マイナンバーで名義預金があぶりだされる

今年から相続税法が改正され基礎控除額が大幅に引き下げられたことで、実質的には相続税が増税されている。そこでその対策として生前贈与がこれまで以上に活用されている。例えば、子ども2人に毎年110万円ずつ10年間にわたり贈与を行えば、2200万円が無税で贈与できる。毎年110万円以内なら無税で財産を贈与できるため、多くの資産家がこの生前贈与を行っている。

これまで「年間110万円までは贈与税は必要ない」という解釈が一人歩きしてきた。しかし正確には、全ての贈与が認められるとは限らない。生前贈与は民法で規定されており、贈与が成立するには3つの要件が必要となる。①贈与を行うという意思表示②贈与を受けたという受諾認識③贈与を受けた人が自分で財産を管理、運用・使用すること―—である。

実際によくあることだが、祖父母が孫名義の預金通帳に毎年110万円を預金する。孫に直接お金を渡すとそのお金をあてにしてしまうので孫のためにならないと思い、通帳と印鑑は祖父母が自分で管理しているというケース。孫はこの口座の存在すら知らない。

このようなケースでは先に挙げた贈与が成立する要件を満たしていない。したがって、税務署はこれを贈与とは認めない。その結果、孫名義の口座の真の預金者は祖父母と見なされ相続税の対象となってしまう。さらに、孫は養子縁組をしない限り相続人ではない。どんなにかわいい孫であっても、孫は1円も相続できないのだ。

トラブルを防ぐ4つの方法

では、マイナンバーによって何が変わるのだろうか。上記の贈与の成立要件はこれまでと何ら変わることはない。マイナンバーによって税務当局は扶養関係を完全に把握できることになるし、年齢や年収との突き合わせも容易になるだろう。収入がないはずの孫が多額の資産を保有していれば当然疑惑の対象となるだろう。孫が自分で財産を管理、運用・使用しているかの実態も容易に把握できることになる。預金口座とマイナンバーとのひもづけとはそういうことなのだ。

こうしたトラブルを未然に防ぐには次のような対策が有効だ。
①「贈与する」「贈与を受ける」という意思表示をしっかり行う
②贈与を受けた財産の管理・運用は受贈者自身が行う(通帳や印鑑の管理)
③場合によっては贈与税の基礎控除を上回る贈与を行い、贈与税の申告をしておく
④贈与契約書など贈与を証明できる証拠を残しておく

いずれにしても不正な手当ての受給や脱税が露見しやすくなるという点では必ずしもマイナンバーは悪いものではない。少しでも税の公平性・公正性が保たれるよう運用されることを願うばかりだ。(ZUU online 編集部)