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(写真=PIXTA)

映画「シン・ゴジラ」が大ヒットした要因の一つに、ゴジラの権利を持つ東宝の単独製作という点が指摘されている。東宝はなぜ製作委員会方式ではなく、今や珍しくなった単独製作を行ったのだろうか。

今や当たり前になった「製作委員会」方式

映画製作は、かつては映画会社が自ら製作費を負担し、プロデュースから配給までを手掛けていたが、1980年代以降、出版社、テレビ局、広告代理店、商社など映画業界以外の様々な会社が映画製作に進出した。

だが映画ビジネスはまさに水ものであり、製作費をかけても必ずしも作品がヒットするとは限らない。一社単独で映画を作っていた時代には、多額の製作費をかけた大作が興行的に失敗したことで、その会社の存続自体が危ぶまれるということもあった。こうした中で登場してきたのが「製作委員会」方式だ。

まずはリスク回避が目的

映画製作のファイナンス上最も重要なことは製作費の回収だ。利益を出す前にまずは製作費をまかわなくてはならない。

だが近年は映画製作費は年々上昇している一方、その製作費に見合った興行成績は必ずしも約束されていない。水ものである映画製作にかけられる予算は単独社では限りがある。そこで考えられたのが、複数社で製作費を分担してファイナンス上のリスクを分散し、より安全で安定した予算と利益の確保ができるのが製作委員会だ。

東宝はかつて、製作費のリスクを避けるために製作本数を抑えていた時期があった。だが製作委員会方式によって映画製作費用が手当てができるようになってからは、製作本数もバリエーションも増え、安定して利益を出せるようになった。

実の狙いは権利の確保

製作委員会の狙いのもう一つの側面は、製作した映画にまつわる権利を独占的に確保することだ。メディアの多様化に伴って、映画というコンテンツの価値は急速に高まった。映画は映画館で上映したのち、DVDの販売や放送、原作本の販売、キャラクタービジネスなどすそ野の広いビジネスとなった。

製作委員会に参加した会社はそれぞれの主業において幅広い業種が製作委員会に参加するのは、このような利益を独占することにある。配給会社の配給権、出版社による原作本の出版権、テレビ局の放送権、DVDソフトなどの販売権、各種のプロモーションに活用できるキャラクタービジネスなどだ。

製作費を出資することで独占的な権利を得る製作委員会各社は利益を最大化するために、自社の媒体を使い、ヒットに向けてプロモーションをかけていく。出版社は原作本を宣伝し、テレビ局はCMや情報番組を放送し、新聞社も記事や広告に紙面を割く。もちろん、配給会社は映画館での予告編上映などを積極的に行う。そのような相乗効果で映画のヒットの確率を高めようとする。