夏の暑さも和らいで、そろそろ秋冬ファッションが気になりはじめるこの季節。新しいコートはほしいけれど、なにを選べばいいかわからないという方も案外多いのではないだろうか。今回はそんな方のために、ビジネススーツに合うコートの種類と選び方、そして組み合わせ例まで徹底的にご紹介しよう。

スーツ,コート
(写真=PIXTA)

スーツに似合う定番のコート

ひとくちに「コート」と言っても、デザインも用途も千差万別。カジュアルユースならトレンド物もありだとしても、スーツに合わせるならクラシックでトラディショナルなアイテムを選びたい。ここではビジネススタイルの王道と言える定番コート3つをご紹介しよう。

1.ステンカラーコート

スーツ,コート
(写真=PIXTA)

メンズビジネスコートの代表格といえば、ステンカラーコート。冬場の中高年サラリーマンの通勤時の制服と化しているイメージもある。逆に言えば、サラリーマンに広く普及しており、ビジネスシーンに最適なアウターとしての条件を備えているということだ。ステンカラーコートはレインコートから派生した防寒着だ。シングルブレストの前ボタンを覆い隠す「比翼仕立て」と、襟元までボタンでとめられるきちんとしたスタイルは汎用性が高く、ビジネスライクなスーツにもピッタリ合う。

素材は防水処理を施したコットンやポリエステル、ナイロンなど。売れ筋の商品だけにバリエーションも多く、最近では高機能素材のハイテク製品も登場し、ニーズの多様化に応えている。雪や雨に強く、装飾性が少なく、シルエットがゆったりしているうえ、シャツのように気軽に扱えることも、冬場のビジネススタイルとして歓迎される理由だろう。ビジネスマンなら、この冬1着はほしいコートだ。

なお「ステンカラーコート」という名称はいわゆる和製外国語で、正しくはバルカラーコート、もしくはバルマカーンコートという。もっとも海外のショップでは「Water-Repellent Overcoat」つまり「撥水性オーバーコート」という、わかりやすい商品名が主流のようだ。

2.チェスターフィールドコート

スーツ.コート
(写真=PIXTA)

その昔、イギリスのチェスターフィールド伯爵が愛用したことから「チェスターフィールドコート」あるいは「チェスターコート」とも呼ばれる、フォーマルコートのど真ん中的な定番。シングルのテーラードジャケットの丈を伸ばしたようなすらりとしたシルエットと、ノッチドラペルのキリッとした襟、両脇のフラップ付きポケットなどが特徴だ。クラシックなスタイルのチェスターコートは、上襟に黒いビロードを張ったベルベットカラーになっている。これはフランス革命で処刑されたルイ16世と王妃マリー・アントワネットに対し、当時の英国貴族が深い弔意を表したものと言われている。

そのような歴史と品格に満ちたアウターなのだが、最近ではビジネスカジュアルのファッションアイテムとして、トレンドに敏感な若者たちにも注目されているのだから、年長者も負けてはいられない。生地はウール素材が多く、防寒性に優れているので、ステンカラーコートを春秋に、チェスターコートを冬場メインとして使い分けるのもおすすめだ。

3.トレンチコート

スーツ,コート
(写真=Margarita Nikolskaya/Shutterstock.com)

「トレンチ」とは塹壕(ざんごう)のこと。19世紀のイギリスで軍服として開発されたヘビーデューティーな防寒着を元祖としている。両肩のエポーレットという肩章や、右肩にライフル銃の銃床を当てるためのガンフラップ、水筒や武器を腰に提げるための布ベルトといったパーツ類にミリタリーの名残をとどめている。

惜しいのは19世紀の戦場では必然だったこれらのパーツが、21世紀のビジネスの戦場ではほとんど無用になっていること。それはそれで男らしくてかっこいいのは確かだが、できれば現代の企業戦士に合わせた装備のアップデートも望みたいところだ。トラディショナルなトレンチのスタイルはロング丈のダブルブレストだが、男性にとってはトイレで少々扱いにくいという意外な欠点もある。

