寿司ネタの王様「トロ」に迫る危機

ユネスコ無形文化遺産にも登録され、今やすっかりグローバル化した和食。その代表格たる寿司に今、思わぬ「危機」が生じている。寿司ネタの王様「トロ」が庶民の手には届かない超高価食材になってしまうのでは、という懸念だ。

きっかけはマグロの国際的漁獲規制強化の動きで、世界的な消費の急増と「乱獲」の結果、マグロ資源は一部地域で絶滅が懸念されるほど減少しており、マグロという水産資源保護の観点からも、規制強化の国際的な動きが広がりつつあるのだ。

マグロを含め多くの回遊魚は農産物や地下資源と異なり、特定の国や企業の所有権・管理権の対象とはならない。かと言って市場に任せておくと後先構わぬ「乱獲」に発展しかねない、モラル・ハザードを引き起こしかねず、そうした懸念が日本のマグロ漁獲量を抑制してしまいかねないのだ。


新漁獲規制でトロの値上がり可能性も

マグロの資源管理は、世界の海域を5つに分けて国際的に行われており、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が12月8日に、インドネシア・バリの会合で、新規性の導入を全会一致で決定した。中西部太平洋のクロマグロ漁に関し「幼魚の減少が確認されたときに各国の漁獲量を自動で減らす」ことを骨子とするもので、来年末をめどに規制を始めるとされている。

今回、規制の対象となるクロマグロは本マグロとも呼ばれるマグロ類の最高級品だ。水産庁の2012年データによると、その日本流通量のうち、約3割が太平洋産。最近資源量が回復に向かっている大西洋産や、ミナミマグロなど他種のマグロへの代替がある程度期待できる。それにしても、上記の規制が発動されれば価格上昇につながる危険も十分にある。


「トロ」は家庭から遠ざかるのか?

政府の対応については、「日本の食文化を守るためよく頑張っている」と水産庁の交渉姿勢を評価する向きもないではないが、問題の根本を無視した生ぬるいその場しのぎだと見る見方も少なくない。

いずれにせよ、クロマグロの漁獲規制だけでは供給量そのものへの影響は限定的だとされる向きもあるが、マグロ全般に幅広い規制がかけられれば、価格への影響も避けられないだろう。世界のマグロ消費量全体の2~3割もを消費しており、マグロ大国ともいえる日本でも大きな影響が訪れるのは必至だ。

マグロといえば寿司ネタ「トロ」がまっさきにイメージされるが、すでにマグロ漁獲量への悪影響を懸念する声もすでに出てきており、「トロ」が生活シーンから姿を消しかねないという懸念もあるのだ。

もともと高級食材として、贅沢とみられがちな「トロ」だが、街角で食べられる身近な高級食材という立場を維持するには、適切な資源管理はもちろんのこと、日本政府としてもその確保を後押しする必要がありそうだ。(ZUU online 編集部)

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