前回のエントリーでアジア人が日本の不動産を物色し出しているという話はさせていただきました。

参考: 日本の不動産ってどうなのよ?~高騰する海外市場との比較より~

私のバイアスも少し入ってしまってるかもしれませんが、今回は普段私が接しているアジア人富裕層の方達の運用スタイルについてお話させて頂こうと思います。

基本的にアジア人富裕層というのは、企業オーナーが大多数であり、ご自身の商売で投資額に対して10%くらいの利益率は単純に達成してしまう人たちです。そのため、米国やシンガポール国債などを沢山買っている人は見たことがないですし、そんな提案を持っていくプライベートバンカーも皆無であるかもしれません。


【アジア人富裕層の投資信託への考え方】

一方で、投資信託も非常に販売し辛いです。というより、個人的にはポートフォリオマネジメント的に、あまり貢献しづらいアイテム(投資対象)だと考えております。それにはいくつか理由があります。
第一に、アジア人富裕層はリスクを取れる許容範囲が比較的高い方が多く、わかりやすい話を好まれる傾向が強いため、株にしても債券にしても個別銘柄のほうが受け入れられやすい気がします。
第二に、シンガポールや香港の洗練された金融市場では、トランザクションコスト(取引手数料)が株にしても、債券にしても日本より極めて安く、機関投資家と同じような環境を得られるため自分自身で投資信託のようなポートフォリオを構築できてしまうという実情があります。
第三に、大してパフォーマンスが良くないんじゃないのかっていう根本的に致命的な懸念があるかもしれません。とりわけ全天候型パフォーマンスを提供するはずだったヘッジファンドに対しての失望感は大きいです(つまり、どのような市場環境でも利益を出す戦略と謳っていたが、結果が出ていない。)。

特に今年に至ってはただS&P指数をロングして(買って)おけば10%以上儲かっているマーケット環境において、ヘッジファンドの中にはほぼゼロリターンなどというものが多数存在するような状況はアジア人富裕層の方々にとって到底満足できるものではないでしょう。度々報じられるような、有名ヘッジファンドマネジャー達の期待を裏切る相場観と結果、特にポールソンファンドが代表例でしょうが、大底でのバンクオブアメリカ株損切り、会計に粉飾があったサイノフォレスト株を大量保有していた事など思わず目を覆いたくなるような事件も不信感を増大させていったものと思われます。

参考: 【コラム】サブプライムの「神」ポールソン氏の後光に陰り-ペセック by Bloomberg

このように、重ね重ねにはなりますが、優遇されているいわゆるア富裕層は取引手数料が極めて安く分かりやすい体系で設定されがちであるため、しっかりしたマーケットビュー(見通し)さえあれば自分自身の好きなやり方でポートフォリオを管理できる状況にあります。