スーツに合うコートの選び方のポイント

ビジネスコートを選ぶときに気になるのは色やデザイン、そしてなによりプライスだろう。まず色はブラックやグレー系、もしくはネイビーといった定番色が筆頭候補だ。「せっかく買うのに定番なんて」と不満に思われるかもしれないが、あなたのビジネスがショービジネスでもないかぎり、大人社会のルールには素直に従ったほうが悪目立ちせずにすむ。すでにダークカラーのコートをお持ちなら、ベージュやキャメル、明るめのグレーも良い。

デザインも大人社会のルールに従って、スタンダードでシンプルなものを選びたい。スポーツ系のダウンジャケットや、ふわふわのファー付きモッズコートなどは「俺は遊ぶ金ほしさに仕事してます」と背中に書いているようなもの。あなたの職場が私服を認めているなら話は別としても、ビジネスコートはミニマルなデザインが鉄則だ。

以上を念頭に、ショップに並んだコートの色とデザイン、そしてプライスを眼光鋭くチェックして、お眼鏡にかなうものがあれば、さっそく試着してみよう。
その前に注意しなければならないのは、コートを選ぶときには、秋冬物の自前のスーツをショップに持ち込み、必ずその上から試着することだ。つまり、コートを実際に着るときの服装で試着するのだ。第一印象で選んだコートを、着慣れたスーツの上に羽織り、肩まわりに重さや違和感はないか、両腕がスムーズに動かせるかどうかを念入りにチェックしよう。ふだんは意識しないと思うが、スーツのジャケットやコートの重みはすべて両肩にかかっている。ジャケットもコートも基本的に肩で着る服なのだ。当然、着心地も肩にフィットするかどうかで決まる。サイズが合わなければ肩や首の疲労につながり、仕事に悪影響が出ることになりかねない。見た目が良くても着心地に違和感があれば、それはあなたに合ったコートではない。電車やバスで通勤している人は、つり革を持った姿勢でも着心地を試してみると良いだろう。

肩や腕回りがフィットしたら、袖丈や着丈はスーツよりも長めのものを選ぶのが基本。コートの袖が短すぎてスーツの袖が露出するのは見た目も悪いし、防寒着としても失格だろう。着丈についても、まだ寒くない時期だとブルゾン感覚で短いものを選びがちだが、そうするとコートの下からジャケットの裾がはみ出してしまうことになる。カジュアルシーンではショートコートは大人気だが、ビジネスシーンではむしろタブーだとわきまえたほうが良い。

逆にフォーマル系のロングコートは、小柄で胴長体型の日本人にとっては難度が高いアイテムだ。ビジネスコートの丈は「気をつけ」の姿勢で下に伸ばした両手の指先の位置が「フィンガーチップレングス」といわれる基本サイズ。ロング丈は膝上5~10センチぐらいまでが目安と考えて良いだろう。また、コート選びでは厚着を想定して、ついゆったりサイズを選んでしまいがちだが、「袖丈や着丈は長めのもの」といっても「大きいサイズ」という意味ではない。「ゆったり」と「ブカブカ」は紙一重だ。ビジネスの相手に引きしまった印象を与えるためにも、コートはジャストフィットを心がけよう。

スーツのコート組み合わせ例

定番のステンカラーコートを例にあげると、色はベージュ系が主流。流行に左右されないナチュラル色で、暗すぎず重すぎず、適度に落ち着いた雰囲気がある。グレーやネイビーのスーツとも相性が良い。ステンカラーコートはデザインがシンプルで、ボタンをきっちりはめると襟元まで覆ってしまうため、コーディネートはネクタイが主役だ。冬場のビジネスファッションはダークカラーが主流だから、ネクタイはパステルカラーのような明るい色を合わせたい。季節を考えて寒色のブルー系は避け、赤やエンジやイエローを選ぶのも良い。

