「小屋ブーム」の背景や真偽を確かめるべく、小屋暮らしの認知拡大・普及に取り組む「YADOKARI」の相馬由季さん(TINYHOUSE ORCHESTRA事業部長)を訪ねています。

前編 では小屋ブームの背景を、 中編 では小屋暮らしのコスパについてそれぞれ掘り下げました。

最終回となる後編では「日本でこれから小屋暮らしは定着するか?」について探ってみたいと思います。

日本には小屋暮らしできる環境が整っていない

小屋, タイニーハウス, デメリット
(写真=筆者撮影)

ーー「小屋ブーム」が来ているとはいえ、まだ「小屋暮らし」を本格的にする人はほとんどいないと、 中編 でおっしゃっていました。今後小屋暮らしが日本で広がっていくためにはどういうことが必要だと思いますか?

2つのことが必要だと思っています。1つは「認知」が広まること。そもそも、こういう住まいの選択肢があるということが広がっていくということですね。もう1つは「環境」です。

ーー都内でタイニーハウス暮らしをしようと思っても、今はできる場所がないということですね。

そうです。

中編 でお話ししたタイニーハウスのコミュニティのようなものが作れたら良いのですが、土地が安いとなると郊外になってしまって、そうなるとどうしても住める人の職業が限られてしまいます。

YADOKARIでもコミュニティづくりを進めたいとは思っていまして、都内でも通えるぐらいの場所でできたらと思いますね。

ーー今は認知も広がっていないし、環境も整っていない、と。鳥が先か、卵が先か、という話しかもしれませんね。

そういうことです。なので、YADOKARIでは同時並行で進めたいと思っています。認知を広げつつ、コミュニティづくりや、タイニーハウスホテルなどの体験施設づくりを進めつつ。

認知の拡大については、タイニーハウスに特化したメディア「 TINYHOUSE ORCHESTRA (タイニーハウスオーケストラ)」を7月26日に開設したところです。

タイニーハウスに関する基礎知識やイベント・ワークショップ、タイニーハウスを使った店舗や宿泊施設、実際に購入できるタイニーハウスの情報を発信しています。今後はタイニーハウス作りのリアルタイム配信やタイニーハウスコミュニティの紹介も考えています。

(写真=筆者撮影)
(写真=筆者撮影)

小屋暮らしに向いている人、向いていない人

ーータイニーハウス暮らしに向いているのはどういう人だと思いますか?

本当に好きなものとか人、好きな場所で好きな仕事をして生きていきたい人。これは特別なことじゃなくて、根本的な欲求で、当たり前の幸せです。それを実現したいなと思ったときに選択肢のひとつとしていいんじゃないかなぁと思いますね。

何が自分にとって幸せなのか、って人によっていろいろあると思います。都心の高級マンションに住んで豪華な暮らしをすることが幸せな人もいれば、温かいご飯を食べることが幸せだと感じる人もいる。

それがアパートでも、一軒家でも、シェアハウスでもなんでもいいと思うんですけど、幸せの選択肢の一つとして、小屋が合う人がいるんじゃないかなっていう感じですね。

ーー逆に、小屋ぐらしに向かない人っていうのはどういう人だと思いますか?

アメリカでも、タイニーハウスに住んでみたけど合わなかったという人はいましたね。その人は何がダメだったかというと、やっぱり狭すぎた(笑)。モノを所有できないことがストレスになってしまって、辛く感じる人もいるそうです。

女性だと、流行の服を着たい、流行のものがほしいとか、そういうタイプの人だと、モノを置きたくても置けないとなると辛い。どんどん捨てられればいいですけど、捨てられない人は狭い空間だと辛いと思います。流行とかに興味がないし、本当に自分が心地よいと思えるものだけあればいい人はぴったりだと思う。

ーー相馬さんご自身は結構、ミニマリストだったりするんですか?

