◉メジャーリーグの億万長者

さて、そんなシステマティックな米国野球界の億万長者クラブは、たったの9人とかなり小さく、彼らの多くは億万長者クラブの運命に、少なくとも公式ではほとんど関心がありません。
また、スポーツチームを買い取る億万長者が増えているこの時代に、野球界では契約が保留となっています。

億万長者のほとんどは、自分たちの思い通りにすることで今の地位を獲得してきました。しかし、メジャーリーグのチーム運営はあまりオーナーの個人色を出しづらい領域です。
例えば、1人の選手の長期契約がチームの長期存続を左右するNBAなどとは違い、メジャーリーグチームは多角的モデル経営がなされています。マイナーリーグの運営、国外からのスカウト、一部事前決定される給与に上限が設けられていないことなどです。これらは、フロントオフィスの権力者が全てを支配するよりも、責任分担した共同経営が合っているのです。

ウォルター・オマリー氏、チャーリー・フィンリー氏、ジョージ・スタインブレナー氏らが活躍した時代もありましたが、当時の野球チーム運営は今よりもシンプルでした。買収したごく少数の大富豪が、チーム経営に積極的に関わることを選んだのです。

しかし、現在、サンフランシスコ・ジャイアンツのオーナー、チャールズ・ジョンソン氏(80才)は、自身の投資会社Franklin Resourcesに管理を任せ、野球には口出ししないようにしています。
出資パートナーであるローレンス・ベーア氏を57億ドルでCEOとし、球団運営を任せています。この方法は上手くいっているようで、魅力溢れる球場や、過去3年で2度ワールドシリーズを制覇したこともあり、ジャイアンツのファンあたり収益はメジャーリーグでトップです。

サンフランシスコ湾を渡ったオークランド・アスレチックスのオーナー、ジョン・フィッシャー氏はGap小売店の資産22億ドル相当の相続人ですが、彼もやり方は同じです。パートナーのルー・ウルフ氏とアスレチックスの一部オーナーでもあるゼネラルマネージャーのビリー・ビーン氏にチーム経営を委ねています。

他にも、表舞台に出てこないことで満足している人たちが野球界にはいます。Liverty Media会長ジョン・マローン氏は自身の会社がアトランタ・ブレーブスの経営権を保有しており、エネルギー専門家レイ・デイヴィス氏は2011年にテキサス・レンジャーズを破産から救いましたが、地元スポーツ界の注目はジェリー・ジョーンズ氏やマーク・キューバン氏に譲り、満足しています。

例外は、エンジェルスのオーナー、アルトゥーロ・モレノ氏です。
屋外広告で財を成したモレノ氏は、ロサンゼルスファンの心に向けられているドジャーズに追いつくべく、自身の財産15億ドルの一部を、目が回らんばかりのスピードで大きなリスクを取っています。モレノ氏は、ステロイド時代後に、3億ドル超でアルバート・プホルス氏およびジョシュ・ハミルトン氏と契約を結びました。
まさに、後で泣きを見るかもしれない指揮命令者タイプです。

以上、メジャーリーグの概要やビジネスモデルと、そこに関わるプロ野球オーナーの億万長者達の姿についてまとめてみました。
よく、ビジネスの話をするときに野球を例え話に用いる方がいらっしゃいますが、システマティックなスポーツである野球はビジネス(会社経営)と似ている所が多いと思います。メジャーリーグの話題も、余談程度には押さえておいて良いのかもしれません。

BY TOMB

photo credit: Werner Kunz via photopin cc