電気式加熱型たばこと呼ばれる新しいたばこに、ブームの兆しがある。いつでもどこでも利用できる、本物のたばこの味がする、匂いや煙が少なく回りに迷惑をおよぼすこともない、など愛煙家だけでなく嫌煙家にとってもありがたいたばこだが、実際にお店などで利用することはできるのか? 大手飲食チェーンに話を聞いてみた。

そもそも加熱型たばこ「IQOS」、「VAPE」とは

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(写真=PIXTA)

法令化が直前に迫った受動喫煙防止法。嫌煙ムードの中で、最近脚光を集めているのがIQOS(アイコス)、VAPE(ベイプ)などの電気式加熱型たばこだ。

まるで本物のたばこのような外観をした、バッテリーとカートリッジで構成される喫煙具である。使い方は、カートリッジにたばこ葉や香料などをペースト状にしたカブセルを組み込み、加熱し蒸発させ吸引する。

同様のものとしてこれまで電子たばこがあったが、大きな違いは加熱式たばこは実際にたばこの葉を使用している点。葉たばこのニコチンなどを吸引できるので、たばこ本来の味わいや刺激を得ることができる。また実際に使用する際にも火の必要がないので安全、吸い殻が出ないので灰皿も必要ない、などの点が評判を呼び、愛飲家の人気を広げている。匂いが周りに広がることが少なく、副流煙も少ないので健康被害も少ない。などなど、まさにいいとこずくめ、の新たしい喫煙具なのである。

ちなみにiIQOS(アイコス)とは、フィリップモリス製の加熱たばこのブランド名で、テレビで紹介されたことをきっかけに、今回のブームに火が付いた。

VAPE(ベイプ)は加熱式たばこを総称する言い方だが、とくにJTブランドを指すことが多い。それ以外のほとんどの加熱式たばこは輸入製品。ちなみに現在のJTブランドの名は、「Ploom TECH」(プルームテック)だ。

「Ploom TECH」はこれまでネット販売が中心だったが、2017年6月から都内での販売も開始されることで、加熱たばこのブームが文字通り加熱することが予想される。今後はiQOSとPloom TECHが、加熱たばこ人気を牽引していくことだろう。

ところで、加熱式たばこはどこでも利用できる、だから使用場所に制限はない、となるはずだが、では実際のところどうなのか。主な飲食チェーン店やコーヒーショップなどに、加熱型たばこに関して喫煙の可否をたずねてみた。

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大手飲食チェーンに聞いてみた結果

調査したのは牛丼店(吉野家、松屋、すき屋)、ファミレス(ガスト、ジョナサン、ロイヤルホスト、サイゼリヤ、デニーズ)、コーヒーショップ(スターバックス、ドトール、タリーズ)、カラオケボックス(JOYSOUND、シダックス、ビッグエコー)。

喫煙・分煙の現状や今後の対応などについても調べてみた。結果は、以下の表のとおり。

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大手牛丼チェーン店はいずれも以前から全店24時間禁煙であり、現状では加熱たばこでも対応は同じとのことだった。一部で分煙席を用意している店舗もあるが、基本的には全面禁煙である。吉野家にはお酒の飲める「吉呑み」という業態もあるが、喫煙の際には、たばこも電子たばこも加熱たばこも、専用の喫煙スペースを利用することになる。

ファミリーレストランは、現状では店内で喫煙、禁煙スペースを分けている分煙対応が多い。ただしコーナーを設けているだけの分煙だと、喫煙席のたばこの煙や匂いが禁煙席まで漂ってきてお客の不評を呼びかねない。
このためチェーンによっては、ランチタイムや午後5時まで、あるいは土日は禁煙といった対応をしている。また喫煙コーナーをガラスで囲ったり、強力な空気清浄機を備えたりと、いろいろと努力をしているようだ。

ただし加熱たばこからといって、特別対応はしていないとのこと。またロイヤルホストなどは全店24時間禁煙なので、当然ながら加熱たばこも使用不可である。

喫茶店では、以前から24時間全店禁煙のスターバックスは、当然ながら加熱たばこも不可。ただし室外は喫煙可、これは従来と同じだ。

ドトールはコーナーや階を分けることで分煙を進めているが、禁煙席における電子たばこや加熱式たばこの使用に関しては、明確な方針を立てていないとのこと。裁量は個々の店舗に任されており、「他の客が喫煙と誤解してトラブルに発展することが懸念される」場合には、店員から使用を止める、あるいは喫煙席に移動することを促される。利用者は素直に従いたい。

タリーズは以前から壁やガラスで仕切った喫煙エリアを設置するなど徹底した分煙を実現しているが、加熱式たばこに関してはこちらも従来と同様に使用禁止とのこと。煙も匂いない加熱式たばこだが、せっかくの新機能も喫煙部屋での使用では身体中にたばこの匂いがついてしまいそうだ。

カラオケ店に関しては。現在ではほとんどのチェーン店で専用の禁煙部屋が用意されている(一部ない店舗もある)。通常の部屋だとたばこの匂いがこもるので、たばこ嫌いの人は24時間禁煙の専用部屋があるのはありがたい。ただし禁煙部屋では加熱たばこでも使用不可とのこと。ニコチンの味が恋しくなったら、店舗内にある喫煙所(一部)、または外で使用することになる。

現状ではエチケットとして、将来は同席も?

話題を集める受動喫煙防止法への対応に関しては、いずれの社も「今後の動向を見守りつつ行政の指導に従う」との立場だった。

様々なメリット点が注目されている加熱たばこだが、たとえ健康被害が少なくても、外観があくまでもたばこであるため、なかなか特別扱いはしてくれないようだ。

現状では、利便性に加えて、回りに迷惑をかけることが少ない、といったエチケット面で密かな満足を得つつ、使用していくことになりそうだ。

ただしあるチェーン店では現在、某大手喫煙具メーカーと共同で喫煙席での加熱式たばこの利用を検討しているという話を聞くこともできた。

今後の展開に予断はできないが、加熱式たばこが普及し、市民権を得ることができれば、喫煙者も禁煙者も同じテーブルでお茶や食事を楽しむことができる日が訪れるかもしれない。今後の動向に注目したい。(ZUU online 編集部)

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