NISA 口座変更
(写真=PIXTA)

平成26年度の税制改正には、NISA口座を開設する金融機関を年単位で変更でき、勘定期間内にNISA口座を再開設できるようになることが含まれています。そこで、今回はこの改正の内容と今後の動向について考察します。


年単位で金融機関を変更できる

現行の NISA制度 では、勘定設定期間内に金融機関を変更することはできず、勘定設定期間は、2014年1月1日~2017年12月31日、2018年1月1日~2021年12月31日、2022年1月1日~2023年12月31日の3つに区分されています。そのため、勘定設定期間内は、NISA口座を開設した金融機関が取り扱っていない商品を購入できません。

しかし2015年からは、NISA口座を開く金融機関を毎年選べるようにするという改正が検討されています。税制改正後は、同一の勘定設定期間内でも一定の手続きをとると、勘定手続の非課税口座の再開設又は非課税管理勘定の再設定ができるようになります。この非課税管理勘定とは、1年あたり100万円までという投資枠のことです。手続きは、まず変更したい年の前年10月1日から1年を経過する日までの間に、「金融商品取引業者等変更届出書」を金融機関に提出します。ただし、非課税管理勘定に既に上場株式等が受入れられているときは、変更届出書は受理されません。要するに、金融機関を変更したい年の非課税投資枠を使った後は、変更できないということでしょう。金融機関が変更届出書を受理すると、非課税管理勘定を廃止し、「非課税管理勘定廃止通知書」を投資家に交付します。そして、非課税管理勘定を再設定するときは、非課税管理勘定廃止通知書を添付して、金融機関に非課税口座開設届出書を提出します。


この改正の影響

本改正により、ひとつの勘定設定期間内に、複数の金融機関でNISA口座を開設できることになり、購入できる商品の種類が増えました。たとえばNISA口座を開設しなかった金融機関でしか取り扱っていない投資信託を、次に勘定設定期間を待たずに、NISA口座で購入できるようになります。また、株式の注文方法など、NISA口座を使ってみて機能に満足できない方は、他の金融機関の機能を使ってみやすくなります。金融機関にとっては、新しくNISA口座を獲得できる機会が増える一方、NISA口座を最大4年間キープできるというメリットはなくなりました。そのため、手数料無料などのキャンペーンや優遇がなくなるのではないかという意見もあります。
しかし、NISA口座を維持し、次年に増加させるためにキャンペーンを行うことも考えられます。また、比較しやすくなるために、取引機能やツールの拡充に力を入れる可能性もあります。利便性は高まりますが、毎年金融機関を変更すると、どの金融機関のNISA口座で何年に何を購入したのかを把握する手間は少し増えます。


ロールオーバーは?

さて、最長5年間の非課税期間が終了すると、課税口座(特定口座または一般口座)か新たに設定される非課税投資枠に移管しなければなりません。新たに設定される非課税投資枠に移管することをロールオーバーとも呼びますが、ロールオーバー時に金融機関を変更できるのでしょうか。この点については現行の制度でもできる予定のようです。NEWS ポストセブン1月19日によると、“NISA口座を開設する金融機関を変更したときに、ロールオーバーをすることになっても、新たに開設したNISA口座に移管できるとされているが、実際にそうなるかは確定していない”とのことです。


勘定期間内にNISA口座を再開設

併せてもうひとつ改正点についてご説明します。現行の制度では、一旦NISA口座を廃止すると、同じ勘定設定期間ではNISA口座を開設できませんが、改正後はできるようになります。NISA制度では、長期の海外赴任や海外留学をする方は、「居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者」に該当しなくなると、NISA口座を廃止しなければなりません。しかし改正後では、再び日本の居住者となれば、次の勘定設定期間を待たずにNISA口座を開設できるようになります。非課税口座廃止届出書を金融機関に提出すると、非課税口座廃止通知書が交付されます。そしてNISA口座を再開設するときは、非課税口座廃止通知書を添付して、金融機関に非課税口座開設届出書を提出します。


将来の課題

平成26年度の税制改正では、NISAの恒久化や他の口座との損益通算は盛り込まれず、今後の課題となりました。しかし、2016年には債券への範囲拡大が検討されているようです。特定公社債が特定口座の対象になるなど、金融所得課税を一体化する方向に進んでいるので、実現する可能性が高そうです。

金融庁は2020年までにNISAの投資残高25兆円を目標としているので、利便性を向上させる改正を期待できます。
NISA口座の金融商品取引業者等変更届出書は、前年の10月から提出できる点がポイントです。投資枠を年初から活用するには、早めに手続きすると良いです。

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