ご無沙汰しております。NSでございます。

近頃、マレーシアのビジネスオーナー達と仕事をさせて頂き、そのコミュニティーに顔を出させていただく機会が増えてきました。
マレーシアという国は、その特殊性からシンガポールという国では見られない優秀でハングリー精神の旺盛な経営者達と出会うことができる面白い国です

今回、私の感じているマレーシアのビジネスオーナー達のダイナミズムについてお届けしたいと思います。

【参考】

なぜ優秀な人材は金融業界を目指すのか?〜昨今の就活について感じること〜
世界で活躍するプロフェッショナルの条件〜シンガポールでの採用活動を通じて感じる事〜
格差社会の加速と外国人&富裕層の独壇場?〜円安と資産インフレが作る日本の未来〜
富裕層を魅了するシンガポール~教育問題・言論の自由…その魅力の裏に潜む影~
大事なのはお酒とゴルフ?〜もしアジアの大富豪からホームパーティーに呼ばれたら〜
桁外れの大富豪!アジアの大物達の金銭感覚ってどんななの?
アジアの富裕層ビジネスにおいて必要とされる2つの信頼関係〜PBビジネスの魅力を感じる瞬間とは?〜
尊敬されるお金持ちってどんな人?〜資本主義社会における成功者の意味〜




◉創業者の少ないシンガポール系エリート


以前にも申し上げたかもしれませんが 、シンガポールという国は非常に規律立った国でエリートを意識的に作り上げて行く傾向が顕著に見られる国だという印象を強く受ける国です。

しかし、そのエリートたちがいわゆる民間セクターで経営者として活躍するのは、政府系の会社が殆どだと言っても過言ではないと思われます。テレコム、不動産、船舶などのCEOは欧米の経営者に劣らない待遇を受けてはいますが、彼らは私からするとシンガポールのエリート養成システムを勝ち抜いてきた人々で、国の関係者という意味でのインサイダーだと思っています。

そして、経営者ではなく創業者という括りでみると、非常に限られた名前しか思いつけない状況です。
ハイフラックスという水道事業の会社を数少ない本当の意味での成功事例としてシンガポールメディアはとりあげますが、その女性経営者は皮肉なことにマレーシア出身だったりします。
シンガポールにおいては、ある程度そのシステムにおける成功者ラインに乗っかってしまうと、その後に進むべき道が、早いうちからとても綺麗に敷かれてしまう傾向があります。そのため本当に優秀な人材が、そこまでリスクを負ってその路線から外れる必要性はないのだと思います。


◉マレーシアの人材事情


しかしながら、マレーシアはそうはいきません。

そして、私がここで取り上げるマレーシアのオーナーの方々は、マレー人ではありません。
マレーシアでは、ご存知の通り長年に渡るマレー人優遇政策が行われており、基本的に政府の意思決定はマレー人を中心になされています。会社を作る際にも、マレー人が3割以上の株式を保有しなくてはいけないとか、大学入学の枠もマレー人に優先的に割り当てられていたりもします。

当然マレー人経営者の中にも素晴らしい方々はおられるのでしょうが、大抵のケースが政府がらみの受注案件をメインに請け負っており、いわゆるコネクションを利用して商売をしている傾向が強いです。
また依然として賄賂、政府資金の流用などは横行しているようで、実際にそれを商売上の経費と割り切っているオーナーが多いのは事実です。また、今回の選挙で与党が辛うじて政権を守ったために、膿が出てくるのはまだまだ先になりそうです。

話を少しそらせますが、このマレー優遇政策の大きな代償になりそうだと個人的に思ているのが“頭脳流出問題”です。この変わりそうもないマレー優遇政策の続く社会において、華人やインド人富裕層、成功者の婦女子が自国に戻ってくるメリットはどこまであるでしょうか。
親のビジネスを継ぐのに兄弟全員が参加する必要はないでしょうし、マレーシア企業に普通に就職しようにも先進国の会社で得られるような賃金を得られる機会は殆どないでしょう。優秀なマレーシア華人は何の抵抗もなく、積極的に海外での活躍を求めます。また、移住先で生まれた子供は、その国を国籍として選択するケースが多いようです。

たまたまかもしれませんが、私のオフィスにいる優秀なマレーシア華人の方々は、本人たちはマレーシア国籍を保持しているものの、そのお子様方はシンガポール国籍を選択しています。

シンガポール政府のしたたかさを褒めるべきか、マレーシア政府の無策ぶりを嘆くべきか難しいところですね。その他にも、オーストラリアなども非マレー系マレーシア人の移住先としては好まれているようです。
この簡単には見えづらい人材の流出は、何十年後かに必ず響いてくる問題だと思います。