ミサイル
(写真=PIXTA)

中国ネットニュースは、日米をけん制する目的のためか、このごろ急に勇ましくなっている。「殲20の行動半径が明らかに、日本は国を挙げて恐慌」「中国のステルス戦闘機、日本の50年先を行く、鼻を折られた日本の専門家たち」「中国調査船、沖縄沖に神秘の物体を投下、日本はパニックに」といった文字が踊る。

その他「中国の静音原子力潜水艦登場に米国は震撼」「中国に開戦を挑む国家は?」などもある。何らかの不安の裏返しに間違いない。一体中国は何を心配しているのだろうか。殲20関連と、開戦国家の記事を紹介し、不安の正体を探ってみよう。

殲20の配備、日本は国を挙げて恐慌状態に

近日、軍事専門家はステルス戦闘機・殲20(J-20)の最大後続距離が5500キロ、最大作戦半径は2000キロであると明らかにした。空中給油なしで2000キロである。この作戦半径の意味は地図を見れば一目瞭然だ。日本列島を完全に覆い、その外海にまで拡がっている。これに対し日本が米国から輸入するF-35の作戦行動半径はたった1150キロに過ぎない。

さらに殲20型は、早ければ2018年には編隊を組むことができる。日本のF-35輸入見通しは2019年だ。チーム形成にはさらに時間がかかる。日本はF-35によって東シナ海で中国を押さえ、制空権を握る計画だ。しかしそのころには殲20が投入されていてその目論見は不可能である。中国空軍は日本を超えるだろう。中国の航空エンジン技術は異彩を放ちつつ、殲-20は、驚くべきスピードで就役する。これを最も恐れているのは日本である。

また香港メディア「明報」は、日本は独自技術により開発した第5世代ステルスの運用を始める、と伝えた。かしこの領域では中国は50年先を行く、としている。

中国は開発中の第五世代ステルス戦闘機・殲20型のプロトタイプを公開した。近く量産体制入りする。開発は、スペック決定ー制作ープロトタイプ設計ープロトタイプ生産の5段階である。現在は4段階と第5段階の間、4.5段階に至った。この段階はまだ少量生産である。使用ー改善ー再使用ー再改善の過程を通し本生産へ移行する。今の予定では2020年までに20機を生産する予定だ。しかし評論家は60機も可能、という。

米国は世界で唯一、第5世代ステルス戦闘機を第5段階へ到達させた。ロシアは資金不足と技術の停滞で、第4段階に留まっている。日本独自開発のステルス戦闘機は第5世代の能力を具有していない。これは全長19メートルしかなく、殲20の21メートルに比べ2メートル短い。この機体には第5世代のシステムを搭載できない。第4世代の範疇である。

記事はこの後、日本のF-35購入交渉は難航中、といった日米のきしみを取り上げている。50年遅れの根拠は示されていない。とくに新しい情報もなく、殲20の一刻も早い実戦配備は急務である、との国民向け宣伝と見られる。

中国に開戦を仕掛ける国ランキング?

第二次世界大戦終結以来、大戦はない。しかし“小戦”は不断にある。新中国成立以来、中国は強勢に転じ、戦争に巻き込まれたことはない。しかし戦争の導火線が発火するとすれば、火をつけるのはどの国だろうか。「老兵の窓」という軍事サイトは次のようにランキングしている。

第1位、インド。中国との関係最も敏感かつ複雑なのはインドである。将来人口で中国を上回るとみられるインドは何かと中国との比較を好む。その視線は中国を通り越し米国を向いている。インドの軍事力は中国の脅威である。

第2位、ベトナム。千数百年前、中国から離脱した国家であり、中国から巨大な援助を受けて来た国家である。それなのに29もの中国の島嶼を勝手に占領している。生理的血縁関係は深いものの、ベトナムの行動は背信であり、恩を仇で返すものだ。

第3位、米国。中米軍事衝突には2つのシナリオが考えられる。台湾独立と朝鮮半島の情勢悪化である。アメリカは我国の国土安全を威嚇し続けている。中米関係は複雑だが、相互利益も大きく、どちらも大規模な戦争を望んでいない。

第4位 日本。歴史問題に起因する両国の戦争は近い将来にはあるまい。しかしそれは、日本が軍国主義の台頭をコントロールし、核武装や航空母艦の建造をしない場合に限られる。

第5位 韓国。韓国はベトナムと同様である。最も中国古典文化の影響を受けた国であることを忘れている。その結果、政治のコントロールを失えば、中・米・朝・韓の戦争を引き起こしかねない。

第6位 インドネシア。最近南シナ海で最も排華、反華姿勢の強いのはインドネシアである。強大な中国は武力による紛争解決も考慮すべきだ。

第7位 モンゴル。親ロシア、親米政権の出現は危機を起こす可能性が強い。

第8位 ロシア。国民はロシアこそもっとも我国の領土をかすめ取った国ということを忘れてはいない。ただし戦略上今は協力関係にある。お互いこの和睦継続にいつまで耐えられるかがポイントだ。

これらの記事から推察されるのは、中国は極端に被害者意識の強いことである。これはアヘン戦争から第二次世界大戦までの、被侵略の歴史の中で遺伝子に書き加えられ、日米欧だけでなく周辺国までその対象は拡がった。どうやら最近の日中の動きは、またこの被害者意識を呼び起こしたようだ。日本は、中国のこの被害者意識をうまくコントロールして、交渉の余地を拡げていくべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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