PwCが毎年発表している「世界の都市競争ランキング」。一年でそれぞれの都市がどれくらい成長したかが表れる興味深い調査で、毎年抜きつ抜かれつが楽しみなランキング結果でもある。

さっそく、上位30都市を見てみよう。公平性を規すために合計10個のカテゴリーに分けて採点を行い、合計点を競うものである。なお、評価基準を示すを10個のカテゴリーは以下の通りだ。

・知的資本とイノベーション
・テクノロジ-の発展
・都市性(玄関口としての機能性など)
・インフラと交通
・健康・安全・保全・警備
・自然環境の維持
・人口統計と住みやすさ
・経済成長
・ビジネス始動の容易性
・コスト(食べ物・住まいなど一般的に)

総合点1位は金融の核都市「ロンドン」

都市競争力ランキングはロンドンが首位、シンガポールがアジアで大健闘をし、2位に浮上した。社会保障制度が充実したスウェーデン・ストックホルムも7位に入った。

ロンドンは、10個のカテゴリの内、3つで首位を守り堂々の1位となった。ロンドンと言えば世界の金融市場の中心地であり、多くの企業が拠点を置きビジネス展開を繰り広げる場所でもある。

しかし、今年、世界に衝撃をもたらした英国EU離脱により、ロンドンの金融街は大きな影響を受けたことも事実だ。拠点を構える金融企業や優良企業が撤退を検討し、リストラを発表する動きなどが広まってきている。懸念が先走る喧騒感と、「大丈夫だ」と不安をぬぐおうとする混沌とした雰囲気が入り混じったが、離脱決定後3か月たった今は多少の落ち着きを取り戻しているようである。

今回、「知的資本とイノベーション」、「都市性」、「経済成長」のカテゴリーで断トツ1位。「コスト」以外はカテゴリーでも上位にランキングした。物価高には悩まされるところだが、EU離脱で難民の受け入れ義務がなくなったことで、更なる経済発展も期待されるところであろう。

2位のシンガポールは大健闘!

最近のシンガポールは熱い。今回の都市力競争ランキングでも、「テクノロジーの発展」「インフラと交通」「ビジネス始動の容易性」でトップであった。特に、エンジニア分野では飛躍的な伸びを見せている。

東京23区や琵琶湖とほぼ同じ大きさという、極小国家シンガポール。しかし、今や世界中から投資家や富裕層が集まり、次々にビジネスをスタートさせている急成長国でもある。

ラスベガスの有名なカジノ企業サンズ社が進出し、超高級リゾートホテルを手掛けるなど、ビジネスと娯楽が最高レベルで融合し合っているのも魅力的であろう。

ちなみに、シンガポールのGDP成長率は、2016年8月の時点で2.1%となっている。名実ともにアジアの金融・物流のハブシティとなっているシンガポールは、納得の第2位であった。

お隣、韓国「ソウル」が11位に、東京を上回る!

韓国「ソウル」が総合得点で11位となり、東京が15位という結果になった。ソウルが一頭地を抜く速さで急成長を遂げ、ソウルの街並みは日々姿を変えながら前進し続けている。ソウルの経済発展のシンボルとして挙げられる地区が江南(カンナム)地区。ソウルの経済発展の象徴として恥じないソウル屈指の高層ビル揃い、インフラ度も高い。

江南地区の「三成洞」には韓国総合展示場、コンベンションセンター、貿易センター、テヘランバレー、都心空港ターミナル、ASEMタワーなどがひしめきあっている。現在はソウルの経済、交通、金融、デジタルなどの中心地であるが、40年ほど前は田園風景が広がる農村地帯だったそうだ。

東京は”あの”カテゴリーでトップ!

しかし、カテゴリー別に見ると劣等感を感じるほどソウルとの差は見えない。ましてや、カテゴリー別にみると、東京は何と「健康・安全・保全・警備」で世界トップ!堂々1位に輝いている。これは、4年後の東京オリンピックを前に最高のアピール点になったとも言えるだろう。

今回ソウルが東京より点を稼いだカテゴリーは「インフラと交通」「自然環境の維持」「ビジネス始動の容易性」「コスト」の4つ。コスト以外は僅差であった。しかも、どのカテゴリーでもトップは獲得していない。

金ピカシティ「ドバイ」まさかの17位?

「都市性」「インフラと交通」で上位に食い込んだものの、その他で思うように得点が稼げなかったドバイ。世界一の高さを誇るブルジュ・ハリファを筆頭に超高層ビルが立ち並ぶ光景は、まさに別世界に迷い込んだかのようだ。

街中にあるスタバは、モスクの中にいるような豪華絢爛な内装で世界一の美しさだと言われ、360度が水槽の超豪華水族館、7つ星ホテル・ブルジュ・アル・アラブもある迫力ある国でもある。

石油国として成功を収めた印象が強いドバイだが、石油はほとんど採れない。現在は、巨大貿易港と世界を繋ぐハブ空港を建設したことで、物流拠点としてのビジネスシーンが格段に増えている。ドバイは住んでいる人の9割は外国人である国際国家でもある。それでも17位とは肩透かしを食らった印象だ。

今回のランキングは「都市競争力」であったが、純粋に「世界一高いビルを建てた」というような短距離走で勝負を決めてもダメだ。年間を通してのGDPの伸び、インフラや交通機関、デジタル分野での発展なども交えて長距離走でじっくり得点を稼いでいくのが肝心なのである。とにもかくにも、次回の東京の順位に大いに期待したいところである。