失業率,有効求人倍率,デフレ
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2月の失業率は3.3%と、1月の3.2%から若干上昇したが、12月の3.3%と同水準となった。1月は、非労働力人口が前月比43万人減少する一方で、就業者が61万人も増加していた。2月には反動で、非労働力人口が45万人増加する一方で、就業者が58万人減少し、1月と逆方向の動きとなり、ならしてみて12月と失業率は同水準になった。

この動きは新規求職者の動きでも見られ、1月に前月比-9.1%と減少した後、2月に同+9.5%と反動で増加した。新規求人数も1月に同-1.0%と減少した後、2月に同+1.7%と増加した。

労働需給はかなりタイトに

非労働力人口と就業者の動き、そして新規求職者数と新規求人数が強い相関関係を持っており、労働意欲に応じて、労働市場から退出していた労働者が戻ってきても、順調に職を得ることができる状態であることを示す。

企業のリストラや倒産の影響はかなり小さくなっており、特にパートタイム労働者の賃金の上昇など、労働待遇面での大きな改善がみられ、よりよい条件を求めて自発的に職を変えようとしている労働者は企業の取り合いになっているようだ。

2月の有効求人倍率は1.28倍と1月から変化はなく、1991年12月(1.31倍)以来の水準となっている。

失業率が自然失業率(1%程度の物価上昇に相当)とみられる3.5%を明確に下回るトレンドが続き、労働需給はかなりタイトになってきている。ようやく正社員の雇用も動き始め、2015年は正社員が44万人増加した。8年ぶりの増加である。

新年度入りの4月から新たに雇用される労働者も多いとみられ、2016年度末までには失業率は3.0%を下回ると考える。

パートタイム労働者の増加により平均賃金の上昇は鈍く見えるが、総賃金は前年比+1.5%程度の拡大トレンドとなっている。

しかし、デフレ完全脱却を実感するためには、総賃金の伸び率が+2%を十分に上回る必要があると考えられるが、現在のところ伸び率の加速はとまってしまっている。

2016年の春闘でも、ベアと定期昇給を足した賃上げ率は+2.1%程度となり、2015年の+2.5%程度を下回ったとみられる。

失業率は低下しても総賃金の拡大は緩やか

失業率が大幅に低下してきたにもかかわらず、総賃金の拡大の加速がみられないのは、企業と政府の支出力が一時的に衰えてしまっているのが理由であると考えられる。

グローバルな景気・マーケットの不透明感により企業の支出力が一時的に弱くなり、消費税率引き上げと社会保障負担の増加などにより財政も緊縮気味になってしまっている。

企業貯蓄率の上昇と財政赤字の縮小により、その合計であるネットの国内資金需要(企業と政府の支出力を示す)は2013年末のGDP対比-2.5%(マイナスが強い)から2015年末には+1.4%へ消滅してしまっている。

マクロでは支出されたマネーはなくならないため、このネットの国内資金需要が家計に回っていくことになるが、その量がなくなってしまっている。現在の総賃金の拡大の力は、家計に回っていくマネーの量の拡大ではなく、労働需給の引き締まりだけのものとなってしまっている。

しばらくグローバルな景気・マーケットの不透明感が続く可能性があることを考えれば、政府が財政を拡大し、家計に回るマネーの量を増やすこと(ネットの資金需要を復活させること)を促進しなければいけない局面になっている。

今後の動向は

政府は1月に3.5兆円程度の経済対策を既に決め、今後もその規模を大幅に上回る景気対策を策定する可能性が高くなっており、財政は緩和気味に転じていくことになろう。

そして、グローバルな景気・マーケットの不透明感が和らぐとともに、企業貯蓄率も再び低下トレンドに転じ、ネットの国内資金需要は復活するだろう。

失業率低下が示す労働需給の引き締まりと合わせ、家計に回っていくマネーの量の拡大との両輪の力で、2016年度後半には総賃金の伸び率の加速がみられるようになると考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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