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政府は、「地方創生」をキーワードに、地方の活性化と人口減少を食い止め、若者にとって魅力ある町づくり、ひとづくり、仕事づくりを推進する、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置した。政府は、これを最重要課題として本格的に取り組む姿勢を示している。

このように、地方創生が注目されるようになった背景には、民間研究機関の「日本創生会議・人口減少問題検討分科会」が公表した報告書がある。この報告書では、地方からの人口流出がこのまま続くと、人口の「再生産力」を示す「若年女性(20.〜39歳)」が2040年までに50%以上減少する市町村が896(全体の49.8%)にのぼると推計されている。そして、これら市町村は、いくら出生率が上がっても将来的には消滅するおそれが高いと指摘されている。一方で、大都市、特に東京圏は高齢化が一挙に進むことが予想されている。

また、アベノミクスは、主に輸出産業に大きな経済的利益をもたらしたが、地方経済は内需中心であるため、その効果は地方には行き渡っていない。その結果、消費が伸びず、GDP(国内総生産)の成長率も伸び悩んでいる。景気回復の実感が地方にまで行き渡らなければ政権自体を揺るがしかねないことから、地方をなんとかして活性化しようと必死になっているわけである。

しかし、過疎化や人口減少など、地方の構造的問題を解決することは容易ではない。具体的な課題としては、

(1)人口急減・超高齢化への対応、
(2)若い世代の就業・結婚・子育て支援、
(3)東京圏への人口の過度の集中是正、
(4)地域特性に即した地域課題の解決などだが、いずれも難問ばかりだ。

過去の政策で大きなものとしては、竹下内閣の「ふるさと創生事業」がある。これは、全国の市区町村に対し1億円を交付するというものであった。しかし、使い道がみつからない地方自治体では、「世界一大きいこま犬」を作ったり、「金のコケシ」を作ったりとお金を使うことが目的化してしまった。結果、地方は活性化しなかった。

また、地方において企業や工場を誘致した場合に補助金を出したり、公共工事で一時的な雇用対策をしたりすることは何度もなされてきたが、活性化するには至っていない。本来であれば、地方自治体が主体となって、地域の特性に応じて、地場産業を育成したり、保育所や学校を整備したりすることが重要なのであるが、実際には、国の施策に乗っかるだけで、独自の対策が十分にできていない。やはり、地方には改革をしていこうというリーダーシップをもった人材が不足しているといえる。

もちろん、地方自治体でも活性化しようと頑張っているところはある。しかし、例えば、地方側が国に求めている「若者の結婚支援のため出会いの場を用意する」といった事業は、財務省が「税金で婚活パーティーをやるわけにはいかない」と難色を示すなど、相変わらず、中央集権的な発想から抜け切れていない。やはり、根本的な課題は、霞が関から補助金を出すというスタイルを改めなければならない。

この問題を解決するためには、結局は、それぞれの地方が魅力のある街作りをしていくしかない。そのためには、優秀な人材が必要となるが、優秀な人材は都市部に集中しているので、これら人材をどうやって地方の活性化の業務に参加してもらうかが課題となる。


地方創生のカギはIT活用『クラウドソーシング」

この点については、IT技術の進歩により、最近はクラウドソーシングにより仕事ができる環境が整いつつある。したがって、地方自治体のIT環境を改善すれば、都市部の優秀な人材とマッチングすることも不可能ではない。そのためにも、国は人材派遣だけでなく、地方のIT環境の整備や都市部の人材とのマッチングまでコーディネートする必要がある。

人口減少の問題は、社会保障の問題の他、経済に直結する問題である。中国がこれほどまでに経済発展しているのは、13億人もの人口がいるからである。日本の10倍以上もの人口がいるわけだから、単純に考えても、生産能力、消費いずれも日本より大きくなることは自明なのである。このまま、日本の人口減少が続けば、労働力人口が減り、生産能力が落ち、いずれは経済が衰退していくことになる。そうならないためにも、人口を増加させつつ、付加価値の高い製品を作り続けていかなければならない。日本の将来のためにも是非とも「地方創生」に期待したいところである。

(ZUU online)

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