スズキは4月22日、エンジンスイッチの不具合によりハンドル付近から出火する可能性があるとして、187万2,903台のリコールを発表した。対象は1998年8月から2009年8月にかけて生産された「アルト」「ワゴンR」など9車種。1度に届け出た国内リコールとしては、過去最多台数になる。

スズキの発表によれば、イグニッションスイッチのグリスが炭化し、最悪の場合、出火のおそれがあるという。 今後、対象車種の部品交換を順次受け付けるとしているが、リコール台数が187万台と非常に多く、対象車種も幅広いため、部品調達に時間を要しそうだ。当然、部品交換も長期化が予想される。対応期間が長期化すればするほど、スズキの企業イメージ低下が懸念されるところだ。


不具合対応に不備、欧州でもリコールが相次ぐ

スズキは、3月31日にパトカー用に提供している「ソリオ」など4車種について、今回と同じ理由で12万5,755台のコールを発表したばかりだ。今回のリコールは、3月のリコール対応で疑義があったため、国交省が監査した結果、発覚したという。また、国交省から不具合情報の収集体制でも不備を指摘されており、スズキは今、自動車メーカーとしての企業姿勢が問われている。

スズキの今期業績は昨年と同水準の連結売上高3兆円、営業利益1,880億円を見込む。しかし、ユーロ安により欧州での採算が悪化、今年2月には英国で発売したばかりのコンパクトカー「セレリオ」のブレーキペダルに不具合が判明。発売からわずか1日で販売を一時見合わせる事態となったばかりだ。今回のリコール費用も含めると、営業利益は計画よりも下振れしそうだ。


国内は鈍化、成長著しいのはインド市場

国内の軽自動車市場は、ダイハツ工業との競争が激化しているのに加え、増税の反動減や税引き上げによるマイナス材料で、なかなか利益を出しづらくなってきている。一方、海外に目を向けるとインドでの売上が非常に好調で、2014年度通期のインドの現地法人の売上高は約9,155億円と前年比14%増、純利益は約700億円で33.4%の大幅増益となった。

スズキは安価な小型車の生産を強みに、80年代という早い段階からインドに進出したため、現地で根強い人気で40%というトップシェアを誇る。インド市場を独走している状態だ。

スズキは成長著しいインドで獲得した資金を、次のターゲットと位置付けている東南アジア市場の開拓に使う計画だ。ミャンマーに乗用車用の新工場を建設、2017年に本格稼働をめざす。

すでにヤンゴン南東部の工業団地に工場用の土地20ヘクタールを確保。投資額は数十億円規模となりそうだ。ミャンマーは民主化後、自動車市場が急拡大している。ミャンマーで流通している車は、日本から輸入された中古車が8割を占めるといい、経済成長が見込める同国で市場拡大を狙う。


成長と品質確保、両立させる仕組みづくりが求められる

新市場開拓へ、投資にばかり目がいくと、品質確保のコストが減少しがちだ。他社との競争で性急な成長を模索した結果、リコールが発生しては元も子もない。スズキは製品保証引当金として611億円を確保しているが、今回のリコール対応に十分まかなえる額でない可能性もあり、損失は今後も拡大するかもしれない。

しかし、手元資金が豊富なスズキにとっては財務的には大きな問題ではないだろう。それよりも度重なるリコールによる企業イメージ損失の方が経営ダメージになるかもしれない。

過去最多リコールによって経営に影響がおよばないよう、転ばぬ先の杖として品質を確保しつつ、新市場の開拓投資も行うという、バランスの舵取りが求められている。(ZUU online 編集部)

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