2017年のたばこ税収が前年比500億円以上減少する見通しになった。共同通信と第一生命経済研究所の試算によるもので、紙巻きたばこから電子たばこ、特に人気の「加熱式たばこ」に切り替える人が増えている影響を受けたものだと分析している。

たばこ税収はこの十数年、2兆円強で推移しており、減収はその2.5%余りに相当する。課税方法がこのまま続き、現在のペースで切り替えが進むと、2020年には減収は10-15%相当の2000-3000億円に拡大する可能性もあるという。喫煙人口の減少と相まって、税収維持のため政府・与党内で、加熱式に対する課税方法の見直しや増税議論が進みそうだ。

JT予測では13%減収、加熱式は税法上「パイプたばこ」

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(写真=praphab louilarpprasert/Shutterstock.com)

17年の紙巻きたばこの国内販売本数は、日本たばこ産業(JT)の予測で前年比13%減の1512億本。外資大手の中には、最大20%減(1384億本)とする予測もある。JTは減少分の3分の2が加熱式への切り替え、残りが健康上の理由などによるたばこ離れとみている。

たばこ市場全体に占める加熱式の割合は現在、数量ベースで10%超相当。業界では今年末には20%程度に達するとの見方が多い。これらの需要動向やシェアから計算した結果、17年のたばこ税の減少額は500-780億円になるという。

現在、国内で販売されている加熱式たばこは、フィリップモリスの「iQOS(アイコス)」など3ブランド。加熱式は税法上「パイプたばこ」に分類され、税額は使用する葉タバコ1グラムにつき紙巻きたばこ1本と同じ約12.2円。1箱当たりにすると紙巻き(20本入り)の約244.9円に対して、加熱式は葉タバコの使用量がブランドで異なり約34.3-206円と幅がある。

加熱式たばこも含める健康増進法改正案に注目

たばこ税は国税、特別税、地方税からなる。紙巻きたばこの販売本数は96年度をピークに減少傾向だが、度重なる増税によって、税収は2兆円台で推移している。特別税は国鉄清算事業団の債務返済に充てられるが、国税と地方税は一般財源に組み込まれている。地方税は15年度の地方税収の2.8%と、自治体の貴重な財源になっている。

17年7月時点で、主な加熱式たばこにはアイコス、ブルームテック、グローの3種類ある。最初に登場して人気を博したアイコス、JTのプルームテック、そして同年12月発売され、東京でも最近発売されたがグローだ。3種とも一長一短があり、どれを選ぶかは好み次第だろう。

電子的な機能を有する加熱式たばこへの切り替えは加速している。ここで注目されるのが、次期国会に提出されるだろう健康増進法改正案で、規制対象にこの加熱式たばこも含めるかどうかだ。結果次第で将来の税収も大幅に変わってくるだろう。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)