マンション経営やアパート経営の成功事例を紹介する書籍は数多く出版され、金融機関やデベロッパーの宣伝をみると、賃貸経営が簡単にできるような気がしてきます。もちろん、すべての人が必ず成功するわけではありませんが、マンション経営はリスクを知っておくことで未然に失敗を防ぐことも可能です。失敗事例とその原因を知り、成功につなげていきましょう。

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(画像=(写真=ilkercelik/Shutterstock.com))

マンション経営の失敗談

まずはマンション経営に失敗した事例を2つ紹介します。「どうすれば成功できたのか」「どうやったら挽回できるのか」について考えてみてください。

● 言われるままに契約をしたが……入居者がつかなかった事例

会社員のAさん(43歳)は、妻、小学生2人の子どもと一緒に30年ローンで買った家で暮らしています。将来の学費や老後の生活費のことなど、きちんとした計画を立てているわけではありませんが、何となく不安を感じています。ある日、新聞広告でマンション経営の存在を知り、セミナーに参加してみました。その後、熱心に勧誘され、新築区分マンションを現金で購入したのです。この投資が、年金代わりになると安心していました。

ところが、郊外の駅から徒歩20分のところにあるマンションは3カ月経っても入居者がつきません。毎月、マンション管理組合に納める管理費と修繕積立金の2万円は自分のお小遣いを切り詰めて支払うありさまです。紹介された管理会社に問い合わせてみると、「がんばって募集してはいるのですが……」の1点張りでした。後で知ったことですが、この不動産管理会社は、建物の保守などがメインの会社で、入居者募集は得意でなかったようです。募集賃料を下げたところ、購入から5カ月後に何とか入居が決まりましたが、転勤族の単身赴任という入居者のため、長期の入居は望めません。また空室になったときの管理費を考えると頭が痛いAさんです。

● 経年劣化とともに入居率が低下し、キャッシュが回らなくなった事例

Bさん(29歳)はサラリーマンリタイアを目指し、地方の高利回り中古物件を探す日々でした。ある日、物件検索サイトで利回り20%の高利回り物件を見つけます。土地が広いために銀行からの評価も高く、とんとん拍子に購入へと進みました。夢のオーナー生活への一歩を踏み出したと大喜びです。購入した物件は、総戸数6戸のRC造で、築年数は30年になります。古めの物件のため購入金額も低く、ローン返済期間は15年と短いですが、月々の返済額は満室想定家賃の50%程度です。

外観はいかにも年季が入った建物という感じで、クラック(ひびわれ)や塗装のはがれもみられます。しかし手元資金が少ない状態で購入したため、修繕にも踏み切れません。そのうちに最上階の1室で雨もりが発生したのです。応急処置として、もっとも安い防水工事をしましたが、3カ月後に再発します。これが原因かは定かではありませんが、この部屋の入居者は退居してしまいました。その後も1人、2人と退居が重なり、募集をかけても成約にいたりません。希望者が内覧に来ることはあっても、外観の傷みと内装の古さをみて、顔色が変わっていったのです。ついにローンの返済額が賃料を上回り、Bさん自身の給料から返済の不足分を補填するようになってしまいました。

失敗するとどうなるのか

AさんとBさんはともに収入を増やそうとして取り組んだマンション経営で、逆に持ち出しが発生する状況になってしまいました。当初の目的からすると、失敗したといえます。彼らが挽回する余地はあるのでしょうか?また、この状況が続くとどうなるのでしょうか?

● 売却するまで失敗かどうかはわからない

2つの事例では、少なくとも現金収支のうえでは赤字が発生しています。当初に思い描いていたマンション経営とは程遠いものとなったでしょう。この時点では、2人とも失敗を自覚しているはずです。ただ、あくまでもこの赤字は日々の収支の話です。購入価格よりも高値で売却できれば、損失を補填できるかもしれません。前者はインカムゲイン、後者はキャピタルゲインとなりますが、物件を売るまで本当に投資が失敗したかという結果はわからないのです。

