大塚家具
(写真=大川佑)

大塚家具 <8186>の株価が急騰している。3営業日連続で制限値幅の上限(ストップ高)となるなど、活発な取引が続いているがなぜなのだろうか。


戦略維持か、変革か



まず、大塚家具で現在巻き起こっている騒動を整理したい。創業者で発行済み株式の約18%にあたる350万株を保有する大塚勝久会長と、その次に株式を保有している(資産管理会社を通じて約10%)長女の大塚久美子社長の間で、経営の主導権を巡る委任状争奪戦(プロキシーファイト)が行われている。実の親子の間で溝が生まれた理由は、その経営方針のちがいにあるとされている。

大塚家具の接客は、勝久会長が創業して以降、来店時に氏名などの個人情報を記入する「会員制」中心の手法で、顧客の購買履歴を把握した担当者が、ニーズに合った売り場を案内して商品を提案するというもの。主に高級家具を扱い、富裕層中心の高付加価値型の接客を売りに成長した。だか、昨今はニトリ <9843>やIKEAのように、商品企画から販売までを自社で行う低価格型の家具店に顧客が流れ、売上面で押されているということもあり、久美子社長は、高級家具専門店という路線は維持したいものの、個人情報を書く前提では集客が難しいと判断。「会員制」からの脱却し、カジュアルな店舗運営を掲げた。また、特化型専門店の検討、ホテルや商業施設向けの法人事業を強化するなど、これまでのビジネスモデルからの大きな変革を打ち出したのだ。

そして、各々が自身の方針に沿った経営を行うべく、勝久会長側は久美子社長ら経営陣の退陣を求める株主提案を提出し、久美子社長側も、勝久会長が取締役を退任する人事案を含む株主総会の招集通知を発送するというお家騒動に発展、プロキシーファイトがスタートしたのだ。しかしながら、経営権を巡る役員間の対立が表面化している企業の株がなぜ買われるのだろうか。


双方の増配案が株価急騰の原因か



ポイントは、両者が株主から支持を得るために提案する企業価値向上策にある。久美子社長側は、前期1株あたり40円だった配当を80円にする案を提示し、対する勝久会長側も2017年12月期までに3倍の120円にすると発表した。この提案が現実となれば配当利回りは大幅に上昇することから、買いが殺到したのだ。そして、このプロキシーファイトに勝利するためには議決権の過半数を得る必要があるため、今後もこのような増配案など、積極的な経営方針の発表を続けるのでは、という期待感から、連日ストップ高という結果になったのである。


マネーゲームの先に待ち受けるものは



もっとも、この議決権を行使できるのは、昨年12月末時点で株主だった者だ。つまり、現在、大塚家具株を買っている投資家は、増配などの提案や期待感から株主となっており、売り手は以前から大塚家具株を持っていたが今回の騒動を受け手放した投資家となる(マネーゲーム化しつつあるため、投機家同士が売買している部分もある)。接客手法や経営方針は勝久会長、久美子社長ともに一理あるものの、この騒動は、大塚家具に魅力を感じていた既存の株主離れや、肝心の顧客離れにつながる可能性がある。一度離れていった顧客や株主を取り戻すのは至難の業だ。この事態を引き起こしてしまった経営陣が今後、顧客の信頼を取り戻せるのかは甚だ疑問だが、まずはこの騒動の早期終結を期待したい。(ZUU online 編集部)

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