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JR東海が3期連続の最高益更新となりました。JR東海の2014年3月期決算では売上高が1兆6,525億円(前期比+672億円)。営業利益が4,946億円(前期比+684億円)。当期純利益が2,556億円(前期比+557億円)と増収増益です。また、長期債務残高を連結ベースで△2,691億円減らし、2兆3,708億円とするなど、リニア建設に向けての体質強化を着々と進めています。本稿ではリニア建設による財務面の影響を検証することで、JR東海がリニア建設に耐えられる体力をつけているのかを検証して参ります。


リニア計画の概要

4年前ですが、2010年5月にリニア計画の概要と費用に関する長期試算を発表しています。その際には、第1期として品川~名古屋間を2027年に開業、大阪までを2045年に開業する予定としております。また、工事費は駅を除く建設費と車両費で5兆1,000億円(内訳:建設費が4兆8,000億円。車両費が3,000億円)。長期債務残高は最大でも5兆円を超えないという試算を出しており、東京~名古屋の運賃(特急料金込み)を新幹線のぞみ+1,000円の12,000円程度に設定すれば、自己資金のみで建設できるとしております。では、この前提が無理のないものであるかを検証して参りたいと思います。


リニア計画の財務面への影響

では、JR東海のリニア計画の財務面への影響を分析して参りたいと思います。イメージをつきやすくするため、某鉄道会社で働く東海家が住宅を購入するという仮定で考えたいと思います。東海家では従来住んでいる家が老朽化しており、地震等で倒壊するリスクが高いため新しく山沿いに家を建てることにしました。現在東海さんの働く会社は業績好調のため年収は1,652万円と多く、毎年200万円の貯金ができています。しかし、家の金額を見積もってみると第1次建築で5,100万円という見積がでました。東海さんの両親である日ノ元さんは東海さんの兄弟の整備さんのマイホーム資金を無利子で貸し付けたこともあり、日ノ元さんから援助を受けることも検討しましたが、日ノ元さんは多額の借金を抱えており、整備さんのマイホーム建設時にいろいろと口出しをしたため、東海さんは貯金とローンで資金調達を行い、自前で家を建設することにしました。

図1 東海家の収入と新マイホームの建設費

年収(売上高)

1,652万円

年間貯金額

(内部留保額)

200万円

配当性向は20%のため、純利益の80%が内部留保と仮定

住宅価格

(建設費)

第1次:5,100万円

第2次:???万円

住宅完成年月

第1次:2027年

第2次:2045年

この試算では、金利はフラット35の金利が2%前後なので、金利2%と仮定します。その場合、総返済額は約7100万円、年間の返済額は約200万円。月あたりでは約16万8千円となりました。返済額は年収の12%ですから、これは充分返済可能といえますが、現在の年間貯金額(内部留保)が吹っ飛ぶ計算となります。しかし、企業が返済期間35年間の借金をするのは現実的な仮定ではありません。次に、返済期間を15年。金利を2%固定として計算すると、総返済額は約5900万円ですが、年間の返済額は約390万円、月あたりでは約32万8千円となりました。これは現在の年間貯金額を(内部留保)をはるかに超える金額です。こう見ると、建設費、キャッシュフローよりも金利の水準をどのようにキープしていくかが重要となります。2010年5月の試算では債務については以下の仮定を置き、財務面での安定配当は維持できるとしています。

<財務に関する仮定>

l  長期債務残高は5兆円以内

l  長期債務残高/営業キャッシュフローの比率は最大13~14倍程度

l  借入は5年、10年、20年

l  借入金利は3%(実績:5年1%前半~1.5%、10年:1.6%程度、20年2.2%程度)

この仮定は幾分保守的であり、利益の増加も相まってJR東海は内部留保と借入でリニアを建設できるとしているのです。