Aさんのマンションが新築にもかかわらず、なかなか入居者がつかなったのは管理会社のせいもあるかもしれませんが、立地や物件そのものに問題があった可能性があります。幸いにも現金で購入しているので、この築浅マンションを売れば、手元にいくらかの資金が残ります。損失を補填できるかどうかはわかりませんが、失敗を教訓にして、また次の物件を買えばいいのです。マンション経営のいいところは、ギャンブルなどと違って、失敗しても知識や経験値を蓄えて次に活かせるところです。なお、物件を保有している間に税務上の赤字が出ているときには、所得税の還付が得られるケースがあります。多角的な視点でみないと、失敗かどうかはわからないのです。

● 任意売却で何とかなるケース

Aさんは現金で購入し、管理費の滞納もありません。比較的スムーズに売却が可能でしょう。しかし、問題はBさんのように融資を受けて購入している場合です。基本的にローンを完済できない場合、物件を売ることはできません。購入したマンションは金融機関へ担保として抵当権がついているためです。いつ競売※にかけられるかわからない不動産を買う人はいないでしょう。売却価格がローンの残高を上回るようなら、問題なく売却できます。下回るようなら、不足分の資金を調達して補填しなければなりません。 ※融資返済が滞り、債権者が裁判所を通じて強制的に売却すること

このような状況で活躍するのが任意売却です。金融機関と話し合い、売却価格がローンの残高を下回る場合でも、抵当権を外してもらうことを約束してもらうのです。残りの債務(残債)は返済計画を立て直してコツコツと返します。サービサーと(債権回収業者)を介して圧縮できるケースもあります。月々のローン返済が滞るようになり、任意売却の交渉もうまくいかない場合は、担保権が実行されます。つまり競売です。裁判所が強制的に物件を売却するもので、基本的にローンを返済しないかぎりは防ぐことができません。残債は引き続き金融機関に返済することになります。

任意売却と競売、いずれにしても残債という借金だけが残ります。わかりやすい失敗の例です。それよりも、空室を減らして経営を立て直したほうが賢明です。どうしても入居者がつかず、ローン残高より高値で売ることも難しいといった場合のみ、任意売却を考えるか競売を検討するほうが良いでしょう。

● ローンの残りをどうしても返せない場合はどうするか

任意売却か競売をしてローンだけが残った場合、高い収入と責任感がある人はそのまま返済を続けるでしょう。しかし生活するだけのお金を捻出するのに精一杯で、返すお金がないという人もいます。借金を整理する債務整理の種類には、任意整理、個人再生、自己破産、特定調停などがあります。任意整理は任意売却と同様、関係者と調整して債務を減らしてもらうものです。個人再生と自己破産、特定調停は裁判所に申し立てます。自己破産すると弁護士など一定の職務につくことができなくなるため、人によっては大きなリスクとなります。返すあてのない借金をすると先が見えなくなり、自暴自棄になる人もいるかもしれません。ところが、合法的に債務を減らすことは可能なのです。たとえ、一度マンション経営に失敗しても、再出発は誰にでもできます。

マンション経営に潜むリスクと対策

上記の失敗談は、マンション経営において常につきまとうリスクに対処できなかった事例といえます。マンション経営における代表的なリスクの例をみていきます。

● 戦略を誤るリスク

目的と目標をしっかりと定めていないために、状況の変化に対応できないリスクです。AさんBさんともにあてはまります。Aさんは老後資金の確保を目的として意識していれば、立地にもう少しこだわりを持てたかもしれません。Bさんは長期的な目線で修繕管理し、入居者を維持できていた可能性があります。

● 空室リスク

マンション経営は住空間を提供するサービス業です。顧客がいなければ成り立ちません。空室が発生するリスクはもっとも恐れるべきものです。空室の発生は立地が大きく関わってきます。自分が住む部屋を探すときに、何を基準にするでしょうか?最寄り駅からの徒歩分数など、物件の場所が第1条件となる人は多いはずです。特に都市部の公共交通機関が発達しているところでは比重が大きくなります。車社会の地方では、駐車場があれば場所にはこだわらないという人も多いでしょう。それでも、人口が少ない地域よりも多い地域のほうが空室リスクはおさえられます。立地で失敗しても、物件の管理や集客方法による挽回は可能です。浴室乾燥機やオートロックなどの設備を充実させることは競争力を高めます。家賃を数カ月分無料にするフリーレントもよく使われる手法です。管理会社任せにせず、自ら集客の工夫をして満室にした大家の例は数多くあります。

