世界的に取引量が増加している仮想通貨。その先駆けであり、取引量が最も多い「ビットコイン」の名称は世界的にも日本国内でも知られるまでとなったが、それに合わせて「採掘(マイニング)」というキーワードも頻繁に耳にするようになった。仮想通貨との関連が深いこの「採掘(マイニング)」とは、一体何を意味するのか。

採掘・マイニングとは?

仮想通貨,ビットコイン
(画像=PIXTA)

日本語で「採掘」と翻訳されるマイニングとは英語で「mining」と書く。日本語での意味は「採掘」「採鉱」などで、その意味の通り、何かを掘り起こすその動作を表す。では、仮想通貨とこの「採掘(マイニング)」というワードはどのように結びつき、どのような意味を持つのか。

結論から言えば、仮想通貨業界における「採掘」とは、ビットコインに代表される仮想通貨の売買取引などを記録する作業にコンピューターを使って貢献し、その対価として新たに発行される仮想通貨を得ることを指す。「まだ発行されていない仮想通貨を掘り起こす(=得る)」というイメージから「採掘(マイニング)」を呼ばれるようになった。

では具体的に、仮想通貨の売買取引を記録する作業に貢献するとは、どういった行為を指すのか。そして一体誰が採掘をしており、採掘をするためには何が必要なのか。マイニングはビジネスになるのか。最近の採掘(マイニング)の潮流にも触れながら説明していきたい。

そもそも仮想通貨・ビットコインとは?

採掘・マイニングについて説明する前に、仮想通貨について簡単に説明する。

仮想通貨とは、インターネット上に存在する通貨のことを指す。円やドルのように紙幣や硬貨などは存在しないものの、インターネット上での商品・サービスの購入や送金などに利用でき、仮想通貨の取引所で売買をすることも可能となっている。ビットコインが仮想通貨の代表格で、現在1000~1500種類あると言われる仮想通貨の中で、最も多い流通量を誇る。

この仮想通貨には、中央銀行のような中央集権的な管理者がいない。そこで疑問としてあがるのが、不正が起きないように誰が仮想通貨の健全性を保ち、取引情報を記録しているのかという点だ。これに貢献しているのが「採掘(マイニング)」という作業である。採掘作業を行っている個人や法人を「採掘者(マイナー)」と呼ぶ。

採掘・マイニング作業とは何を指すのか?

採掘・マイニングが、仮想通貨の売買取引を記録する作業であることはこれまでに説明してきた。もう少し具体的にこの採掘・マイニング作業について掘り下げて説明する。

全世界における仮想通貨の取引記録はインターネット上の「ブロックチェーン」という台帳に記録される。このブロックチェーンにおいて、取引記録は一定の規則にしたがって鎖(チェーン)のようにつなぎ合わされ、情報が更新されていく。採掘・マイニングとは、この取引記録を採掘者・マイナーが「承認」し、鎖の末尾につないでいく作業を指す。

一見簡単そうに見えるが、採掘者・マイナーが取引記録を承認するためには、コンピューターの演算機能を使って難解な数学のパズルを解かなければならない。そして、最初にこのパズルを解いた採掘者・マイナーのみに「承認権」が与えられ、実際にその権利を行使して承認作業を完了させることで仮想通貨を得ることができる仕組みだ。

つまり、1件の取引に対し、1人の採掘者・マイナーしか報酬を得られない。この状況で発生する事態、それが「誰よりも早くこのパズルを解く」という競争だ。

採掘・マイニングで報酬を得るために必要なこと

採掘・マイニングで報酬を得るためには、難解なパズルをいち早く解くという競争に勝たなければならない。そして、パズルを解くためにはコンピューターが必要になる。つまり、この競争に勝って報酬を得るためには、高性能なコンピューターが必要になる。しかも大量に。

ビットコインが発行され始めたころは、まだ採掘・マイニングの存在はあまり知られていなかった。また、採掘者・マイナーの数も世界的にまだ多くなかったため、個人や家庭で所有しているコンピューターを使っても、この競争に勝つことがある程度可能だった。

しかし2018年現在、仮想通貨の価格高騰も相まって、既に多くの企業がこの採掘・マイニング事業に参入している。そして、多額の設備投資によりハイスペックのパソコンを多数揃えていることから、個人のパソコンではこの「競争」に勝つことはほぼ不可能な状況となっている。

採掘・マイニングで報酬を得るためには、この競争に勝ち抜くための先行投資が必要になってくるわけだ。

「採掘工場」「マイニング工場」とは何か?

