中州,博多,福岡市
(写真=PIXTA)

2015年の国勢調査確定値で日本の人口が初めて減少に転じたことが明らかになるなか、3大都市圏以外の政令指定都市で福岡県福岡市と宮城県仙台市、北海道札幌市がめざましい人口増加を記録した。九州、東北、北海道の自治体から流出する人口を吸収し、大都市圏へ人口が流出するのを食い止めるダムの役割を果たしている。

人口減少時代を迎え、他の政令指定都市は減少に転じたり、増加が鈍ったりするところが増えている。それなのに、福岡など3市はなぜ、人々を引き寄せ続けることができるのだろうか。

目次

  1. 住みやすさと働きやすさを両立
  2. 東日本大震災の被災地から移住者が殺到
  3. 充実した医療を求め、高齢者が転入

住みやすさと働きやすさを両立

福岡市は153万9000人に達し、東京23区を含めた全国の都市の中で、兵庫県神戸市を抜いて6位に躍進した。前回調査(2010年)からの伸び率は5.1%。政令指定都市の中では、東京23区を抑えて最も高かった。特に目立つのが転入による社会増で、毎年約1万人ずつ増えている計算になる。

人口を押し上げている要因の1つが若者の増加。15歳から29歳の若者率は19.5%に達し、政令指定都市では群を抜いている。2014年度の文部科学省学校基本調査では、全人口に占める大学生、専門学校生の比率が7.3%に達し、京都府京都市に次ぐ高い数字を示した。20~24歳の転入者は女性が男性の2倍以上というのも福岡市の特徴だ。

福岡市は昔から商業の街としてサービス業が盛んだったが、最近はIT企業を中心に年間50社ほどが進出している。IT企業は若い世代の受け皿になっており、UターンやIターンで福岡市を目指す若者たちにとって、働きやすい土地と感じられるようだ。福岡県の有効求人倍率も全国平均を上回り、売り手市場が続いている。

3大都市圏に比べ、コンパクトシティであることも、住みやすさにつながっているとみられている。福岡空港から中心部の博多駅までは電車で約5分。2011年の総務省社会生活基本調査では、福岡・北九州大都市圏の平均通勤時間は34.5分で、7大都市圏で最も短い。市の意識調査では市民の9割が市の良さとして住みやすさを挙げた。

「福岡市はほどよく田舎で、ほどよく都会」とよくいわれる。海や山など自然に近いにもかかわらず、都市機能が充実して利便性が高い。屋台村や博多ラーメンなど街のイメージが全国に知られている強みも持つ。

福岡市統計調査課は「あくまで個人的な分析だが、住みやすさと働きやすさが若い世代に評価されたのではなかろうか」とみている。

東日本大震災の被災地から移住者が殺到

仙台市は108万2000人を記録し、2010年の前回調査を3.5%上回った。市内5区すべてで人口が増加し、世帯数も49万9000戸と前回調査から7.2%増えている。宮城県内は仙台市とその周辺部を除き、急激な人口減少にさらされているだけに、仙台一極集中の様相も示している。

仙台市の人口は2011年と2012年に急激な伸びがあった。2011年は東日本大震災が起き、東北地方の太平洋側は津波被害で壊滅的な損害を受けている。2011年の転入者は県内や近隣の東北地方からが多く、被災者の多くが生活に便利な仙台を目指したとみられている。仮設住宅や災害公営住宅の建設が市内で早く進んだことも人口増を後押ししたようだ。

2012年は被災地の復興が本格的に進み始めた時期になる。各地から道路や鉄道の復旧、住宅建築など復興に向けた槌音が聞こえてきた。2012年の転入者の多くが関東以西から来ている。仙台は東北の中心部とあって、多くの建設関係者や作業員が集まってきたわけだ。

しかし、その後は転入増加に陰りが見える。今後、震災からの復興に関係する人は徐々に少なくなっていく見通しで、人口のダム機能は緩やかに低下していくと予測されている。 仙台市広聴統計課は「大学生が多いのも人口増加の一因だが、やはり震災後の転入増加と復興事業の影響が大きい」と分析している。

充実した医療を求め、高齢者が転入