ステンカラーコートで「ベージュはちょっと気に入らない」と思っている方は、「刑事コロンボ」的なクタクタ感がお気に召さないのではないだろうか。もしそうなら、ダークグレーや黒、ネイビーを選べば、見た目もシックで、冠婚葬祭にも対応できるメリットもある。グレーやネイビーのコートなら、ネクタイは濃いエンジや明るいグレー、あるいは思い切ってピンクなど少し派手な色もいいだろう。レジメンタルタイもキリッと引きしまった感じになる。

軽くて薄いステンカラーコートに対し、チェスターコートは格式と防寒性を兼ね備えた、重厚で本格的なフォーマルウエアだ。ビジネススーツの定番と言えるグレーやネイビー、ブラックを選ぶ場合、比翼仕立てのフォーマルなスタイルが良いだろう。キャメルもチェスターコートらしいすてきな色だ。できれば正統派のベルベット襟を選びたい。キャメルのコートならインナーのスーツはグレーでネクタイはエンジ、バッグやシューズはブラウンが良いだろう。

比翼仕立てはフォーマルすぎるとお考えなら、ボタンが表に見える打ち抜きボタンのコートもある。この場合、思い切って色や柄をジャケット感覚で選んでみるのはどうだろう。ダークカラー系のチェックも良いし、スエードやツイードの柄物も良い。複数の色を織り込んだツイードの生地は、遠目には単色に見え、至近距離では美しい織り柄が見えるという、1枚で2度おいしい素材だ。複数の色が混じり合った生地の服は、その色のどれかと同色のシャツやネクタイを選ぶとぴったり合う。チェスターコートはVゾーンが深いので、ネクタイだけでなく、シャツやベスト、マフラーもアクセントにして、多様なファッションを楽しめる。

最後にトレンチコート。正統派のダブルのロング丈は、多忙な仕事で持てあますことも少なくないので、扱いやすいショート丈や、シングルブレストがおすすめ。トレンチらしいハードボイルドなテーストは薄れてしまうが、実用的なメリットはある。

スーツに合うコートの代表的ブランド

・マッキントッシュ

アップルが販売しているコンピューターのことではなく、1823年に英国のチャールズ・マッキントッシュが創業した、トラディショナルなコートとウェザーウエアが売りの老舗ブランドだ。2枚の生地を天然ゴムで圧着したゴム引きコートは、ずば抜けた防水性能と上質な仕立てで、セレブや軍人たちの人気を博した。2007年に日本の八木通商が買収し、16年からは三陽商会がライセンス契約を得て、安価なセカンドブランドの「マッキントッシュ フィロソフィー」と、メード・イン・ジャパンの「マッキントッシュ ロンドン」という新たなラインを展開している。

・バーバリー

1856年にイギリスで創業した、あまりにも有名な老舗ブランド。88年に「ギャバジン」という耐久性と防水性に優れた布地を開発して特許を取得した。この生地で開発されたトレンチコートが第一次世界大戦で英国軍に採用され、人気を不動のものにした。1924年にはキャメル地に黒・白・赤のラインが交差する「バーバリー・チェック」を発表。現在ではブリティッシュトラッドを象徴するブランドとして広く世界に認められている。

・ヘルノ

1948年、イタリアでジュゼッペ・マレンツィとアレッサンドラ夫妻がレインコートのメーカーとして創業。その後プロダクトを多様化して、男女の幅広いコレクションに発展した。日本には71年に上陸し、大阪に第1号店をオープンしている。トラディショナルでクラシックな英国ブランドに対し、ヘルノは最新技術とトレンドを適度に取り入れたイタリアらしいハイセンスなアイテムを展開している。素材の良さと品質の高さには定評があり、ヘルノの代名詞とも言えるダウンをはじめ、アウターの一流ブランドとして卓越した人気と評価を確立している。

コートはしっかり吟味して選ぼう

メンズのコートの種類はレディースほど多くないが、素材やデザインは多種多様で、選ぶとなると、それなりの時間とエネルギーが必要になる。ファッションに興味がない人にとっては面倒な話かもしれないが、ビジネスウエアを選ぶのは、仕事に対する自分の考えや信念を再認識する機会にもなる。(ZUU online編集部)

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