韓国に投資申告をしている日本企業は、韓国産業通信資源部の資料によると2016年12月1日時点で3045社。韓国企業への出資も含まれ、実際に韓国で事業を行っている企業のデータはないが、1000社以上の日本企業が韓国に進出し、事業を行っていると想定されている。

韓国の経済を支える日本企業

日本電気硝子 <5214> は2013年、韓国・京畿道坡州市に14億ドル余り(1350億円)を投資して製造工場を設立することを決めた。日本企業の韓国進出では過去最大の投資額である。それまでの最高額は2004年にソニー <6758> がサムスン電子との合弁企業に投資した10億ドルだった。ソニーとサムスンの合弁は2011年に解消し、合弁会社はサムスン電子の完全子会社になっている。

日本電気硝子の韓国進出は2005年に遡る。LGフィリップスLCD(後にLGディスプレイに社名変更、以下、LGディスプレイと記載)と合弁で坡州電気硝子を設立。日本で製造した板ガラスを坡州電気硝子で加工し、LGディスプレイに供給していた。LGディスプレイは2009年以降、大型パネルの出荷量で世界1位を維持しているが、日本電気硝子が重要な役割を担っている。

韓国に進出している日本企業の多くが、サムスン、LG、現代をはじめとする韓国企業に部品などを供給している。液晶の原材料や半導体基板、自動車エンジン部品、鋼板、自動車用ガラス、製造機器など日本企業が供給する主要部品は多い。

韓国第5位の財閥企業ロッテも日本からの進出企業だ。1988年のソウルオリンピックを前に、韓国政府は世界各国から訪れる外国人に、ホテルや百貨店などグローバルスタンダードのサービスを提供するために招聘した企業のひとつだが、日本では製菓製造がメインでホテルや百貨店の経験はない。

韓国ロッテホテル常務・百貨店事業本部長に小倉玉屋常務営業本部長(当時)だった秋山英一氏を招いた。秋山氏は断るつもりだったが、ロッテ創業者、重光武雄氏の熱意に打たれて引き受けたという。秋山氏が持ち込んだ日本式の接客や販売方法は、韓国流通業界の手本となっている。

衣食住を支える日本企業

衣食住でも韓国に根付いた日本企業は多い。

リンナイ <5947> を韓国企業と思っている韓国人は多い。韓国の首都ソウルの1月の平均気温は氷点下で、オンドルと呼ばれる床暖房が使われてきたが、ガスや電気、灯油などを使用した温水床暖房が主流となっている。1974年に韓国に進出したリンナイは床暖房のシェアが韓国第3位、家庭用ガスコンロは韓国内50%でトップシェアを独走している。

韓国の伝統食品には、キムチやマッコリなど発酵食品が多い。乳酸菌発酵食品は1969年に進出したヤクルト <2267> が70%のシェアを占めている。ヤクルトレディを見かけない日はなく、韓国人にとって欠かせない食品になっている。韓国ヤクルトの子会社である八道は即席麺を製造し、国内はもとより国外にも輸出している。

インスタントラ―メンは韓国の国民食。1人あたり消費量が世界で最も多い。日韓国交回復前の1963年、朝鮮戦争後の食糧難が続くなか、明星食品が韓国・三養食品創業者の全仲潤氏に製法を無償で供与し、製造機械は韓国政府の支援を受けた。三養食品はホームページ(韓国語)に明星食品から技術と機械の提供を受けて、即席麺の製造を開始したと記載している。

2010年頃から韓国の中高生の間で、アメリカブランドのノースフェイスが流行り出した。ノースフェイスを着ていない生徒はいじめに合う。盗んで捕まる中高生まで現れたが、この悪習にピリオドを打ったのはファーストリテイリング <9983> だ。

寒さ対策の主役が高価なノースフェイスからユニクロのヒートテックにとってかわり、いじめはなくなった。ユニクロは2015年、韓国ファッション市場で初の年間売上1兆ウォン(約1064億円)ブランドになった。サムスン系のBEANPOLEでも年7000億ウォン台と、韓国内外の大手ブランドを大きく引き離している。

日本の技術を韓国の伝統文化に応用

ここ数年、注目が集まる韓国の伝統家屋にも日本の技術が活かされている。2010年、忠清南道公州市と扶余郡は百済遺跡の世界文化遺産登録を目指して世界大百済展を開催、公州市はその目玉のひとつとして韓国の伝統住居を体験する公州韓屋村を造成した。

当初は韓国産のマツや米マツを使用し建設していたが、途中から宮崎県産のスギ集成材とプレカット処理された部材を導入した。プレカットは現場での作業が省力化でき、施工期間を大幅に短縮できる。韓屋完成後3年経った時点で、韓国産のマツ材にはかなりのひび割れが発生していたが、宮崎のスギ集成材はほとんど割れがなかったという。

2013年の韓国の住宅着工数約18万7000戸のうち木造住宅は1万300戸。2005年までは2000戸以下で、伝統的な韓屋スタイルのニーズが高まった2006年から年々増加している。韓国の木造住宅はアメリカから導入した2×4が主流だが、専門家は床暖房など韓国の生活スタイルに向かないと指摘する。伝統的な韓屋を建てる技術者が少なくなった現在、日本の木材とプレカット技術を活用した「日本製」韓屋が注目されている。(韓国在住CFPR佐々木和義)

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