自分年金として注目されているiDeCo(イデコ)はとってもお得な制度なのだが、素人が始めるには高いハードルがある。その一つが「運営管理機関選び(金融機関)」だ。下手な選び方をすると、税制メリットが吹き飛ぶ恐れがある。

iDeCoはどうやってはじめたらいいのか?

iDeCoとは、個人型の確定拠出年金だ。老後資金専用の積立口座で、加入資格ごとの拠出限度額が設定され、毎月の掛金と運用益に対し非課税メリットを受けられる。受取は60歳以降で、一時金または年金で受取、それぞれに税制優遇がある。

では、iDeCoはどう始めたら良いのか? 残念ながらそこが複雑で、場合によっては大きな落とし穴になりえる。なぜならば、iDeCoは初回の加入時と毎月の運用手数料がかかり、この手数料が窓口により異なるからだ。

iDeCoの窓口は金融機関だ。銀行、信用金庫、信託銀行、労働金庫、保険会社、証券会社、投信会社の他専業会社もある。しかし、最寄りの金融機関でiDeCoに加入をしたいと申し出てもムダだ。基本的に申し込みや問い合わせに関しては、すべてコールセンターあるいはWebでの対応となる。なぜかというと、iDeCoに関する業務は通常の金融機関の仕事とは全く異なるものであり、そもそも対応することができないからだ。

iDeCoの申し込みをするタイミングは2種類ある。転職により企業型確定拠出年金の資産を個人型に移す必要がある場合と、本人の希望でiDeCoに新規加入する場合だ。

まず転職の際、前の会社から確定拠出年金の資産移換の書類を受け取るのだが、何も考えずに同じ金融機関で手続きをしてはいけない。企業型に加入している時は会社が手数料を負担していたが、今後は自分で負担しなければならなくなるからだ。

新規でiDeCoに加入する時も同様で、iDeCoのチラシをもらったから、いつも使っているからなどの理由で金融機関を決めてはいけない。金融機関は自社の手数料を開示する義務はあるが、他社と比較して高いか安いかは教えてはくれないので、自分自身で調べる必要がある。

iDeCoには2つの手数料が掛かる

加入者が負担する手数料は主に2つ、加入手数料と口座管理手数料だ。iDeCoの口座を開設する際の加入手数料は、最低2777円かかる。これは国民年金基金連合会へ支払う手数料で、どこの運営管理機関を選んでも必ずかかる。またこの費用に上乗せして1000円程度運営管理機関独自の手数料がチャージされる場合もある。

また毎月かかる口座管理手数料は、国民年金基金連合会とお金を管理する信託銀行への支払いで、最低でも167円かかる。この他に運営管理機関が運営管理手数料として300円から500円程度チャージする。

運営管理機関によっては、資産残高が一定以上になると運営管理手数料が0円になるところがあるが、企業型からの資産移換時以外は一時金でiDeCo口座に入金できないことを覚えておこう。資産残高が50万円で手数料が安くなるということは、月1万円の積立なら少なくとも50ヶ月は割高な手数料を支払うという意味だ。

国民年金基金連合会とは、いわばiDeCoのすべてを取りまとめている国の機関で、ここにお金を支払わないわけにはいかないので、加入手数料はどこの運営管理機関でもかかる。運営管理機関によっては、運営管理手数料を0円として大々的に宣伝しているところもあるが、それでも国民年金基金へ支払う手数料は最低限かかることを忘れずにいよう。

手数料は月々の掛金から差し引かれるので、侮れない。特に毎月の掛金が少なく節税メリットが少ない場合はコスト負けになることもある。例えばiDeCoの最低掛金5000円でとりあえず始めるとしよう。所得税率が5%であれば、初年度の非課税メリットはわずか3000円だ。

これでは加入手数料分にしかならず、毎月の口座管理手数料分完全に元本割れだ。住民税の節税メリットがあるとはいえ、節税メリットだけを感じてiDeCoを始めた人にとっては完全な思惑違いとなってしまう。

では、手数料が安い運営管理機関を選ぶにはどうしたら良いのだろうか?

お勧めは次の2つの比較サイトだ。

モーニングスター https://www.morningstar.co.jp/ideco/
確定拠出年金教育協会 http://www.dcnenkin.jp/

ここを使って手数料の安い運営管理機関を3社から5社ほどピックアップして資料請求をしてみよう。iDeCoは口座開設が終わると次は運用商品選びがあるから、資料の分かりやすさ、コールセンターの対応の良さも併せてチェックしたい。

特徴的なサービスを展開する金融機関をピックアップ

2017年はiDeCo元年とも呼ばれ、これまでになかった新しいサービスを提供する運営管理機関が出てきた。加入者としてもうれしいポイントに注目して、いくつか運営管理機関を紹介しよう。

大手金融機関は、WEBサイトがとても充実してきた。分かりやすい動画が設置されたり、節税シミュレーションやライフプランシミュレーションもできたりと工夫がみられる。また無料のセミナーなどの開催も多く情報を得るための環境が整ってきた。

中でも、りそな銀行のファイナンシャルプランナーデリバリーサービスは斬新だ。全国どこでも、家庭でも職場でもファイナンシャルプランナーが訪問してお金に関する相談を受けてくれる。iDeCoに限らずお金全般の相談ができ、しかも無料というのだからありがたい。無料デリバリーでのFP相談が実際にどのようなものなのか、これから評価されるところではあるが、注目していきたい。

後発の運営管理機関だが、面白いスタンスで運営しているのがMYDCだ。毎月の口座管理手数料は最安値とは言えないが、ベネフィットワン <2412> という福利厚生の会社と提携している関係で、iDeCoに加入すると「ベネポ」というポイントがついたりするそうだ。設定されている投資信託はロボット運用。新しいものにチャレンジしたい人にはうれしいだろう。

SBI証券は投資信託の多さでは断トツだ。昨年大幅に商品を増やし、60本ほどある。一般的な運営管理機関の運用商品数が20~30本程度なのに対し、差別化されている。数だけでなく商品のバリエーションも幅広いし、商品選びのツールも充実してきた。毎月の口座管理手数料も安いので、ファンも多い。ただし、受取時に一時金と年金との併用払いができないので、iDeCoの資産と会社からの退職金を合算して受け取りしたいが、退職所得控除を超えてしまいそうな人は要注意だ。

バランスが良いのは楽天証券だ。毎月の口座管理手数料も安いし、信託報酬が安いインデックスファンドとアクティブファンドがしっかり配置されている。個人的にはセゾン投信の2つのバランスファンドに注目している。iDeCoで個別の投資信託を選択し、ポートフォリオを組み、適時リバランスをするというのは、かなり負担が大きい。その点、セゾン投信のバランスファンドは、長期分散投資のiDeCoで選択すべき運用商品として理に適っている。

運営管理機関の変更も可能

コストもかかるのであまりお勧めはできないが、運営管理機関の変更も可能だ。その際は、移換時には一旦すべての運用商品を売却して次の運営管理機関に「口座の引っ越し」をすることになる。売却タイミングによっては損失が出ることもあるので、慎重にやろう。

山中伸枝(やまなかのぶえ)
確定拠出年金相談ねっと代表( https://wiselife.biz/ ) ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからは自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、FPを目指す。著書:『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)他

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