ビジネスシーンにおいて、スーツの着こなしスキルは欠かせない。自分自身のスタイルを表現する方法としてだけでなく、取引する相手や顧客に安心感や信頼感を与えるツールとなり得るからだ。

時代によって変わるトレンドの良さを取り入れるのも、流行に影響されないタイムレスな良さを取り入れるのも、ビジネスを有利に運ぶための演出となる。しかし、どのようなスーツを着るにしても、外してはいけない「スーツの着こなし方」がある。

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)


スーツの着こなし:基本的なマナー

どのようなスタイルで着るスーツでも、われわれには自他ともに恥ずかしくない着こなしをする必要性がある。トレンドを取り入れた装いや、小物による装飾をしていたとしても、基本的な着こなしのマナーを守っていなければ「どこか頼りない」という印象を与えかねない。

部下や同僚、取引先の信頼を得ることができる着こなしのマナーを、3つのポイントに分けて説明していこう。

1つ目のポイントは「シルエット」だ。肩の形や腹囲、ヒップや太もものラインを意識したスーツ選びは、他人に与える印象もスマートにする。そして、スーツの着こなし方によっても美しいシルエットを作ることが可能だ。

ポケットにメモ帳やスマートフォンを入れない。パンツ丈をたるませない。座る時はジャケットのボタンを外す。これらの細々とした配慮が美しいラインと自信を生み出し、他人に安心感と信頼感を与える

2つ目のポイントは、他人に良い印象を与えるための「見せ方への細やかな配慮」だ。ジャケット、手元、パンツ、足元の4つの部位に分けて説明しよう。

まず、相手に不快感を与えないジャケットの着こなしは「サイズ」が重要視される。サイズ違いのジャケットは、しわやたるみを作り見栄えが悪くなるためだ。着丈が短すぎる場合はヒップのラインが強調され、間抜けな印象を与えかねない。他にも、肩幅や肩のラインに合っていないジャケットはごわつきやすく、不安な印象を与えやすい。

次に手元に関するマナーだ。シャツの袖はジャケットから数センチ出るように意識したい。手元に注目しやすくなるだけでなく、白い袖が清潔な印象を与えやすいからだ。

パンツの丈や太さは、自分の体形に合うサイズを選ぶと良い。また、パンツの裾はシングルや、裾にゆとりのあるモーニングがフォーマルだが、裾を折ったダブルもスマートな印象を与える。パンツには常に折り目をつけ、しわが無いように気を付けたい。

最後に足元への配慮だ。スーツと靴の組み合わせも大事だが、靴下の色や柄にも気を付けたい。白いシャツは清潔な印象を与えるが、ダークカラーの多いスーツと靴のつなぎとして白い靴下は適していない。相手は名刺交換やあいさつの時に足元を見ている。足元こそ最も気を付けたい場所なのだ。

3つ目のポイントは「崩し方」だ。クールビズの時期や退勤後の時間にネクタイを外すことがあるが、下手な崩し方は「見苦しい」という印象を与えてしまう。ネクタイを外していても薄手のジャケットを着るなど、だらしないと思われないための配慮は欠かせない。

スーツの着こなし:正しいサイズ感

先述のように、スーツは正しいサイズ感を守らなければ相手に間抜けな印象を与え、不安を感じさせかねない。

高級ブランドのスーツでも、自分の体形やラインに合っていなければ「格好悪い」と思われてしまう。そのため、スーツとは本来、購入するのではなく、あつらえるべきアイテムだと言える。オーダーする際は全身を計測するため、サイズを間違えることはない。既製服を購入する際は、自分でサイズを意識しなければならない。気を付けるべきポイントをまとめるので参考にしてほしい。

ジャケット

ジャケットのサイズ感は、大きく分けて5つのポイントで判断する。「肩まわり」「背中」「胸まわり」「着丈」そして「袖口」だ。

「肩まわり」は、ジャケットがたるんでしまってはいけない。首の付け根から肩の先端までのラインを美しく見せることを意識する。肩先は1センチ程度、つまめる空間があれば十分だ。それ以上の余裕を持たせると、肩先が重く見えるので気を付けたい。

「背中」は張りやしわができないサイズを選ぶ。サイズが小さい場合は横に、大きいと縦にしわができるので気を付けたい。また、窮屈に感じるようではスマートな動作ができない。しゃがんで何かを拾うような姿勢になった際に、肩が張らないかどうか確認をするのも良いだろう。後ろから見た時に、脇の下にたるみができないサイズを選ぶことも大切だ。

「胸まわり」は余裕がありすぎると、前傾姿勢になった際に内ポケットが見えてしまう。こぶし1つ分程度のゆとりがあれば窮屈さを感じることもなく、見栄えもスマートになる。ボタンを留めた際にシワができる場合は窮屈な状態なので、サイズが合っていないと言える。ジャケットを羽織ったまま立った状態と座った状態で、窮屈に感じないかどうか確認すると良い。

「着丈」はヒップが半分隠れる程度が理想的だ。短すぎると、先述したようにヒップが露出して恰好悪い。また、長すぎるとだらしない印象を与える。スーツを購入した時よりも体重が増えて体格が変わった人は胸板が厚くなり、着丈が上がってしまっていることもある。購入してから長く着続けているスーツは、一度チェックしてみるべきだ。

