浮世絵は「コレクターズワールド」

ボストン美術館の5万点の浮世絵のコレクションで有名なのはスポルディングコレクションだ。ボストンの大富豪とスポルディング兄弟が、明治末期から大正にかけて収集した約6500枚の世界で最も美しい浮世絵版画のコレクションの一つだ。

浮世絵は保存が難しいので、スポルディング兄弟は展示しないことを条件にコレクションをボストン美術館に寄贈した。この世界で一番美しい浮世絵コレクションをデジタル画像で閲覧することはできても、原則的には本物は公開していない。今日まで90年近く光を遮断した低湿度の管理により、ムシやカビから免れ、作品の劣化を奇跡的に避けることができ、葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿、鈴木春信などの名品の初摺りが、当時の色彩と鮮明さで残されている。

また米国の巨大財閥のロックフェラー家のJ・D・ロックフェラー二世の夫人、アビー・オルドリッチ・ロックフェラー氏が20年間かけて集めた浮世絵コレクションも有名だ。

ニューイングランドのロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館に700点ほどの素晴らしい浮世絵「アビー・オルドリッチ・ロックフェラー日本版画コレクション」がある。このコレクションでは、「月に雁」などの有名な浮世絵について、いつ誰から買ったなどの履歴が添えられている。 名品といわれる浮世絵のかつての保有者には、日本、欧米の浮世絵を愛した富裕層の名前が登場する。浮世絵は一部の、浮世絵を愛する世界の大富豪の間をぐるぐる回っている。

浮世絵は、美術館で見て楽しむというよりも、所有者が楽しむ“コレクターズワールド”という位置づけだ。保存が難しいという条件ではなかなか投資としては人気化しにくい。同じ版木からから刷られる作品がいくつかあり、めったに市場にでない同じ作品を手に入れられる可能性がある点がコレクターにとっては魅力なようだ。

あくまでも趣味としてのコレクションにとどまるケースが多い浮世絵。私たちが投資をする際にも「投資に向かない理由」のない美術品に投資をしたほうが、資産の劣化は防げる。

とはいえ美術品投資はあくまでも趣味の延長でもある。まずは自分の好みの作品を見つけてみてはどうだろうか。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。