贈与税 生前贈与
(写真=PIXTA)

相続税について、シニア世代に限らず家庭を持つ方ならば多少思いを巡らしたことがあるのではないだろうか。今回は、相続税節税の方法として贈与税や生前贈与の利用について解説したい。まだまだ先の話と考えるのではなく、ぜひ計画的な相続プランを組み立ててほしい。


相続にまつわる課税の種類

相続税とは、文字通り相続に際して課される税金のことである。相続税には基礎控除額が認められており、その範囲内で収まる相続については課税対象にはならない。この相続税の基礎控除額だが、平成27年1月1日の税制改正により大幅に縮小が計られた。具体的な基礎控除額の計算は以下の通りになる。

改正前:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

改正後:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

ベースの控除を単純比較しても4割が引き下げられ、法定相続人の数次第でその差はさらに拡大する。この税制改正により、これまで相続税について関心のなかった人も無関係とは言い切れなくなった。

そこで注目されるのが贈与税だ。贈与税は財産贈与に際して課される税金のことだが、こちらは相続税改正に先んじて手直しがされた。生前贈与を受けられる対象が被相続者の子だけでなく、孫にまで拡大したのだ。

相続税と贈与税の税制改正には経済状況も大きく関わっており、今後さらなる改正が行われる可能性も十分にあり得る。少なくとも現状において、生前贈与を利用することで相続税が大きく節税できることは確かだ。

節税に利用できる様々な制度・控除

相続税の節税を目的として行われる親子、あるいは孫間での財産贈与を広く「生前贈与」と呼ぶ。この生前贈与は「一般贈与」と「相続時精算課税制度」と呼ばれるものの2種類があり、それぞれ性質に違いがある。

一般贈与は正式には「暦年課税制度」と呼び、贈与税に認められている年間基礎控除枠110万円の範囲内で贈与を行うことで、特別な手続きなども不要になるため、非常にポピュラーな方法として知られている。例えば子ども1人、孫1人にそれぞれ110万円ずつ10年間に渡り贈与した場合、2,200万円の財産を贈与税0円で渡すことができる。これにより相続財産も減少するため、相続税の節税にも繋がる。贈与の対象には制限がないため、特に理由がない限りこれを利用する人間が多いだろう。一方で、デメリットもある。個人に対して年間辺り110万円しか贈与することができないため、不動産など固定財産の贈与にはあまり向かない。

これに対し、相続時精算課税制度では2,500万円の特別控除枠が認められ、さらにそれを超えた分の財産への贈与税は相続時に清算・還付がなされる。ただし、こちらの制度を利用した場合、以降同一の人間からは一般贈与(暦年課税制度)による財産贈与を受けられなくなるので注意しなければいけない。

その他生前贈与には「居住用不動産購入における配偶者控除」や「教育資金の一括贈与に対しての非課税措置」などがあり、選択肢は多岐に渡る。それぞれ条件を満たし、贈与税の申告をする必要はあるものの、手間をかけるにふさわしい恩恵が得られるだろう。

財産の贈与は一気にしない

暦年課税制度や相続時精算課税制度は非常に便利な制度であり、使い方や使うタイミング次第で最大限活用することができる。例えば5,000万円の財産を贈与しようとしたとき、これを一度に済ませようとすると暦年課税制度では5,000万円-110万円=4,890万円に対して贈与税がかかってしまう。相続時精算課税制度を利用すれば、5,000万円-2,500万円=2,500万円の課税で抑えられる。

もし、暦年課税制度によって2,500万円の贈与を事前に済ませておけば、残りの2,500万円を相続時精算課税制度によって控除することで計5,000万円の財産を非課税で贈与することが可能になる。1人に対しての贈与では2,500万÷110万=22.7、つまり23年かかる計算になってしまうが、一般贈与は対象を制限していないため、複数人に対して行えば数年で済ませられるだろう。前述した贈与税における税制改正は、これを推進するためでもある。

10年、20年先を見通したプラン

相続税節約、ひいては贈与税節約の大原則は、長期に渡って複数の人間に贈与を行うということだ。長期的な計画を組む上でもっともベターなのは専門家に意見を仰ぐことだが、自分たちでできる工夫も数多くある。それらの契約がのちのち贈与であったことが明確に分かるよう、証拠を残すというのも工夫のひとつである。例えば、毎年110万円の贈与をするのに口座振込みを利用すれば、記帳された預金通帳がそのまま参考資料として認められる。非常に単純ではあるが、それだけに実践しやすく証拠能力も十分に高い。

ただし、この方法を取る際に注意しなければいけないのが、たとえ分割して入金が行われていたとしても一括贈与と見なされる場合があるということだ。口座の名義人が子であっても、その通帳や印鑑を親が管理していたのならばこれは変わらず親の財産であり、贈与は行われなかったと判断されてしまう。これが発生しやすいのが、子の成人や結婚をきっかけに親が貯金を渡すケースだ。

相続税節約のつもりで多額の贈与税を支払うことになってしまうのでは、本末転倒である。努々注意していただきたい。