(写真=ZUU online編集部)

日本から撤退した米シティグループの個人向け銀行事業を受け継いだSMBC信託銀行が11月2日、新たなブランド「プレスティア」を掲げて営業を始めた。同社の古川秀俊社長も富裕層ビジネスの拡大に意欲を示しているように、富裕層顧客の獲得はシティバンク利用者の乗り換え需要も見込み、各金融機関がしのぎを削っている。1つの焦点は外貨サービスのようだ。


預金残高2.4兆、うち外貨預金残高1兆、顧客74万人

邦銀の個人向けサービスといえば、預金、給与口座、住宅ローンといったところだが、外資系のそれは外貨預金や資産運用サービスなど幅広い。特にシティバンク銀行は日本での展開に成功しており、三井住友銀行との合意が発表された2014年11月のリリースでは、拠点は全国32支店、顧客74万人、預金残高2兆4400億円だった。外貨預金残高は1兆円規模といわれていた。

シティが撤退した理由の1つは、低金利が長く続いたため預金を集めても利ざやが稼げず赤字が続いていたことだ。2014年3月期は黒字になったとはいえ、慢性的な赤字体質で撤退を余儀なくされた。

赤字が続いて撤退を決めたとはいえ、預金残高など邦銀にとっては魅力的な、ポテンシャルのある規模。事業を買収すれば、シティ銀の強みである海外サービスもついてくる。提携金融機関含む200万台のATMを利用できるようになり、預金者は世界の160以上の国・地域でATM(現金自動預払機)で現地通貨を引き出せるようになる。こうしたメリットから、事業の買収には三井住友以外にも複数の金融機関が名乗りをあげていた。


シティ顧客の1割弱が「乗り換える」と表明していた

プレスティアは全国の拠点、社員とともに顧客約72万人を引き継いだと報じられているが、実際にすべての顧客がそのままプレスティアに移ったわけでもないだろう。

シティバンク銀行の事業売却が決まった後に、総合マーケティング会社のネオマーケティングが同行の利用者500人を対象に行った調査では、4割弱が「売却先の銀行の口座をその後も保有し続ける」と答えた一方で、1割強にあたる16.2%が「その他」の回答で、様子見という顧客も少なからずいることが分かっていた。

さらに1割弱の9.2%は「別の銀行で新しい口座を開設し移行する」としていた。そう答えた人が「シティバンクの代わりとして新規の口座開設を検討しているのはどこの銀行ですか」という問いに対して挙げた銀行名として多かったのは、三菱東京UFJ銀行とソニー銀行だった。