「採掘工場」「マイニング工場」という言葉がある。その言葉通り、採掘・マイニングをする工場のことを指すが、ポイントは「工場」と呼ばれるほどに広い敷地を使って採掘を行っている企業が世界には存在するということだ。

マイニング工場には何が置いてあるのか。設備としては、膨大な数のパソコンとパソコンを冷やすためのファンなどの冷却装置、そして非常用電源なども備わっている。

いち早く採掘・マイニングの競争に勝つために、マイニング工場に備えられたコンピューターはフル稼働を続ける。フル稼働を続けるコンピューターが発する熱によりコンピューター自体が壊れることや計算速度の低下を防ぐためには、当然冷却装置が必要になる。

そしてコンピューターを稼働させるためには電力がいる。この電力の安定供給はマイニング工場にとっては生命線となる。非常時に備えた非常用電源が必要なのはこのためだ。また、電力やコンピューターの管理に必要な「人」も必要になる。競争に勝つために、最新コンピューターの導入やスペックアップも常に求められる。

では採掘・マイニング事業はビジネスとして儲かるのか?

マイニング作業にはコストがかかる。初期投資としては、コンピューターや冷却装置、電源関係の設備投資が必要なほか、運転資金としては人件費や電気代がかかってくる。採掘・マイニング作業の特徴として、この電気代が膨大な金額になることが挙げられる。

これらの全てのコストを、仮想通貨取引の「承認」によって得られる報酬(仮想通貨)内で抑えてはじめて、採掘ビジネスによる収益が上がるというわけだ。

一方でマイニング事業に参入する企業は急速に増え始めている。ライバルが増えれば増えるほど、ハイスペックなコンピューターを増やして太刀打ちしなければならない。また、報酬として得た仮想通貨は高騰の期待もあれば暴落のリスクもある。相場の値動きによっては、黒字見込みから一転、赤字に転落するというリスクもあるわけだ。

日本国内でも本格化しつつあるマイニング事業への参入

採掘・マイニング事業に参入している日本の企業は既に存在する。DMM.com株式会社やGMOインターネット株式会社、そしてSBIホールディングス株式会社などだ。

GMOインターネット株式会社(本社・東京都渋谷区/代表取締役・熊谷正寿)は2017年12月20日、プレスリリースを発表した。その内容は、同社のヨーロッパ法人を通じて仮想通貨の採掘・マイニング事業を開始したというものだった。北欧のマイニング工場でマイニング用のコンピューターを稼働させ、報道発表では「今後は、段階的に機器を投入し、事業の拡大を進めてまいります」としている。

GMOインターネット <9449> は、インターネットのインフラ事業を中心に事業規模を拡大してきた。現在は、インターネット広告事業やモバイルエンターテイメント事業、ドメイン名登録・レンタルサーバー事業などを手掛ける。

採掘・マイニング事業への参入は、さらなる事業規模の拡大に向けた同社の取り組みと言える。同社は、マイニング用のコンピューターの性能をさらに高めるため、半導体設計技術を有する企業とパートナーシップを結び、最先端の技術を結集した半導体チップの開発も進めている。

DMM.comやSBIホールディングスは国内でいち早く参入

動画配信サービスなどを手掛けるDMM.comもマイニング事業に既に参入している。2017年9月8日の報道発表は、仮想通貨事業部を社内で発足させ、DMMマイニングファームの運営を開始するというものだった。

同社は報道発表で、将来的には世界のトップ3に入る規模のマイニングファームを目指すことを明言している。そのほか、一般の人でも気軽にマイニングによる仮想通貨の報酬獲得ビジネスに参加できる「DMMクラウドマイニング」というサービスも実施すると明らかにした。

SBIホールディングス <8473> もマイニング事業に対していち早く動いている。既に採掘・マイニング事業を中核に据えたSBI Cryptoを設立している。詳細は明らかになっていないものの、既にマイニング事業を開始したことが明らかになっている。

SBIホールディングスは採掘・マイニング事業のほか、仮想通貨の関連事業に積極的に参入する方針を示している。例えば、ブロックチェーン技術を活用した送金サービスの確立や仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)のプラットフォーム運営などだ。

増え続けるアルトコインと膨脹するマイニング市場

仮想通貨という概念が生まれ、ビットコインが誕生し、ビットコイン以外の仮想通貨も日に日に増加しつつある。採掘・マイニング事業はビットコイン以外の仮想通貨の誕生とともに、さらにその市場規模を膨脹させている。ビットコイン以外の仮想通貨はアルトコインと呼ばれる。アルトコインにおいても、採掘・マイニング作業における報酬は同様に得られる。

一方で、既にレッドオーシャン化しているマイニング市場。事業参入には一定の事業規模と投資が今後も必要になってくるとみられている。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)