シンカー:1月の失業率は2.4%と、12月の2.7%(季節調整の改定によって2.8%から下方修正)から大幅に低下した。11・12月と新規求人が急増していたのが、1月に一気に雇用者の増加に結びついたと考えられる。1月には就業者が前月比0.64%、労働力人口も同0.24%となっており、就業者と労働力人口が双方とも増えるかなりよい形である。1月は大雪を含む天候不順があったが、復旧のための人手が必要だったからか、24歳以下の失業者が急激に低下している。特殊要因が剥げ落ちれば、2月には2.6%までリバンドする可能性があるが、雇用環境は更に改善している方向性は変わらないだろう。研究や飲食・宿泊などのサービス業、そして情報通信など、マーケットが拡大している所の雇用の増加がかなり強くなり、景気拡大シナリオに沿ってしっかり動いているようだ。過去を振り返っても、1980年代後半のバブル期も、失業率が3%から2%に低下するわずか1%のマージンの中で、賃金上昇と内需拡大が強くなり、最終的に物価も力強く上昇していった。今回も、失業率は2%台前半に定着していき、デフレ完全脱却へ向かっていくことになるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

1月の失業率は2.4%と、12月の2.7%(季節調整の改定によって2.8%から下方修正)から大幅に低下した。

11・12月と新規求人が急増していたのが、1月に一気に雇用者の増加に結びついたと考えられる。

1月には就業者が前月比0.64%、労働力人口も同0.24%となっており、就業者と労働力人口が双方とも増えるかなりよい形である。

1月は大雪を含む天候不順があったが、復旧のための人手が必要だったからか、24歳以下の失業者が急激に低下している。

特殊要因が剥げ落ちれば、2月には2.6%までリバンドする可能性があるが、雇用環境は更に改善している方向性は変わらないだろう。

研究や飲食・宿泊などのサービス業、そして情報通信など、マーケットが拡大している所の雇用の増加がかなり強くなり、景気拡大シナリオに沿ってしっかり動いているようだ。

過去を振り返っても、1980年代後半のバブル期も、失業率が3%から2%に低下するわずか1%のマージンの中で、賃金上昇と内需拡大が強くなり、最終的に物価も力強く上昇していった。

日銀の金融政策決定会合では、「失業率が2%前後にならないと2%の「物価安定の目標」は達成できない」との、片岡審議委員とみられる指摘がある。

黒田総裁の再任を含む新執行部は、これまでよりハト派的な政策スタンスを持つとみられ、片岡審議委員の考えに近づいていくと考えられる。

しかし、日銀は失業率を更に低下させる政策手段を持たないため、追加金融緩和はないだろう。

それは、実需を追加することができる財政政策の仕事である。

岩田副総裁は講演で、2%の物価目標を達成するため、財政再建のペースを緩めるべきであると、政府に異例の注文をした。日銀のみに過度の負担がかかる一因ともなった黒田総裁の財政再建への要求もなくなっていくだろう。

実需を追加し、失業率を低下させられるのは財政政策である。

政府は、2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、教育への投資を含む「全世代型社会保障制度」の創出、防災対策とインフラ整備、そしてデフレ完全脱却と生産性の向上による更なる成長を企図する攻めの緩和へ明確に転じることになった。

日銀のみに過度の負担がかかる一因ともなった、金融緩和と財政緩和のポリーシーミックスの形がより明確になり、失業率は2%台前半に定着していき、デフレ完全脱却へ向かっていくことになるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司