昨年以降、タワーマンション高層階の販売強化やハウスメーカーの営業強化が活発化している。2015年の相続税改正を受けての動きだろう。基礎控除の額が4割引き下げられたため、相続税を支払う対象者が増えた。この税制改正によって不動産相続はどう変わったのか。不動産相続の最前線を見てみる。


税制改正で負担者増の相続税

相続税の改正ポイントを今一度おさらいしてみよう。2014年までは相続税の基礎控除額は「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」であった。つまり夫婦と子供2人の家庭では8,000万円以上の資産を有していないと相続税は発生しない。それに対して、2015年からの相続税の基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」となった。つまり夫婦と子供2人の家庭では4,800万円以上の資産を有していると相続税が発生してしまう。そのため、相続税対策を要する人達が増えることとなる。マンション販売会社やハウスメーカーが、こぞって相続税対策として営業を強化しているのはこのためだ。


贈与税は緩和

一方、相続税改正で強化されなかった部分もある。それは贈与税に関する部分だ。国としても税収は増やしたいものの、財産を若い世代に移転させ、消費を活性化したいという思惑があり、贈与税に関しては強化されなかった。逆に贈与税のひとつである相続時精算課税については年齢制限等が緩和されている。65歳以上であった贈与者年齢が60歳まで引き下げられ、受贈者も直系卑属のうち20歳以上の「子」だったのが20歳以上の「孫」も含まれるようになった。強化された相続税と緩和された贈与税、対局の2つの税はどのように利用されているのであろうか。


タワーマンションなら相続時精算課税を活用

相続時精算課税は2,500万円までの特別控除額がある。その特徴として「贈与時の相続税評価額」であり、「相続時の時価」ではない点がある。そのため、相続税評価額が低くなる財産に適用した方が有利となる。つまり、現金のような金融資産ではなく、贈与時に価格が低くなる財産に適用した方が得なのだ。

具体的には、タワーマンションがよい例だろう。タワーマンションの建物評価額、つまり建物の相続税評価額は、建物全体の評価額の専有面積で決まる。そのため相続税評価額は35階の80平方メートルの部屋も、2階の80平方メートルの部屋も一緒だ。一方で、時価は35階の80平方メートルの方が2階の80平方メートルよりも断然高い。つまり35階のような高層階マンションは、時価と評価額に乖離がある。たとえば35階の80平方メートルの部屋が時価6,000万円でも、相続税評価額が2,500万円以下というのは有りうる。そのためこの場合で、タワーマンションを購入して相続時精算課税を用いれば、時価6,000万円の財産を非課税で贈与することが可能となる。


借地権付建物の収益物件にもメリット

また、家賃収入がある不動産を、相続時精算課税を用いて贈与する場合にもメリットがあるのだ。一棟の土地建物で総額が大きい場合は建物だけ贈与するという方法がある。借地権付き建物の贈与だ。そもそも建物評価額は時価よりも低いが、さらに収益物件は借家人が居るため、借家権割合の30%が減額される。その建物を、相続時精算課税を用いて贈与すれば、仮に評価額が2,500万円を超えていても、超えた分だけに贈与税が課税される。相続人には賃料収入が入るため将来の納税資金の貯蓄も可能だ。被相続人にも収入枠を残したいのであれば、地代を払うという手もある。このようにすれば、親と子に収入を振り分けることも可能なのだ。


今後の相続の肝は「贈与」にあり

相続税が厳しくなった分、相続対策としては贈与に注目が集まりつつあり、それは国策にも合致している。今まで相続時精算課税は使い勝手が悪かったため、あまり利用されてこなかった。しかし、相続税が厳しくなっても相続時精算課税の2,500万円の特別控除枠が廃止されずに残っているのは大きい。これからの不動産相続は、いかに「相続」させるかではなく、いかに「贈与」させるかがポイントになりそうだ。 (提供: Leeways online )

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