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(この記事は2015年5月1日に掲載されたものです。提供: Vortex online

現在の経営環境は、「変化が早い」「国際間の競争が激しい」「価値観の多様化」「マーケットが読めない」など、多くの経営者にとって難しい舵取りを迫られる時代である。変動が激しく、舵取りの難しい現在の経営環境は、リスクが高い反面、大きなチャンスをものにできる絶好の時代でもあるといえる。このような時代だからこそ、心に銘じておきたいドラッカーの数多くの名言のなかから、1つをご紹介する。


ドラッカーの名言

その名言とは、彼の著書『ポスト資本主義社会』のなかの「明日の組織のモデルは、オーケストラである。250人の団員はそれぞれが専門家である。チューバだけでは演奏できない。演奏するのはオーケストラである。オーケストラは、250人の団員全員が同じ楽譜をもつことによって演奏する」という言葉だ。


ドラッカーの名言の意味

ドラッカーの言う「組織はオーケストラ」の意味は難しくはなく、「組織の構成員はプロであること」「社員教育の必要性」「プロだけでは組織は機能しない」「組織には明確なビジョン、ミッションが必要なこと」「明確なビジョン、ミッションを組織に浸透させ、行動させるリーダーシップの必要性」を示している。

戦略志向の強い経営者は、今の経営環境に合ったビジョンを明確に描くことに一生懸命になり、そのビジョンをもとに組織を引っ張ろうとする。また、実務をよく知った経営者は、厳しい経営環境を乗り切るために先頭に立って頑張り、組織を引っ張ろうとする。

このどちらも間違いではないのだが、今の経営環境には、その努力を上回る大きな波が襲ってきているのである。まるで、人間が自然の驚異には、いくら備えをしっかりしていても無力なように。


「組織はオーケストラ」とは「経営はオーケストラ」を意味する

ドラッカーは、組織のあり方としてこの名言を述べているが、この前提には、経営目的や戦略としてのビジョン、ミッションがありきであることから、「経営はオーケストラ」と言い換えても問題ないと思われる。

全員がプロでビジョンが明確であれば、組織プレーが必要な多くのスポーツなどのチーム(組織)の場合、監督不在でもいい成績を収められる可能性は高いといえる。しかし、同等のレベルのチームやそれ以上のチームに勝つには、やはり、監督(経営者)のマネジメント力が問われてくる。サッカーチームが監督次第で大きな変化を遂げるのと同様である。

このことがもっとも顕著な事例は、スポーツからは大きく外れるが、戦国時代の織田信長の“桶狭間の戦い”に見るリーダーシップだ。昔ながらの戦国大名は、農民を兵士としてかき集めた関係から農繁期には戦をしない、いわば戦いの素人集団の兼任軍隊を率いて戦争を行っていた。

一方、織田信長は、早くから農民と兵士を切り離し、兼任ではない専門軍隊を率いていた。桶狭間の戦いの前、織田信長の重臣達は、籠城を主張したと言われている。そのころの織田信長は、まだ弱小大名のため明確な天下統一のビジョンを持っていたかどうかは分からないが、何かしらの強固なビジョンを持っていたことは想像できる。そのビジョンや組織の強さが織田信長のリーダーシップとあいまって、籠城ではなく、一か八かの野戦を決断し、大番狂わせを起こしたのだ。


最後に、ドラッカーの名言への付け足し

最後に、ドラッカーには多くの名言があるが、今回の名言に1つ付け加えるなら、「組織はオーケストラ」には少し合わないかもしれないが、「異能な人材を見つけ、育て、活かすことが重要である」と付け加えたい。

高度成長時代には、不要で邪魔でもあった組織に合わない人材も、その才能が光っていれば、変化や先の読めない今の時代には極めて重要な人材となる。「組織はオーケストラ」は「組織はハーモニー」と同義である。異能な存在は組織のハーモニーを乱すが、うまく使いこなすことができれば、企業として、経営として、組織として、技術としてのブレークスルーを起こすことができる。今の時代は、大きな変化を起こせるチャンスの時代なのだ。

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