今や時の人となり、過熱気味のブームともいえる、フランス人経済学者・ピケティ氏の「21世紀の資本」が、非常に大きな注目を集めている。経済成長率よりも投資からのリターン率が常に大きくなるという分析を基に、世界的な規模で資本に対して累進的的に課税を行う解決策が同氏により提示されている。

ピケティ氏の主張が支持される背景には、格差の広がりに対する危惧がある。資本収益率が経済成長率を常に上回ることから、投資に回すことのできる資産を豊富に持つ富裕層がより効率的に利益を上げ、富裕層に富がさらに集中していく。その結果として富めるものがより富み、格差が拡大していく構造だ。

かつては、トリクルダウンと呼ばれる富裕層への富の集中しても、自然に富が滴り落ちるように、社会全体もメリットを享受できるとも主張されるなど、より自由な経済活動が肯定的に受け止められてきた。

ピケティ氏の主張は、こうした流れの下の格差拡大を受けて、全世界が協調して資産に累進課税を行うという対策を行うことだ。さながら、同氏の対策を実施に移そうとするかのように、資産を多く持つ富裕層に対する、資産把握の包囲網がせばまりつつあるようだ。

そうした現状を指摘するのは、大和総研(DIR)の金融調査部 制度調査担当部長の吉井 一洋氏だ。2月19日に公表されたコラムで、ピケティ氏の著書で累進的資本課税を行うためには、富裕層の資産を把握する全世界的なシステムが必要であることを同氏は指摘。「体制整備は遠い将来のように思えるかもしれないが、すでに、それに近い体制整備は世界的に実施されつつある」と現状を紹介した。

具体的な動きとして吉井氏は、国外財産調書制度などを紹介。同制度では、それぞれの年末に5000万以上の国外財産を有する日本人が、資産内容を報告しなければならないと規定される。

ほかにも、2000万円以上で、3億円以上の資産を持つか有価証券・未決済デリバティブ等が1億円を超えて保有している人に対して、資産内容を届け出させる財産債務調書の整備も進む。さらには、OECD加盟国の金融機関の口座情報を各国当局で共有する動きもあるという。

いずれの動きも富裕層の資産内容を正確に把握することにつながるとみられ、その点では、資産課税を容易にする効果もありそうだ。国内・海外にそれぞれ資産を持つ人を対象に包囲網が狭まってきているとも受け止められ、今後、資産管理を検討する上でも注目の動向となりそうだ。

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(ZUU online)

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