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今回も『日経マネー』2014年2月号の「初心者厳禁! 中・上級者向けの刺激的な運用アイデア19選:裏NISA」で紹介されたユニークな運用法を紹介していき、それを適宜改善した手法を提案していきます。今回の記事で本シリーズは最後になります。

NISAを利用した「刺激的な運用アイデア19選」の紹介とその改善案(1)
NISAを利用した「刺激的な運用アイデア19選」の紹介とその改善案(2)
NISAを利用した「刺激的な運用アイデア19選」の紹介とその改善案(3)
NISAを利用した「刺激的な運用アイデア19選」の紹介とその改善案(4)

今回紹介する手法は、引用元記事の項目のまま書くと、以下の3つです。

・決算時期の異なる増配・高配当株を組み合わせる

・1月は何も買わずに、じっと我慢の子?相場下落の5月、11月を待つ

・キンカブ、プチ株、S株などで非課税枠を余さず使う!


決算時期の異なる増配・高配当株を組み合わせる

インカムゲイン狙いの投資においては、本来は分配金が多いREITが良いという人が多いですが、アベノミクスにおける好決算によって増配する企業が増えているので、増配・高配当銘柄を異なる決算時期毎に組み合わせて購入する方法が紹介されています。

インカムゲイン狙いの投資において高配当銘柄を購入するという観点自体は間違っていないのですが、いくつか注意があります。アベノミクスによって好決算になった企業というのは、裏を返せば為替レートの変化に影響されやすい企業である可能性もあり、長期的に保有する場合、為替レートの変化によっては株価自体は低下する可能性もあります。

では、短期投資なら良いかと言えばそうではなく、高配当銘柄を取得したい投資家は多く、高配当になりそうな企業の銘柄は既に値上がりしている事が多く、せっかく高配当を得ても売却時に損失が出てしまう事が多いので注意が必要です。

インカムゲイン狙いの投資で最も重要なのは、「潰れない企業」を探す事が重要であり、財務状況を調べあげ、より安全性が高い銘柄のうち高配当銘柄を探す事が必要でしょう。


1月は何も買わずに、じっと我慢の子?相場下落の5月、11月を待つ

5月のゴールデンウィーク明けや11月頃に値下がりする傾向が強いことから、そこまで待ってから運用する事も一つの戦略である事が指摘されています。

こうした「月アノマリー」は多く指摘される事ですが、成立しない年も多く、またアノマリーの傾向上、「アノマリーの存在が投資家に確信された時点でアノマリーが無くなってしまう」のが普通なので、あまりに有名なアノマリーを盲信して投資するのは危険だと言わざるを得ません。

但し、消費税増税前の駆け込み需要と、その後の反動による需要減少が起こる可能性は高く、2014年以降、企業の業績が悪化して値下がりする可能性はあるので、ブルベア型投資信託などを購入するという戦略は有効かもしれません。但し、増税前後の価格は「駆け込み需要と反動の効果」を見込んだ売買が増えると思うので、短期で利益を出すのは難しいでしょう。

これは、「 その株主優待は本当に貰うべきか?~優待狙いで陥りやすい失敗とは?~ 」で書いたように、確実に利益が出ると考えられている局面(株主優待・アノマリー・消費税増税の影響)がある場合、その利益を得る為に売買を行う投資家が増え、裁定機会が失われてしまうからです。こうした局面で利益を得るには、より前もって売買する必要があります。(但し、前もって売買するほど別のリスクが付随します。)


キンカブ、プチ株、S株などで非課税枠を余さず使う!

最後に紹介されているのは、100万円の非課税枠を残さずに利用するために単元未満株式投資が出来る「ミニ株」の類を利用する事が薦められています。

萬氏も指摘していますが、手数料が通常の売買よりも割高であったり、議決権・優待権利が無いなどのデメリットも考慮する必要がありますが、非課税枠を残さず使うという考え方自体は筆者も賛成します。

問題は、何で非課税枠を埋めるかですが、筆者としては「新興企業株」を薦めたいと思います。なぜなら、非課税枠の端数と言えば、大した金額ではなく、多少の利益が出ても損失が出ても誤差の範囲になる可能性が大きく、それならば将来性のあるベンチャー銘柄で埋める方が良いと思うからです。


改善案

以上の話を簡単に整理すると、

・財務が健全かつ高配当銘柄を探してインカムゲイン狙い投資を行う
・月アノマリーよりも消費税増税後の需要減少を見込んだ投資を行う
・非課税枠の端数を新興企業株で埋める

となります。


シリーズのおさらい

今回までの5回で紹介した案を列挙して、本シリーズを終える事にしましょう。

・リスク許容度が高い投資家は、市場トレンドが大きく変わり方向性が予想しやすい時期に「ブルベア型投資信託」に集中的に投資する。
・リスク許容度が低い投資家は、優待利回りが高く、かつ、最低投資金額が低い銘柄に多数投資する。
・目標利益率を決めた上で100万円の非課税枠を目一杯使って投資する
・少ない資金を使い、ボラティリティが高い銘柄への短期投資を繰り返す
・海外のETFを使って手軽にグローバルマクロ投資をする
・将来性があると思える新興企業株に投資する
・毎月一定額をマザーズ・コア指数ETF等ボラティリティが比較的大きくリスクが高すぎない銘柄にドル・コスト平均法投資する
・上記の場合において、毎月投資する事が難しい場合はボーナスなどを積み立てる
・エマージング市場からの資金流出に歯止めがかかった時にエマージング市場のETFなどに投資する
・証券会社のサービス特性(手数料や取扱銘柄など)に応じて、多様に投資出来るように複数のNISA口座を開設して投資する
・インカムゲイン狙いの銘柄に投資を行う(出来れば分配金を再投資する)・積み立て枠として長期でNISA口座の非課税枠を使いつつ、徐々に通常口座での投資に慣れていく
・財務が健全かつ高配当銘柄を探してインカムゲイン狙い投資を行う
・月アノマリーよりも消費税増税後の需要減少を見込んだ投資を行う
・非課税枠の端数を新興企業株で埋める

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参考文献

萬真知子「初心者厳禁! 中・上級者向けの刺激的な運用アイデア19選:裏NISA」『日経マネー』2014年2月号

photo credit: aenimation via photopin cc