個人の負担がますます増える相続税の改正

2015年1月より改正相続税法がスタートした。これに伴い、今まで相続税と無縁だった人達でも相続税の納税義務者になる可能性が出てきた。一方、政府は1月14日、法人実効税率の引下げを中心とした平成27年度税制改正大綱を閣議で正式決定しており、「法人減税・個人増税」の傾向が顕著になっている。この本格的な個人増税時代を乗り切るために注目を浴びているのが、「税制メリットの大きい」アパート経営だ。


相続税増税に「アパート経営の節税メリット」で対抗する

この流れの中で、現金や金融商品で相続するよりも、アパートを経営することにより、相続人により多くの財産を残しやすいと考える人が増えている理由は3つある。

■アパートの節税メリット①「公示価格による評価圧縮」
土地の評価方法には、実際に取引される「時価」や、国土交通省が発表する「公示価格」などがある。首都圏や地方都市では、時価よりも公示価格が安いことが多く、さらに相続税や贈与税を算定する「相続税路線価」は公示価格の8割が目安となっている。例えば、1億円の公示価格であれば、約8000万円の評価にすることが可能というわけだ。

この「時価>公示価格>相続税路線価」の仕組みによって、現金で所有している時よりも財産の評価額を大幅に圧縮することができ、相続時に節税することが可能なのだ。

■ アパートの節税メリット②「貸家建付地」
アパートが建っている土地は「貸家建付地」と呼ばれており、賃借人がいるため土地所有者が手軽に処分することができない。この賃借人の居住権を考慮し、土地の評価額は「自用地とした場合の価額−自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合」の式にあてはめられて計算される。

借地権と借家権の割合は地域によって異なるが、例えば1億円の土地の場合、概ね8割前後の評価になる。合わせて、アパートの建物にも、「建物の固定資産税評価額×(1−借地権割合)」という式があり、建設費の5割前後の評価となる。

■ アパートの節税メリット③「小規模宅地の特例」
また、アパートの建っている土地には、「小規模宅地の特例」という制度が適用され、200㎡までの土地は評価が50%になる。つまり、300㎡の土地を所有している方が亡くなり、その土地をアパートに活用していた場合、300㎡の土地のうち200㎡については、評価額が約半分になるというわけだ。


ワンルームマンション経営との節税比較

同じ不動産投資では区分所有といわれるワンルームマンションへの投資もあるが、どちらの節税メリットが大きいのだろうか?

アパート経営とワンルームマンション経営の最大の違いは、「所有する土地の広さ」である。300㎡の土地でアパート経営をすればそのすべてを所有できるが、同じ広さの土地に建っている100戸のマンションの1室を購入した場合、3㎡の共同所有になってしまう。先に挙げたメリット②「借家建付地」はワンルームマンションにも適用されるが、土地の面積がごくわずかなため、建物評価を圧縮するメリットしか事実上得ることができない。

また、メリット①「公示価格」やメリット③「小規模宅地の特例」も土地にひもづくものであり、ワンルームマンションではメリットがないというのが実状である。


「個人負担増」時代に対抗するには決断力も重要

節税とは別に利回りという観点から見ても、アパート経営は有利だ。立地や築年数にもよるので一概には言えないものの、首都圏の好立地に建つマンションの表面利回りは、概ね3〜5%が平均値である。これに対して、アパート経営では5%を超える優秀物件も少なくない。節税と利回りの両方の観点から見て、アパート経営はマンション経営に比べて有利と言える。

もしアパート経営をはじめるなら早い方がいいだろう。アパートを購入した時には、建物部分に対して消費税が適用される。消費税の10%増は先送りされたものの、近い将来に施行される可能性は極めて高く、日本の財政状況を考えればさらに段階的に引き上げが続くのはやむをえないだろう。建物評価が5000万円で、消費税が8%から10%に上がった場合、約100万円もの差になる。

ただし、消費税増税前に購入すれば良いという考え方をする投資家が今後増えると予想されることから、物件価格が高くなる可能性も否定できない。「個人負担増」時代に対抗するには、「決断力」も重要な要素である。(ZUU online 編集部)