11月21日のニューヨーク外国為替市場では、円は昼すぎには一時、約半年ぶりの安値となる111円半ばまで下落していた。しかし、米時間夕方(日本時間22日早朝)に福島県沖でマグニチュード7.3の地震が発生、津波警報も発令されると相場は一転した。投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全資産としての円買いが加速、円は一時110円台半ばまで急伸したのだ。

地震で大被害が出ると景気は停滞する可能性が高く円が売られそうなものだが、なぜ円高になったのだろか。

阪神・淡路大震災でも円高トレンドに

円高,為替
(写真=PIXTA)

地震後に円高になるのは何も今回に限ったことではない。1995年1月の阪神・淡路大震災時、ドル円相場は90円台後半から100円前後の水準だった。地震後、円高が進み、3月から加速、4月19日には79円台のそれまでの円の史上再高値をつけた。

日本の保険会社が保険金支払いのために外貨資産を売って円買いをすることを見越して円高に弾みがついたと言う説もあった。国内損保業界の支払推定額は6000億円程度。損保大手3社の手元資金は1兆円近くあったため、海外の資産を売って国内に資金を戻す必要性は低かったようだ。

実際は、低金利の円で資金を調達して高金利の通貨で運用する円キャリートレードがヘッジファンド等で積み上げられており残高が拡大、市場のポジションは円売り・外貨買いに傾いていた。

地震によるリスクオンで投資家はポジションの縮小に動き、株を売るとともに、円キャリートレードをアンワインド(解消)した。そのため、円買い戻し、外貨売りが進行した。

東北大震災でも円は史上最高値まで上げる

東北大震災でも同じだ。2011年3月11日に発生した東北大震災でも円高が急速に進んだ。3月11日に82円台だった米ドル円レートは、17日には76円台という史上最高値をつけ、阪神・淡路大震災後の1995年4月19日のこれまでの最高値を超えた。

この時も阪神・淡路大震災後と同じだ。円キャリートレードのポジションがたまっていたところ、投資家のリスク許容度が低下し、株安、円買い戻し、外貨売りで円高に振れた。

地震だけでない リスクオフは円高に

2007年に表面化した米国のサブプライム危機、2008年のリーマンショックなどの危機でも株は売られ、円相場は投資家の円売り持ち高の解消で円高に振れるパターンが続いた。

2009年後半からの世界的な景気回復過程で株式相場も底打ち反転し、投資家のリスク許容度は次第に回復してきた。日本ではFXトレードによる個人投資家の外貨買い・円売り持ち高も回復、増加基調をたどってきた。

2016年も検証してみよう。1月?2月の中国景気後退懸念による元安、原油安のリスクオフ時に株は大きく売られた。ドル円120円台から112円台まで円高が進んだ。6月の英国が国民投票でEU脱退を決めた時(BREXIT)でも円は105円台から98円台の今年最高値まで買われた。 有事の円高は、見事に機能している。

一方、11月に入り、トランプ氏が次期大統領になることが決定し、減税、インフラ増などのリフレ政策の期待でリスクオンとなり世界株が上げると、日米金利差の拡大から円は大きく売られ、トランプ氏勝利後の一時101円台から12月初旬には114円台まで大きく円安が進んでいる。

一概には言えないが、過去のパターンを見る限り、リスクオフでは円高、リスクオンでは円安と覚えておいた方がいいかもしれない。(ZUU online 編集部)

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