金融危機に陥っているギリシャでビットコインの需要が高まっている。資金不足で銀行が休業し、ATMの1日の引き出し額も60ユーロに制限されたほか、国外送金が禁止されたからだ。日本では、ビットコイン取引所、Mt.Gox(マウントゴックス)社の社長が逮捕されたこともあり、規制を求める声が高まっている。

送金が容易なことも人気の理由

ビットコインは仮想通貨の一種で世界中で決済手段として使えるが、発行主体は国や中央銀行ではなく、参加者全員の監視のもと運営されている。単位は「BTC」で、8月14日現在、1BTCあたり33,000円程度だ。通貨とは世間に流通する貨幣のことだが、頭に「仮想」がついているように現物はない。またEdyやSuicaなどのような電子マネーと混同されやすいが、これらは現金の裏付けがあり、法的根拠もあるので仮想通貨とは異なる。

ビットコインがギリシャなどで注目を集めている一因は、国家の規制が及ばないことだ。通貨の源泉は国家の信用だが、ギリシャのように国家の財政が危機的状況にある場合、国は信用できない。実際、いくら預金を持っていても現金が引き出せなければ何の意味もないからだ。このため金融環境に不安要素が多い国・地域で注目を集める傾向がある。

また、送金が容易で手数料が安いというのも人気が高い理由だ。ギリシャのように国外への送金が禁止されても、ビットコインなら送金可能であり、金融機関を介さないで直接送金できるので、手数料が基本的にかからない。

ビットコインには多くのメリットがある反面、規制が無く個人間で取引できるため、マネーロンダリングや密売の決済手段として利用されるケースがあるのも事実である。また、Mt.Goxのように取引所が不正を行う、あるいは破産するといったリスクもある。

ただ、こうしたデメリットがあるからビットコインは危険だとは簡単には決めつけられない。国が発行している一般の通貨が犯罪に利用されることはあるからだ。犯罪の決済資金としてドルが使われることはあるし、現金には盗難のリスクはある。通貨自体が悪いのではなく、それを利用する人が悪用すればどんな通貨でもリスクはある。