重視するポイントランキング

(出典:SUUMOジャーナル、2015年

● 修繕リスク

建物は数十年もの長期間にわたって使い続けるため、適切な修繕は必要不可欠です。状況に合わせて入居者が満足できる仕様を維持しなければ、Bさんのように空室だらけになってしまいます。売却時にも、管理状態の良し悪しが影響します。不具合があれば値下げを要求されるかもしれません。瑕疵(かし)担保責任(隠れていたキズが購入後に発覚し、賠償や補修をされること)の問題もあります。反対に、築年数に比べてきれいな建物は、高値で売れる可能性が高まるのです。購入時に修繕費がどれくらいかかるのか見積もっておかないと、後で苦労します。不動産会社のアドバイスも参考にして計画を立てましょう。

● 資金繰りのリスク

突然の退居や故障による修繕など、マンション経営には急に現金が必要となることがたびたびあります。購入の際にも手持ちの資金をすべて使うことはやめておきましょう。受け取った賃料は使わずに貯めておき、不意の支出に備えてください。使わずに済んだ場合は、次の物件を買うときの自己資金になります。支出に耐えられずローンの返済が滞ると、前述の競売か任意売却によって物件を手放すことになるかもしれません。手放したほうがいい場合もあるのですが、長期の運用を目指しているのであれば、やむをえず売却というのは避けたいところです。融資には他にも、審査落ちするリスクや金利が上昇するリスクがあります。マンション経営は、現金収支の管理と金融の知識が鍵を握るのです。

どのようなタイプの人が失敗しやすいか

失敗談やリスクをまとめると、マンション経営で失敗しやすい人のタイプが浮かび上がってきます。販売会社や仲介会社がすすめるままに、「自分で物件のリスクを判断せずに購入してしまう人」「人の言うことを鵜呑みにしてしまう人」は失敗しやすいといえます。そうはいっても、専門家の知識が必要な場面では、力を借りなければいけません。他の業者からも見積もりをもらったり、書籍やセミナーで勉強したりして、判断力を養っていく必要があります。知的好奇心も大事な素養です。

相手の立場に立って考えることも重要です。不動産会社は基本的に仲介手数料で稼ぐビジネスモデルです。一部の心ない業者は、売ったあとに空室が発生しようが関係ないといった考え方をします。購入後も管理会社としてつきあいを続けている業者はそのようなことはありません。鵜呑みにしない判断軸を持つためには、関係者を知ることも必要です。

数字で考えるのが苦手な人はトレーニングを積んだほうがよいでしょう。「今の入居者が全員退去したら、敷金の返還と修繕費、広告費で当面必要となる資金はいくらか?」「数年後には賃料がどれくらい下がると予想できるか」などイメージすることも重要です。さらに、「そのときローンの返済比率は充分か?」など、「起きた出来事」「これから起こるであろうこと」を数値化して考えなければ効率的なマンション経営はできません。表計算ソフトなどで青写真を描いてみましょう。立派な経営計画書ができれば、融資も受けやすくなります。

目的を考えずに漫然と「融資が出て買えるから」「今買っておかなければ損する気がする」というような理由で手を出してしまうことも失敗につながります。こういった態度は受け身の経営になりがちです。マンション経営は金融商品と違って、所有者の行動が結果に大きく影響します。自分で戦略を立て、迅速に行動してください。

マンション経営で失敗しないためのポイント

マンション経営で失敗しないためにできることとしては、書籍やセミナー・専門家の意見を聞いて「知識と判断力をつけること」「数値化して考えること」「目的意識を持つこと」などが挙げられます。マンション経営に取り組む理由は人それぞれですが、目的を達成できなかった場合は失敗といえます。多くの場合で共通するのは、得られるはずだった利益が得られなかったということです。最終的に売却益が出ることもありますが、任意売却または競売で処理した場合、ローンのみ残るこということもあります。そのような場合でも、債務整理をすることで借金を軽くする方法はあり、まだ挽回は可能です。失敗する原因としては、空室リスク、修繕リスク、資金繰りのリスクなどがあります。これらのリスクを十分踏まえたうえで、マンション経営を成功へと導いていきましょう。 (提供:Nowstate