互い交流が殆どないもの、寄付者の中には福島市等に寄付してしまった人も多かったはず)だけに寄付金が集まってしまった様です。より震源に近く震度が高く壊滅的被害を受けた宮城県や岩手県への寄付が少なかった様です。