ある企業の株価が割安または割高だといわれるとき、基準になるのはその企業の業績動向や資産価値に対する株価の位置であることが多い。これを株価のファンダメンタルズ指標、あるいは単に株価指標と呼び、その相対的位置づけを測ることを(株価)バリュエーションという。その際の尺度として広く使われるのはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、配当利回りなどだ。以下ではそれぞれの指標の意味と解釈の仕方を見ていくことにしよう。

PERは、企業の利益に対する株価の高安を図る尺度

PER(price/earnings ratio)は、企業の利益に対する株価の高安を測る尺度だ。株価をその企業の一株当たり利益(EPS:earnings per share)で割った倍率で、現在の株価が一年間の利益の何倍にあたるかをみる。

企業利益は最終的に株主のものだから、PERはその回収にかかる年数でもあり、それが短い(小さい)ほど株価が安いことになる。通常は今期以降の予想利益を分母とする予想PERを使う。また、利益変動の大きい企業では数年間の利益を平均するなどの工夫が必要になる。

PERは同一企業の過去の実績や他社との比較に使われる。例えば、A社の現在のPERは過去5年間の平均よりかなり低いので割安とか、同業B社に比べ魅力的などといった具合だ。また、経済紙などでは東証一部上場全銘柄をひとつの企業とみなしたPERを算出しており、日本市場は欧米に比べ割安だから上昇余地が大きいなどという使われ方もする。

PBR(株価純資産倍率)は企業の資産価値に対する尺度

PERが利益に対する指標であるのに対し、PBR(price/book-value ratio)は、企業の資産価値に対する尺度である。会社の総資産のうち株主の持ち分である株主資本(純資産とほぼ同じ)に対する株価の倍率で、これも一株当たり純資産(BPS:book-value per share)を使う。会社が解散すると借金を返し、債権債務を全て精算した後に残るのが株主資本だから、PBR1倍は株価が会社の解散価値と同じという意味になる。

PBRが1倍未満なら、その企業の全株式を取得して解散させれば利益が出るから、買収のターゲットにされたり、「物言う株主」が現れて経営改善をせまることもある。逆にPBRが1より大きい場合は、将来の利益成長や技術力、ブランド力などがプレミアムとして株価に織り込まれていると考えられる。