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(写真=PIXTA)

相続税対策として生前贈与を行う方は多いと思うが、遺留分権利者への配慮は足りているだろうか。もしも行った生前贈与が遺留分の侵害に当たると判断された場合、この財産は相続財産として扱われることとなってしまう。せっかく行った生前贈与を無駄にしないためにも、また相続時に発生し得るトラブルを回避するためにも、遺留分制度について理解しておくべきだろう。


遺留分とは

相続における遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に認められている、最低限相続財産を確保することができる割合のことである。被相続人は、生前は元より死後においても自己の財産に対して権利を持ち、これを尊重する制度として遺贈や相続分の指定が認められているが、一方でこれが相続人(遺族)の生活保障を侵害するものであってはならないとされている。

つまり遺書を残すことや生前贈与を行うことは被相続人の権利だが、対して遺留分を確保することは相続人にとっての権利なのである。その割合を、民法上では次の通りに定めている。

・相続人が直系尊属(両親・祖父母など)のみ……遺留分算定の基礎となる財産の1/3

・上記以外(配偶者や子供など)……遺留分算定の基礎となる財産の1/2

なお、この割合は遺留分を持つ者(遺留分権利者)全員に与えられる合計であり、これを総体的遺留分という。遺留分権利者が複数いる場合には、総体的遺留分は通常の法定相続分の割合によって更に配分され、これを個別的遺留分という。

仮に遺留分権利者が配偶者と子2人であった場合、総体的遺留分は1/2、配偶者の個別的遺留分は1/4(1/2×1/2)、それぞれの子は1/8(1/2×1/2×1/2)が個別的遺留分となる。

遺留分の計算

遺留分は、遺留分算定の基礎となる財産の価額に個別的遺留分を乗じることで求められるが、このとき重要なのは、遺留分算定の基礎となる財産と、相続時の財産とは同一ではないということである。

遺留分の算定の基礎となる財産には、次のものが含まれる。

・相続時の財産の価額(遺贈を含む)

・被相続人が生前に贈与した価額

・特別受益額

これらより相続債務を減じたものが遺留分の算定の基礎となる財産として扱われるが、このうち「被相続人が生前に贈与した価額」とは、相続開始前の1年間に行われた贈与に限るとされている。しかしながら、その他の遺留分権利者より請求があった場合にはこの限りでない。厳密には、それらの贈与がその他権利者の遺留分を侵害すると認識して行われた場合はこれを算定に含む、とされている。

生前贈与は特別受益にあたる

遺留分の計算上では、生前贈与がなされた財産は期間に関わらず特別受益額として見なされるケースが多く、基本的に特定の相続人へ過剰な生前贈与を行うことは遺留分の侵害にあたると考えた方が良いだろう。裁判例では、40年以上前の生前贈与が遺留分侵害にあたるとして遺留分の算定の基礎となる財産に含まれたケースもある。

生前贈与を行う際は、各相続人の遺留分にも配慮して公正に行わなければ、かえって不要な問題を生じさせる一因となってしまうのである。逆に、バランスのとれた生前贈与については相続税対策として十分な効果が見込めることは言うまでもない。

遺留分減殺請求の方法と時効

もしも自身の持つ遺留分を侵害して遺贈や贈与が行われた場合、その相続分の指定を無効にすることはできないが、遺留分減殺請求を行うことでこの効力を一部否認することができる。遺留分減殺請求とは、遺留分権利者が自身の持つ遺留分を主張する正当な権利のひとつなのである。遺留分減殺請求は口頭や電話等で行使することも可能だが、後日裁判等での証明が難しいため、必要事項を記した書面等によって請求するのが賢明だ。

なお遺留分減殺請求には、この制度・権利を知った時から1年間、あるいは相続開始時より10年間という時効が設定されているため、これを行使するならば早急に行うことが望ましい。

遺留分に配慮した生前贈与

生前贈与を行うときには、意識しなければどうしても偏りが生じてしまいがちである。特に子や孫の年齢次第では、教育資金などとして特定の誰かへのみ贈与を行ってしまうこともあるだろう。こうした多少の偏りは、生活している状況や被相続人と相続人との距離などによってある程度は仕方のないものだが、相続時には各相続人が遺留分を持つのだということを理解しておくべきだ。

また前述のように、自身が持つ遺留分を侵害された場合には遺留分減殺請求によってこれを取り戻すべきであるが、一連の手続きはけして簡単でなく、知識のないものが行使しても効果がない可能性がある。より確実に遺留分を確保したいのであれば、専門家の助けを借りると良いだろう。また同様に、遺留分に配慮して生前贈与を行いたい場合にも、専門家にアドバイスを求めると良い。

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