税理士,相続,不動産
(写真=PIXTA)

「相続について相談したい!」という状況になったとき、相談相手として最初に思いつくのが税理士です。しかし、いざ無料相談を受けてみると、思いのほか頼りにならなかったり、お茶を濁されてしまったりします。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。


1.相続税に精通していなくても税理士になるルートがある

相続と聞いてまず心配になるのが相続税です。

「税金といえば税理士。だから相続については税理士に相談すればOK」と考えてしまいがちですが、実際には税理士だからといって相続に精通しているわけではありません。理由は、税理士になるまでの過程にあります。

税理士になるためには、次の2つの要件を満たしていることが必要になります。

(1) 税務署OBか、大学院卒で必要な単位を取得しているか、もしくは税理士試験に合格しているかのいずれかに該当すること
(2) 税理士になるための必要な実務経験が2年以上あること(税務署OBを除く)

実は、(1)においても(2)においても、「相続税法に精通すること」は必ずしも条件として含まれていません。たとえば、(1)において、税理士試験を目指す場合、相続税法に合格していなくても税理士になることは可能です。

また、(2)においても、証券会社での経理経験や会社の決算・税務申告を主とする事務所に勤務経験を積むパターンもあります。(1)と(2)のいずれにおいても、選択肢が多様にあるため、相続税に特化している税理士になるケースはほんの一部となります。

付け加えて、相続は個人の問題です。しかし、現実には、税理士の多くは申告や会計処理などの業務に事欠かない法人を顧客にします。つまり、仮に税理士になるまでの過程で相続税法を勉強したとしても、開業後も個人専門の相続税特化型の税理士になるのは少数派なのです。

以上の理由により、いざ相続でトラブルを抱えた場合、「相談してみたら、税理士が思いのほか頼りにならなった」という事態に陥ってしまうのです。


2.相続税における不動産の評価方法や要件が非常に細かい

相続税の計算において、もっとも節税の効果が出やすいのが不動産です。不動産は現預金などと違って金額が固定されていません。そのため、財産評価基本通達に定められたいくつかの評価方法や計算パターンにより評価額を算出し、その中でもっとも金額が低いものを相続税課税の際の評価額として採用します。

また、自宅などのいわゆる「小規模宅地等」のように、法律上の配慮により、評価額がかなり低くなるよう設定されているものもあります。不動産の評価は、税理士の節税の腕の見せ所といってよいかもしれません。

ただし、ここでも注意が必要です。なぜなら、節税の効果が高いものほど、要件が細かく複雑に設定されているからです。土地の評価方法においては路線価を計算の参考として採用することがしばしばありますが、路線価をひとつ見間違えただけで評価額は大きく異なります。

また、広大地や狭小地などにおいては、特殊な計算が必要となります。知識が曖昧だったり不足していたりする場合には、この見落としが生じかねません。

さらに、先述の小規模宅地等においては事前に対策を取ることで節税だけでなく、第二次相続におけるトラブルも回避できます。ただし、この事前対策も、法定の要件が細かく設定されています。そのため、事前に策は練ったものの些細なミスが命取りとなり、結果、後日修正申告をせざるを得なくなった、ということにもなりかねないのです。

1.で述べた通り、税理士のすべてが相続税法に詳しいわけではありません。相続での不動産評価をきちんと行えるのは、相続税法を専門とする税理士です。相続税法の難解な条文の読み解き方や資料のチェックに慣れているため、見落としはほとんどありません。しかし、専門でない税理士ならば、法律の条文に読み慣れてないことから、ミスが生じる可能性が高まります。

相続はあくまでも個人と個人の問題です。個人同士の取引には、法人同士のビジネスよりも、トラブルが生じやすいものです。さらに、相続はその中でも血縁同士の問題です。泥沼化しやすい特徴があります。

このような特徴は、相続税法そのものの煩雑さとあいまって相続をさらにややこしく、かつ長引かせる要因につながります。相続の問題については、「誰でもいいから税理士に」ではなく、きちんと事前にインターネットなどで情報を調べ、評価体制が整っている開業税理士や税理士法人に相談することをオススメします。(提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

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