現金両替をメガバンクが一斉に引き上げた。大手地銀も後に続く。背景には、長引くマイナス金利や貸出先の先細りに悩む銀行の経営事情が絡む。時間外の引き出しが無料になる預金残高の条件も引き上げを進めている。超低金利が続く中、厳しい経営環境も絡み、銀行は今までは低く抑えられていたサービスの対価を見直そうとしている。

前哨戦は両替手数料の引き上げ

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(画像=PIXTA)

みずほ銀行の場合、窓口における両替は去年まで50枚を上限に無料だったが、今年1月から口座開設者でも無料は30枚まで、口座を持たない場合はたとえ1枚からでも324円の手数料を徴収する。101枚以上の場合も料金を引き上げる。仮に2000枚両替の場合、今まで1080円だったが、今後は1728円もかかる。

人件費のかかる窓口から両替機の使用を促そうという訳だが、501枚以上の場合や、たとえ500枚まででも月2回以上使う場合は、両替機であっても手数料が上がる(機械に硬貨や紙幣を詰めるにも人手を要する)。三井住友銀行や三菱UFJ銀行も、足並みをそろえて手数料を引き上げた。

海外では口座維持にも手数料を徴収

両替手数料の引上げは、口火を切ったに過ぎない。銀行は振込手数料の他、ATM利用に係わる手数料も着々と進める。三井住友銀行の場合、口座残高が10万円以上なら午後6時以降の引き出しは無料だったが、預金残高にかかわらず108円の手数料を徴収するようになった。みずほ銀行の場合、時間外手数料・コンビニATM利用手数料の条件となる口座残高が10万円から30万円に引き上げられた。

海外では口座維持手数料を徴収するのが一般的だが、日本では戦後、官民挙げて貯蓄を奨励していた上に銀行間の預金獲得競争が激しかったこともあり、口座維持手数料という発想がそもそも無かった。高度成長期の企業は慢性的な資金不足状態にあり、集めた預金は右から左へ融資されていった。

最近は貸出需要の先細りから預貸率(預金に対する貸出金の割合)が右肩下がりで、2000年には8割を超えていたのが、今では6割台にまで低下した。現状では預金が余っているのだ。さらに、低金利による銀行の業績悪化が追い打ちをかける。今までは預金者の反発や顧客離れを怖れていたが、銀行も口座維持手数料を検討せざるを得なくなってきた。

ATMも自前主義からの脱却へ

ターミナルの駅前には、至近距離に複数に亘る銀行のATMが開設されている。そんな自前主義も見直す動きが出てきた。三井住友銀行と三菱UFJ銀行は、ATM相互乗り入れの検討に入った。まず名古屋を皮切りとし、将来的にはATMの共通化を視野に入れる。みずほ銀行は勘定系の改定が控えているため参加しないが、今後合流する可能性もある。

日本のATMは小銭が入金できるうえ、通帳読み取り機能を備えるなど機能が充実しており、海外に比べて導入単価が高い。加えてATMの運用管理には、月々数10万円かかると言われている。ネット送金などが普及し現金取引が減る中で、銀行は利用頻度が下がるATMのコストを抑え込みたい。

ATM共通化に当たっては、手数料設定や収益の分配など課題も多い。各行で仕様の異なる通帳も障害となる。そこで共通ATMは、記帳機能を持たない簡易版タイプで開発される方向だ。その通帳自体も、発行手数料の検討が進んでいる。紙の通帳を発行するには1通200円の印紙税がかかり、それを銀行が負担している。

ゴールは口座維持手数料

金融全般のかじ取りを担う「銀行の銀行」である中央銀行からも、援護射撃の声が飛ぶ。日銀副総裁の一人は昨年末の講演で「銀行が適正対価を預金者に求めずに口座を開設し、振り込み・預け入れや払い出し・記帳・両替などのサービスを提供することは難しくなった」と意見した。

銀行は、預金者の反発を瀬踏みしつつ、サービスの有料化に向けてようやく動き出した。「最終的なゴールは口座維持手数料」ということで、業界内のコンセンサスは出来上がっている。(ZUU online 編集部)