(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

2016年度グローバル年金指数ランキング「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」レポートとランキングが発表され、首位は5年連続のデンマーク、総合指数は80.5であることが分かった。デンマークとオランダは最高のAランクを獲得。豪州含めた3カ国は3年連続トップ3だった。昨年、主要国25カ国中23位だった日本は、今年も27カ国中で26位の体たらくで、総合指数も43.2と昨年より0.9ポイント下がった。

今回8回目の公表だが、初回の2009年、日本は11カ国中、最下位。その後も常に下位グループで、もっとも最下位から離れたのが13年(20カ国中17位)だ。今回初めてマレーシア、及びアルゼンチンも対象国に含まれ、全世界の人口の60%近くをカバーしているという。

「メルボルン・マーサーグローバル年金指数」とは、世界の年金制度を横断的に比較した調査指数だ。マーサー社の協力と、豪州ビクトリア州政府による資金提供により、オーストラリア金融研究センター(ACFS)が開発した。

各国の公的、私的年金制度の積み立てや個人貯蓄などの年金以外の資産についても客観的に評価している。評価指数は40以上の質問項目から構成されている。

たとえば「十分性」(40%)……老後の所得として定期的に給付を受け取れるシステムがあることと、老後のための充分な貯蓄があるか

「持続性」(35%)……年金制度に優良なガバレッジ(年金の義務化など)や平均寿命と支給開始年齢の関係が適性か

「健全性」(25%)……包括的な規制が設けられ、年金制度をうまく運用するための見直し機能や透明性があるかどうか――だ。

最下位はアルゼンチン

順位 国名 総合指数(評価)
27位 アルゼンチン 37.7(D)
26位 日本 43.2(D)
25位 インド 43.4(D)
24位 メキシコ 44.3(D)
23位 中国 45.2(D)
22位 韓国 46.0(D)
21位 インドネシア 48.3(D)
20位 南アフリカ 48.6(D)

19位 イタリア 49.5(D)
18位 オーストリア 51.7(C)
17位 ポーランド 54.4(C)
16位 ブラジル 55.1(C)
15位 マレーシア 55.7(C)
14位 フランス 56.4(C)
13位 米国 56.4(C)
12位 ドイツ 59.0(C)
11位 英国 60.1(C+)

10位 アイルランド 62.0(C+)
9位 チリ 66.4(B)
8位 カナダ 66.4(B)
7位 シンガポール 67.0(B)
6位 スイス 68.6(B)
5位 スウェーデン 71.4(B)
4位 フィンランド 72.9(B)
3位 豪州 77.9(B+)
2位 オランダ 80.1(A)
1位 デンマーク 80.5(A)

評価ランクはAからEまである(今回Eの対象国はなし)。デンマークとオランダが選ばれたAは、「十分な給付を提供し、持続可能。高い健全性を持つ非常に優れた、堅牢な制度」という評価となっている。

日本「税制や私的年金の仕組みが年金受給を促す形になっていない」

日本が含まれるDは「望ましい特性がいくつかあるが、対処すべき重要な弱点・欠落がある。改善しなければ、有効性・長期的な持続可能性が疑問視される」というものだ。

日本について調査は、「制度の安定性はみられる」としながらも、「高齢化社会をめぐる課題に対する取り組みなど、引き続き改善の余地がある」と指摘。各項目の指数については、最も低い項目である「持続性(Sustainability)」は2015年の26.5から24.4(評価E)とさらに下落。「十分性(Adequacy)」の項目は48.5(評価D)、「健全性(Integrity)」の項目指数は60.9(評価C+)とほぼ変化なしだった。

そのうえで、日本の制度を改善するための対策として挙げているのが、「家計貯蓄額の増加」「年金給付額の引き上げに伴う、所得代替率の改善」「退職給付の年金形式での受給を促す制約の導入」「平均余命の延びに伴う公的年金制度の支給開始年齢のさらなる引き上げ」「GDPに対する政府債務残高比の引き下げ」--だ。

マーサージャパン年金コンサルティング部門プリンシパル、関根賢二氏はコメントで、「日本の総合評価が低いのは、特に、十分性と持続性の評価が低いため。十分性に関しては、年金給付による所得代替率(現役世代の年収と年金給付額の比率)が低いこと、税制や私的年金の仕組みが年金受給を促す形になっていないことなどが評価を引き下げている」と指摘している。

さらに「持続性に関しては、少子高齢化に伴い高齢者人口割合が増加していること、平均余命の増加で公的年金の期待支給期間(平均余命と年金支給開始年齢の差)が長くなっていること、政府債務残高が大きいことなどにより低い評価となった」と解説する。

そして「日本では他国よりも早いペースで少子高齢化が進行し、平均余命も伸長している。公的年金では、現役人口の減少や平均余命の伸びなどの社会情勢に合わせ、年金の給付水準を自動的に調整するマクロ経済スライドが2015年に初めて発動され、年金給付額の伸びは賃金や物価の上昇分以下に抑えられている」と述べた。

また「老後の生活資金を確保するには、公的年金に加え、企業年金や個人年金などの私的年金からの収入や活用方法を理解した上で、個人のライフスタイルに応じた早めの資金準備を実施することが重要」としている。(ZUU online編集部)