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財務相が発表した4月の貿易統計速報(通関ベース)によると、貿易収支は8,089億円の赤字となりました。22ヶ月連続の赤字にはなりましたが、赤字幅はは前年度同月比で7.8%縮小となっています。内訳を見てみると、輸出が同5.1%増の6兆692億円、輸入が同3.4%増の6兆8,781円となっています。貿易赤字の縮小は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動による輸入の伸びが小幅にとどまったことが影響したようです。

アベノミクス以降、期待されていた円安による輸出の大幅な拡大は未だ実現しておらず、むしろ円安による燃料輸入額の拡大により貿易収支は悪化してきました。今回の貿易収支では20ヶ月ぶりに前年度同月比での改善となりましたが、事前予想では6,460億円まで赤字が縮小すると見込まれていた(ロイター)ことを考えると物足りない数字です。今回の貿易収支では「国内の駆け込み需要に対応するために、国内向け販売を増やして輸出を抑える」という動きが解消すると予想されていましたが、期待ほどに輸出の伸び率が上昇しなかったことが原因のひとつです。貿易収支の黒字化には輸出の大幅な拡大が不可欠ですが、輸出は今後伸びていくことが見込まれるのでしょうか。

輸出の見通しを占う上で、海外経済の動向、特に輸出における構成比率の高いアメリカ、中国、ASEAN諸国の動向が注目されます。まずアメリカについては寒波の影響で一時期消費の停滞が見られていましたが、その影響は一段落し景気は堅調に推移しています。今後FRBによって量的緩和の縮小が進められていきますが、景気への悪影響に気を配りながら慎重に進められていくことになるでしょう。そのため、アメリカの消費については堅調さが続くことが予想されます。

また、ASEAN諸国などの新興国では、先進国における余剰資金の引き上げに起因した景気減速がこれまでも度々見られており、アメリカの量的緩和の縮小による緩和資金の引き上げの影響が懸念されるところです。しかし、近年のASEAN諸国では経済基盤が着実に成長しており、量的緩和の縮小が進められた際にも先進国の景気回復に伴う輸出主導で実体経済は下支えされると予想されます。中国については習近平政権による構造改革により成長率の伸びは減速していきますが、政権によってコントロールされた減速であるため急激な景気減速は発生しにくいと考えられます。ただし、シャドーバンキング問題など、コントロールしきれない問題が一気に顕在化するリスクを抱えている点は注意する必要があります。このような場合には、中国のみならず世界経済全体に悪影響を及ぼすことになります。

このように、海外経済については一部大きなリスクは存在するものの総じて堅調に推移することが見込まれます。しかし、このことが日本の輸出拡大につながるかどうかについては不透明な点が残ります。長く続いた円高時代に製造業を中心として生産拠点の海外移転が進んでおり、国内の産業空洞化という構造問題が懸念されるからです。もし産業空洞化の影響が大きいとすると、円安環境下で海外経済が堅調に推移したとしていても輸出の伸びは限定されることになります。4月以降、内需好調という特殊要因がなくなっても輸出が伸びない場合にはこの問題が懸念されます。そして、この問題が深刻だとすると黒字化には時間を要することになるでしょう。4月分の結果だけで判断するのは早計ですが、今後の貿易収支、特に輸出の動向について引き続き注視していく必要があります。

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