「袖口」は、腕を下ろしてシャツが3センチ程度(1インチ)袖から出るくらいが最適だと言える。腕時計を見るポーズをとってみると、サイズが合っているかどうかを確認しやすい。腕を曲げて拳を胸元に寄せる。腕時計がシャツに隠れない状態で、シャツから2センチ程度の位置にジャケットの袖がくるぐらいなら丁度いいだろう。腕時計を見るポーズをした際にもサイズ感が合っているか、シワが寄り過ぎていないか、全体のシルエットと一緒に姿見鏡で確認してみると良いだろう。

欲を言えば、内ポケットの大きさや形状にもこだわりたい。なぜなら、内ポケットの位置や大きさによって、中に財布やスマートフォンを入れた際にウエストラインが崩れてしまう場合があるからだ。内ポケットの位置は、高めで横開けのファスナータイプならば崩れにくいだろう。スーツは見える場所だけに配慮するものではない。ビジネスと同様、実に奥深いことが分かる。

パンツ丈

直立した時に靴下が見える履き方は、パンツ丈が短すぎると言える。靴を履いた状態でパンツの裾前がスラっとしたノークッションか、若干のたるみがあるハーフクッションならシルエットも崩れない。現代の流行は、スマートさを演出する着こなしだ。無駄なたるみを無くし、足元のラインも控え目にしたい。

Yシャツ

Yシャツで気を付けなければならないのは、首回りの寸法(ネックサイズ)だ。襟は緩すぎても窮屈すぎても、ネクタイを結んだ際に襟の形が崩れやすくなる。首回りは、2本の指が入るくらいのゆとりを持つことが目安だ。襟はワイドスプレットと呼ばれる大き目のものを選ぶと、ジャケット内部に襟が入るため見栄えが良い。Vゾーンは注目されやすいので注意が必要だ。また、肩幅や袖の長さのサイズが合っていないものは問題外だ。全体的なサイズはタイト気味に、スマートな物腰に見えるものを選びたい。

ネクタイの合わせ方

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(写真=Irina Braga/Shutterstock.com)

ネクタイを結ぶ際に、剣先はウエストライン辺りにくるようにする。つまりベルトの位置だ。それよりも短くても長くても、相手には不自然な印象を与えるので長さは間違えてはいけない。また、スーツに合わせる際には、色や柄よりも意識しなければならないものがある。それはトーン(色調)だが、トーンは淡色・中間色・濃色の3つで考える。スーツが濃色の場合に濃色のネクタイを合わせると、全体的に暗い印象を与えてしまう。つまり、スーツが濃色ならネクタイは淡色といったように、アクセントを作ることを意識する。また、時代によってサイズ感が異なるため、バランスを考慮して、タイトなスーツには細身のネクタイを合わせる。

スーツの着こなし:色のコーディネート

カラーコーディネートは誰もが意識することだ。しかし、トレンドの色や柄を取り入れたいと考えた結果、どこか浮いたコーディネートになってしまうことも少なくない。

そもそもビジネスウエアとしてのスーツは、取引相手に信頼感や安心感を与えるツールの1つということを忘れてはならない。そのため、まずは基本的なカラーコーディネートができるように一式をそろえたい。

まず、スーツに関して言えば、無地のダークトーンが良い。ダークトーンとは、ダークグレー、ダークブルーを指す。この基本的な色を着こなせなければ、他のカラーやチェック、ストライプといった柄入りのスーツを着こなすことは困難だろう。繰り返して言うが、スーツはビジネスシーンで関わる相手に信頼感や安心感を与えるツールなのだから、基本が大切なことは言うまでもない。

ネクタイも、無地のものをそろえることを勧めたい。複雑に色が混ざり合ったものは主張が強く、失敗する恐れがある。例えばダークトーンのスーツに合わせて、ライトグレーやライトブルーの無地のネクタイを結ぶ。その際は柄ではなく、素材にこだわる。例えば、ポリエステルではなく、シルクやウール、コットン、麻、ニットといったものを持つと、同じ色でも印象を変えることができる。

シャツも同様に、まずは白の無地を選ぶべきだ。襟や袖の形状、ボタンのデザインなど、こだわればシンプルな白シャツの中にも自分を表現する方法はいくつもある。もし、どうしても色のついたシャツを選びたいというのならば、紳士的でスマートな印象を演出できる薄い青色のシャツが良い。清涼感や誠実さといったイメージを与えることができるのも、青色の特徴だ。

スーツとシャツ、ネクタイ以外にも、カラーコーディネートする際に気を付けるべき点がある。それは足元や後述する小物の色だ。靴下はパンツの色に合わせられるよう、ダークトーンのスーツに合わせる。靴は黒かブラウンが良い。また、ベルトと鞄の色はスーツか靴の色に合わせると失敗しない。

