ドイツのライファイゼン銀行(Raiffeisen Bank)が、欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利の影響を理由に、10万ユーロ(約1130万円)以上の預金者に、今年9月から「0.4%の懲罰金利」を課す決定をくだした。

欧州の銀行間では近年、無料の普通口座の廃止や手数料の値上げが相次いでおり、今回のライファイゼン銀行の決定により、懲罰金利制度を用いる銀行が増加するのではないかと見られている。

マイナス金利政策の副作用と顧客の板挟みとなった欧州銀行

欧州域内の通貨安誘導を目的に、2012年ドイツの6カ月物国債を皮切りに導入されたマイナス金利は、その後フィンランド、スイス、フランス、デンマーク、オーストリアなどの欧州国に瞬く間に広がり、長期的な金利政策傾向として定着。

2014年にはECBが銀行からの準備預金に、マイナス1%の金利を導入。昨年には追加緩和として0.3%、今年3月には0.4%にまで引きさげた。

EU離脱で大きく揺れる英国も8月、経済の下振れ対策として、英国史上最低水準だった金利を0.5%から0.25%に引きさげ、ゼロ金利に達する可能性は否定しているものの、さらなる追加緩和政策を投じる準備が整っている意向を示している。

EU圏における低金利への動きは、ユーロ安による輸出増加、実質GDPの成長といった効果をもたらしている反面、様々な副作用も生みだしている。

その代表例が「銀行にのしかかる負担」である。銀行側は「マイナス金利が発生するから」という理由で、自社金庫に巨額の富を積みあげていくわけにはいかない。

各中央銀行が準備預金制度に基づき、自国の金融機関に「法定準備預金額(最低預けいれる義務のある金額)」を設定しているほか、金庫に保有している富が増えれば増えるほど、盗難の的にされる危惧も高まる。

しかし負担がかさむ一方で、少なくとも欧州圏でマイナス金利傾向が一転する気配はまったく見られない。