BREXIT,影響,米実体経済
(写真=Thinkstock/GettyImages)

要旨

  1. 6月のFOMC会合では追加利上げが見送られた。同会合では5月雇用統計の予想外の悪化を受けて労働市場の回復持続性に懸念が示されたほか、米経済のリスク要因として英国がEUから離脱するBREXITが挙げられていた。
  2. 6月下旬に実施された英国民投票でEU離脱派が過半数を獲得したことから、BREXITリスクが顕在化した。英国ではメイ首相が選出され、政治的な混乱状態から脱しつつあるものの、今後の離脱手続きも含めEU離脱に向けた不透明感は強い。
  3. 米国と英国の経済関係をみると、貿易面では米国の対英輸出がGDP比1%未満と米経済への影響は限定的とみられる。一方、対英直接投資、米企業の英国進出状況、米銀の英国向け与信残高などは、米金融業界と英国との強い関係を示している。このため、金融センターとしての英国の地位が低下することによって、米金融業界は戦略見直しなどを迫られる可能性が高い。
  4. 資本市場は、英国民投票の結果を受けて一時的に不安定化したものの、足元では安定する動きがみられている。また、長期金利の低下は米経済にプラスの効果が期待できる。
  5. 米経済は4-6月期のGDP成長率が前期から加速することが見込まれており、景気回復期待が醸成されていたが、水を差される可能性がでてきた。現状では米経済への影響は限定的とみられるものの、非常に不透明な部分が多い。このため、FRBは慎重な金融政策運営を行わざるを得ず、追加利上げは12月まで見送られよう。

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はじめに

EU離脱を問う英国民投票の前に行われた6月FOMC会合では、政策金利の据え置きが決定された。同会合では、5月雇用統計の予想外の悪化を受けて労働市場の回復持続性について検討されたほか、英国がEUから離脱するBREXITが米経済のリスク要因として議論された。

6月下旬の英国民投票では、事前の予想に反しEU離脱支持が残留支持を120万票以上上回り、52%と過半数を獲得した。このため、リスク要因であったBREXITが現実化する可能性が非常に高くなった。金融市場は国民投票の結果を受けて株式市場が世界的に急落するなど不安的な動きとなった。

英国ではキャメロン首相が辞任するなど、政治が混乱していたが、当初予定より早いタイミングでメイ氏が新首相に就任したため、政治的な混乱状態から脱しつつある。もっとも、EU離脱に向けた手続きの開始時期さえ決まっておらず、EU離脱に伴う英国経済や世界経済への影響については、現段階では非常に不透明な状況となっている。

本稿では、米国経済への影響をみる上で直接的な影響として貿易面や、直接投資、米企業進出状況、米銀の与信残高の状況などについて英国との関係を確認する。さらに、間接的な影響として資本市場の状況についても確認する。

現段階では非常に不透明な部分が多いものの、結論から言えば、直接的な影響については米金融業界では戦略の見直し等が必要になるものの、貿易面などを通じた米実体経済への影響は限定的とみられることである。さらに、間接的な影響についても、足元は株式市場が安定する中で長期金利が低下しており、金利低下が米経済を下支えする効果が期待できる状況である。

もっとも、当面EU離脱を巡る不透明感が持続するため、米経済への影響を今後も見極める必要があり、FRBは慎重な金融政策運営を行うことが予想される。このため、追加利上げは12月まで先送りすることが見込まれる。