CityOf London

ウクライナの政情不安より、西側諸国がロシア人と親ロシア派のウクライナ人を標的に行っている制裁が、ロンドンの不動産市場に恩恵をもたらしています。2014年1-3月にロシアから流出した資金510億ドル(約515億円)の一部がロンドンに向かっているとのことです。ガーディアンやフィナンシャルタイムズ等の英紙がロンドンの高級住宅街に対し、ロシアからの引合増を報道しています。

引合増の理由として、西側による制裁対象がロシア全体に広がることを恐れているという点。次に、ロンドンの不動産市場が匿名性、流動性の高さ、法制度の充実等から、資金逃避先としての条件を兼ね備えている点です。

英国政府も印紙税の対象を335万ドル超(約3億4千万円)から84万ドル超(約8500万円)に下げ、2015年から外国人の不動産投資に対するキャピタルゲイン税を導入する等、規制を強化しています。しかしそれらの政策は税金の増加であって安全でリスクを回避できる投資を妨げる規制強化ではないものです。

有事の資金の安全な避難場所を示す言葉として、「セーフ・ヘイブン」ということがあります。セーフ・ヘイブンとしての資産の条件としては以下2点があります。

オルタナティブ投資を満たすものであること(先進国vs新興国、株vs債権)
実体資産であること、あるいは実体資産に相当する高い信用(金や不動産、高格付け国債)

まず、リスクヘッジの観点からオルタナティブ投資の条件を満たすことが求められます。ゆえに、新興国及び資源国であるロシアと条件が違う、先進国の資産が対象となります。

続いて、実体資産又は実体資産に相当する信用力が考慮されます。その点で候補に挙がるのは、(1)米国債(2)金(3)スイスフラン(4)英国の不動産 等が考えられます。うち、米国債については政治リスクを考慮すると対象外。(2)金については資源あること、2011年夏以降の暴落が発生していること。(3)スイスフランはスイス国立銀行が2011年秋にユーロペッグ制を導入した後、セーフ・ヘイブンとしての魅力が軽減していることがあります。ゆえに消去法で考えると、(4)英国の不動産がロシア富裕層にとって一番まともな投資先と考えられます。

今後ウクライナ政情不安がもっと悪化すれば、ロシア富裕層の資産がさらにロンドンの不動産に流れることが予想されますが、あくまでもリスクヘッジや消去法という観点であり、キャピタルゲインの獲得を積極的に狙ったものではないと考えられます。

Phto:City of London by [Duncan]