ブラジルでは、10月26日にジルマ・ルセフ現大統領(労働党)とアエシオ・ネベス候補(社会民主党)の決選投票を控えている。22日には、両者の支持率がほぼ互角になっていると報じられており、投資家の注目が集まっている。


労働党vs社会民主党

ブラジルは、大統領制であり、任期は4年となっている。議会は上院(81議席)と下院(513議席)の二院制に分かれている。現大統領のジルマ・ルセフ大統領は、与党である労働党に属している。労働者党は、労働運動家らによって結成された政党で、文字のごとく労働者側を支持母体とする政党である。
政治思想としては、議会制民主主義をとりながら社会主義の理想を実現しようとする民主社会主義を採っている。その他の政党としては、中道主義のブラジル民主運動党、ネベス候補擁する社会民主主義をめざすブラジル社会民主党などがある。

両候補者の特徴は以下のとおりである。

現職 ルセフ現大統領(労働党)女性
・貧困層に支持されている。
・構造改革が後退、今後の金融市場が不安定になる。
・インフレ抑制がうまくいっていない。
・堅実に公共投資を拡大している。

対立候補 ネベス候補(社会民主党)男性
・高所得層から支持されている。
・経済の構造改革を積極的に推進(株式、債権、為替、上昇の可能性大)
・遅れているインフラ事業が推進されるとの期待がある。
・インフレ抑制が進められる。


経済成長促進を狙った政策金利引き下げが裏目に…

ブラジルは、BRICsの一国であり、経済発展が期待されている国である。ブラジルの国土面積は日本の約22.5倍と広大であり、人口も2億人と巨大なマーケットを有している。経済成長率は、2010年7.5%、2011年2.7%、2012年1.0%、2013年2.5と若干下降気味ではあるものの、コーヒーや砂糖、オレンジなどの資源が豊富でインフラ整備などの需要もあることから、経済の伸びしろは十分にあるため世界から注目されている。
現大統領のジルマ・ルセフ大統領は、経済成長を促すため政策金利の引き下げを行った。ところが、需要に生産が追いつかずインフレ率が上昇し、GDPの成長率も低迷してしまった。現在は、方向を転換し、政策金利を11%に引上げ、インフレ率の悪化を食い止めようとしているがうまくいっていない。そのため、金融市場においては、政権交代を期待する声が大きい。


大統領選挙後の金融市場への影響は?

現職の大統領であるジルマ・ルセフ氏は、貧困層から支持されており、企業重視の政策がとりにくという特徴がある。当選すれば、当然これまで政策が継承されるので、大きな変化は生じないものと思われるが、経済が低迷しているので、改革派からは失望売りが生まれ、経済が不安定になるおそれがある。もっとも、インフレ抑制と強い経済成長の実現を公約しているので、これまでの反省を踏まえ、経済が回復する可能性は十分ある。

一方、対立候補のネベス氏が当選した場合には、抜本的な構造改革がなされる可能性が高く、その期待から市場が好感し、上昇することが見込まれる。また、企業よりの政党であるため、経済の活性化を図る積極的な施策がなされることが期待される。その意味で、短期的な金融市場では、ネベス氏が当選した方が経済効果は高いといえる。

もっとも、景気の低迷を脱却するためには、金融緩和が求められるところであり、金融緩和をすればインフレ率が上昇するというジレンマを抱えていることから、どちらが当選したとしても難しい政策運営が待ち構えている。

ブラジルワールドカップでは治安の悪さなどから、期待されたほどの経済効果は得られなかったとも報じられているが、リオ五輪も控えており、大きな可能性を秘めた国であることは間違いなく、投資対象として引き続き目が離せない国である。

(ZUU online)

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