意外とそうでもないです(笑)。ゾウの置物とか、どうでもいいものが結構好きだったりするんですよ。私は無理して極限まで減らさなくても、タイニーハウスの中にある程度モノがあってもいいと思っています。それが本当に自分の好きで、大切なものであれば。

小屋が社会問題を解決する

ーー一度、住んでみないと自分が小屋暮らしに向いているか、向いていないか、わからないかもしれませんね。

そうだと思います。なので、1週間や1カ月、ミニマムな暮らしが体験できるような場を作りたいなと思いますね。それが地方活性化、つまり地方への移住体験などとセットにできたら面白いとも思います。

ーーなるほど。小屋は社会問題の解決にも一役買うことができそうです。

そうなんですよ。実際、今も遊休地の活用として「小屋」が注目されています。

ディベロッパーが土地を取得して、開発が始まるまでだいたい2〜3年くらい期間があきますが、その間土地に対して固定資産税がかかってしまいます。どうせなら、開発する前に、地域のにぎわい生み出せるといいな、ということで、駐車場よりもこういう移動可能な小屋を選ばれる方が増えていて。

(写真=筆者撮影)
(写真=筆者撮影)

今、私たちがいる「BETTARA STAND 日本橋」(※上の写真。取材が行われた場所)がまさにそうで、遊休地を活用して小屋を移動させてきてできたお店なんです。1年後か、3年後か、何年後かは分からないのですが、いつかは開発されてしまう土地に暫定的なお店をつくる。移動がカンタンなタイニーハウスだからこそできることですよね。

もしかしたら小屋暮らしに興味あるけど、見たこと無い人は、遊休地活用しているところに出かけてみるのも一つかもしれません。まずは見たり、体験したりすると良いかともいます。

日本で小屋暮らしが広がるのは何年後?

ーー今後、小屋暮らしを広めていくためにどのような活動をしていきたいと思いますか?

「小屋暮らし」を一過性のブームでは終わらせたくないなと思います。いま、小屋ブームが起きていて、それだけ認知が広がるということはいいんですけど、流行りで終わらせてしまうのではなくて、しっかり精神性を伝えたいです。「ファッション小屋暮らし」じゃなくて、幸せを追い求めるための一つの手段なんだよっていう「核」の部分をしっかり伝えていきたいです。

ブームって強くて、メディアとか雑誌で取り上げられるのですけど、そこにひっぱられずに我々が発信したいことを発信し続けたいですね。

ーー日本で小屋暮らしが定着するまで何年ぐらいかかるでしょうか?

ここ1年ぐらいで、体験できる場ができるように進めてはいるつもりです。実際に小屋暮らしをし始める人が増えてくるのは2〜3年後くらいかなと思いますね。

たぶん、メジャーな住まい方になるかと言えば、そうではないとは思いますが、あと5年ぐらい経てば、ある程度の人が住み始めるんじゃないかなと思いますね。

ーーいつか、実際に住んでいる人のインタビュー記事なども読んでみたいです。

そうですね。一人でも、二人でも住み始める人が出てきて、メディアで取り上げられて、知っている人が増えればまた変わってくると思います。

ーーありがとうございました!

小屋で2時間取材、快適でした!

占めて2時間ほど、小屋でつくられた飲食店「BETTARA STAND 日本橋」で取材を行いましたが、小屋の中はとても快適で、外の熱気もまったく気になりませんでした。

自分の好きな空間を自分でカスタマイズしたら一体、どんなに快適に暮らせるのだろうか……想像するだけでもとてもワクワクします。

家賃って高いな、もっと安く押さえられないかな。そう思った人は一度、小屋について調べてみてもよさそうです。自分にとって何がコストで、何がパフォーマンスなのかを考えられる機会になりそうです。

取材に協力してくれたのは

YADOKARI

タイニーハウスの販売や、タイニーハウスに関連するメディアやイベントの企画・運営を行う。「ミニマルライフ」「タイニーハウス」「多拠点居住」などを通じて、場所・時間・お金に縛られないライフスタイルを実現し、人生の満足度、幸福度を向上させることを目指している。豊かなライフスタイルをテーマにした書籍『月極本』も発行しており、最新刊に『月極本3 好きなお金、嫌いなお金。』がある。日本の小さな住まいの実例集、『ニッポンの新しい小屋暮らし』(光文社)も発売中。

くすい ともこ
DAILY ANDS編集長。北陸の地方紙で5年間記者として勤務後、Web編集者に。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーに資産運用を実践中。

(提供: DAILY ANDS

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