北浜流一郎
(写真=株主手帳2015年6月号)

北浜流一郎 株式アドバイザー
【プロフィール】
1943年、鹿児島県生まれ。慶応義塾大学商学部中退。ジャーナリストから、株式評論家となり、『東京スポーツ』「ネットマネー」「チャートブック日足集」などの株式欄を担当。ラジオたんぱの番組のパーソナリティーも務める。その推奨銘柄の的中率の高さから「当たり屋」として知られ、一般投資家の絶大な人気を誇る。
北浜氏のHP kabu-rich.com


投資指令

15年前の相場を覚えておられるだろうか。ITバブル相場。こう呼んだ相場だ。ヤフーやソフトバンク、光通信株などが驚異的な上昇となり、評価益が億単位に膨らんだ人が多数いた。いわゆるヤフー長者やソフトバンク株長者が多数生まれつつあったのだ。中には実際に長者になった人もいる。

しかしほとんどは長者候補で終わってしまった。間もなく市場は急落し、含み益はたちまち縮小、気付いた時には市場のどこかへ消え去っていたからだ。ITバブル相場で得た含み益は、まさに夢や幻に終わったのだった。それが起きた時の日経平均は2万円だったことから、今回の2万円台乗せでもかつてと同じようなことになるのではないか。

こんな懸念の声が聞かれる。しかしそんな心配は無用といえる。いまは確かに水準的には2万円台となっているものの、市場はほとんど盛り上がっていない。市場が崩壊するには、バブル的現象、つまり大きな盛り上がりが必要だ。ところがいまは閑散とはいわないものの、それに近いほど市場は寂しい。

しかも多くの個人投資家は、市場の上昇ぶりを冷やかに眺めている。こんな状態になっている。これでは市場はよほどのことでもない限り大きく崩れてしまったりはしない。下げても調整であり、結果的には適度な押し目が入るという形なると見てよい。

何しろ東京市場には強力な買い手がいるのだ。それはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめ、公務員年金、企業年金、さらには証券会社のラップ口座、投資信託などだ。

これらの資金は、広く国民から預けられたものであり、高パフォーマンスを求めて株式市場にどんどん投じられているのが実際だ。そしてそれらは今後ますます増えて行くだろう。特にラップ口座などは、自分で信用するのは大変なのでプロに運用してもらいたい。こんな人が急増しているからだ。

私にいわせると、自分で運用した方がはるかに成果が上がると思うが、世の中にはそうは思わない人が多いのは確かで、知り合いの証券マンの話しでは、「300万円、500万円と預けるお客様が相次いでいて、正直びっくりですよ」とのことだった。

どう投資するかは個々人の自由なので他人がとやかく言うべきことではないものの、株式投資の醍醐味は自分で有望と考えた銘柄が上がって利益を獲得できること。これ以上の歓びはなく、やはり私は自分の資金は自分で運用する。これをお勧めしたい。