『世界のエリート投資家は何を考えているのか』(アンソニー・ロビンズ 著、鈴木雅子 訳、山崎元 解説、三笠書房)。これから投資を始める人にも、実際に資産運用を実践している人にも見ていただきたい一冊だ。

本書は、カリスマコーチとして知られるアンソニー・ロビンズ氏が、厳しい投資の世界で最も影響力を持つ50人にインタビューを敢行し、そこで得られた資産形成方法に関する貴重な情報を解説している。ここでは、この書籍の中で紹介された、ある「ポートフォリオ」(保有する金融資産の一覧)に注目してみよう。

世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオ氏とは?

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(写真=aradaphotography/Shutterstock.com)

本書の最大の見どころは、一般の投資家ではアクセスすることが難しいといわれる世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であるレイ・ダリオ氏が、個人投資家でも実践できる運用ポートフォリオとして「黄金のポートフォリオ」を提示していることだろう。

レイ・ダリオ氏とは「投資界のスティーブ・ジョブズ」の異名を持つカリスマ投資家である。同氏が率いる前述のブリッジウォーター・アソシエイツは、1,600億ドルにも上る運用資産残高を誇り、「純資産が50億ドル以上、もしくは初期投資金額が1億ドル以上の投資家」のみに、ファンドへのアクセスが限定されている。そんな投資業界の偉人が、いかなる経済環境にも対応した、個人投資家でも実践可能なポートフォリオを提示した。

レイ・ダリオ式「黄金のポートフォリオ」で行う分散投資とは

レイ・ダリオ氏が提案する「黄金のポートフォリオ」とは、次に挙げる配分で各資産に分散投資するというものだ。

・株式(S&P500もしくは他のインデックスファンド):30%
・長期米国債(20年から25年満期):40%
・中期米国債(7年から10年満期):15%
・金:7.5%
・商品取引:7.5%

ここで注目したいのは、株式は債券と比較して3倍のリスクを抱えることになるという主張から、債券比率を高めることで、リスクバランスの取れたポートフォリオを構築していることだ。このポートフォリオならば、2008年のリーマン・ショックのような大不況時にも、資産価格全体が大きく下落しないとされている。

アンソニー・ロビンズ氏の社内経済チームは、米国で401kプランがスタートし、個人投資家でも株式市場で投資が可能となった1984年から2013年の30年間にわたり、黄金のポートフォリオの仮想実績の検証を行っている。その結果、この個人投資家向けのポートフォリオが、非常に強固であることが実証された。

まず、手数料控除後の年間利回りは9.72%、9割近くの期間において、プラスのパフォーマンスとなった。最も損失を出した年の収益率が、2008年で利回りは-3.93%だったそうだ。「黄金のポートフォリオ」が、どのような投資環境下に置かれようとも、損失を限定し、利益を着実に出してきたかが想像できる。

アンソニー・ロビンズ氏は、「黄金のポートフォリオ」を参考に、投資を実践する際の注意事項も挙げている。まず、コスト効率の高いインデックスファンドやETFでの運用を心掛け、最低でも1年に1度、ポートフォリオのリバランス(株式や債券の配分比率を当初設定時のものに戻すこと)を行うこと、非課税口座による節税効果を最大限享受した投資を行うことを推奨している。

さて今回は、アンソニー・ロビンズ氏の投資関連書籍『世界のエリート投資家は何を考えているのか』をもとに、天才投資家と呼ばれているレイ・ダリオ氏の個人投資家でも実践できる「黄金のポートフォリオ」を紹介してみた。日本の個人投資家も、非課税制度であるiDeCoやNISAを活用し、節税メリットを享受しながら自分自身の黄金のポートフォリオを構築してみてはいかがだろうか。

出典:書籍『世界のエリート投資家は何を考えているのか』