王道を着こなすことができるようになったならば、次は「守破離」の「破」として、シャツやネクタイの色に幅を持たせても良い。

シャツならば、白と青のストライプ柄のシャツや淡い暖色系のシャツを取り入れてみると、これまでの印象とは全く異なった雰囲気を演出できるようになる。ネクタイの色を変える場合は、更にバリエーションを増やすことができるだろう。例えば、無地の白シャツに赤色系のネクタイを合わせることで、情熱を表現できる。柄物で威厳を表現したり、薄いピンク色で親近感を表現したりもできる。

しばらくは、基本の白色・青色のシャツに新しい色のネクタイを合わせながら、自分に合ったカラーを探すことをお勧めする。Vゾーンに見えるネクタイとシャツは、全体の印象を決めかねない。そのため、変化を加えることを楽しみながら少しずつ試していくと良い。

通常ならば、シャツとネクタイの色と柄を変えるだけで十分だ。しかし、それでも物足りないという人には「断捨離」の「離」として、基本のスーツから離れ、4、5着目のスーツとしてライトグレーやブラウンのスーツも良いだろう。まずは初心に返り、シャツは白、ネクタイはシンプルなものから合わせる。そうすれば失敗する可能性は減る。

スーツの着こなし:合わせる小物の種類

スーツ,時計
(写真=BlackCat Imaging/Shutterstock.com)

小物は種類が多いと、かえって主張が強くなりすぎる。小物で個性を表現したい場合はワンポイント程度とし、複数を身に着ける場合は色を合わせるなどして、スーツに同化するような身に着け方を心がけるべきだ。

具体的に、どのような小物をどう身に着けるべきかについて説明していこう。

「腕時計」は、場面に合ったものを身に着けたい。スーツを着用している際に身に着ける時計と言えば、ビジネスウオッチかドレスウオッチだ。ドレスウオッチとはパーティーなどの際に身に着けていく時計だが、この2種類があればビジネスシーンでは十分だ。他にもスポーツウオッチやファッションウオッチもあるが、業界や取引相手の嗜好に合わせる必要がある場合以外は、スーツに合わせるべきではない。

スーツとバンドのカラーを合わせるなどして腕時計の与えるインパクトをコントロールすると、他の小物との組み合わせもやりやすい。

「ベルト」は小物ではないが、アクセントになるので意識したい。注意点は、カジュアルなベルトを身に着けないこと。また、色はブラックかダークブラウンが望ましい。ただし、靴やスーツの色に合わせて慎重に選ばなければ、ウエストラインが浮いて見えるので注意が必要だ。

「タイバー(タイピン)」はシルバーのシンプルなものを身に着けたい。また、徹底してシンプルに着こなしたい場合、タイバーでネクタイの小剣だけを挟むように留めると大剣に隠れ、まるでタイバーを着けていないように見える。ちょっとした着崩しのテクニックだ。

「メガネ」を着用している人の場合、基本的にはビジネス用を選ぶ。ビジネス用はシルバーフレームのシンプルなものや、ナチュラルな雰囲気を演出できるフレーム無しのものならば、無駄な主張は感じられない。スクエアタイプのレンズは威厳や貫禄を表現し、ナイロールフレーム(レンズ下部がフレームレスのもの)はドライな印象を与えることもあるため、交渉や取引の際には注意が必要だ。

「財布」はかさばらない長財布が良い。本来、パンツやジャケットのポケットは、シルエットの美しさを追求するために何も入れるべきではない。そのため、できるだけラインを崩さない薄い財布が好ましい。また、長財布ならば紙幣が折り曲げられることもないため、会計時にもスマートな支払いができる。

「手袋」や「マフラー」は季節が限定されてしまうものの、お洒落を楽しめる小物なのは間違いない。手袋の色はライトグレーやベージュ、ライトブラウンが基本だ。手袋は薄く、ジャケットの内ポケットに入れたとしてもラインを崩さないものを選びたい。また、紙幣を数えることができるほど、薄手でフィット感のあるものが望ましい。

マフラーはグレーやブラウン以外にも、赤や白といった明るい色も楽しむことができる。首元を寒風より守るために身に着けるが、同時にVゾーンのコーディネートを隠してしまう。そのため、シャツとネクタイで作ったカラーコーディネートに上書きして演出するアイテムとして、結び方や色、素材を研究してお洒落を楽しむ小物と言える。

スーツの着こなすということは、ただ恰好良いということではない(まとめ)

ビジネスウエアとしてのスーツの着こなしは、ただ恰好の良さを主張するためのものではない。それは、配慮やセンスを示し、ビジネスにおいて相手に安心感や信頼感を与える手段だということを忘れてはならない。

本当にスーツを着こなしたいのならば、仕立屋に頼んでスーツを1着あつらえてみるといい。スーツの型やデザイン、生地の知識だけではなく、スーツ本来の目的を理解した職人が「自分だけの1着」をあつらえてくれる。

もちろん、完成された1着のスーツだけでは、スーツを着こなしていると言うことはできない。Vゾーンや袖口、足元への配慮は自分自身が注意しながら学び、スタイルを構築していかなければならない。それらの見せ方への配慮を徹底して考えぬいた者だからこそ、スーツを着こなしているという自信を持つことができるのだ。(ZUU online編集部)

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