女性起業家の成功例は男性起業家に比べるとまだまだ少ない。テッククランチの調査(2017年4月19日付記事 )によると、2009〜2017年に設立資金を調達した国際企業4.3万社のうち、女性の設立者がひとりでも含まれていた企業はわずか6791社(15.8%)だった。VCから出資をうけている女性設立者の企業の割合は2009〜12年にかけて8%増えたものの、2012〜17年にかけては平均17%のまま頭打ちしている。つまり過去5年はほとんど成長していないということだ。

そんな中、ゴールドマン・サックスやNASA、Facebook、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンといった国際トップ企業でのキャリアから転身し、女性ならではの柔軟な発想とバイタリティーを活かし、活躍している女性起業家も少なくはない。

国際トップ企業から起業家に転身

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

マリアム・ナフィシー氏 が2007年サンフランシスコで設立したミンテッド は、インデペンデントなデザイナーやクリエーターが自分の作品を販売できるオンラインマーケットだ。主にグリーティングカードを中心に取り扱っており、過去5回の調達ラウンドで総額8910万ドルを調達している 。

ナフィシー氏はゴールドマン・サックスでキャリアをスタートさせ、スタンフォード大学経営大学院卒業生として初めて、1998年に化粧品オンラインショップ「Eve.com」を設立。初年で1000万ドルを売り上げ、2000年にはインキュベーターのアイデアラボに1億ドルで売却した。

カトリーナ・シュナイダー氏はベンチャーキャピタル企業AFスクエアのベンチャーパートナーとして、UberやLyft、Spotify、ドロップボックスなどに投資してきた凄腕起業家だ。しかし妊娠したのをきっかけに、「妊娠中の女性が安心して服用できるビタミン剤が手にはいりにくい」事実に気づき、2015年リチュアル を立ち上げた。

リチュアルでは安全な原料のみを必要な量だけ使用した女性用総合サプリメントを販売しており、ただサプリメントを販売するだけではなく、「きちんと継続して服用することの重要さ」を提供しているという。毎日飲むのが楽しくなるような、女性にアピールするスタイリッシュなパッケージも特徴だ。販売価格もひと月分30ドルとお手頃だ。過去3回の調達ラウンドで、ファンダーズファンドなどから総額1550万ドルを獲得した。

女性の視点から「男性用自然派化粧品」を開発したのは、ミア・サイニ・ダッチノースキー氏とローラ・リソフスキー・コックス氏だ。自分たち夫がアウトドア活動後の肌を労わるために、妻の高級クリームを拝借するのを見て思いついたのだという。

2015年にシカゴで立ち上げたOars + Alps は、自然素材にこだわった保湿クリームと洗顔料のセットが40ドルなど。

両者はハーバード大学とMIT卒、ゴールドマン・サックスやNASA、ブルームバーグ、AOL、Facebookでビジネスの経験を積んだ一流キャリアの持ち主。シードラウンドで130万ドルを調達した。

元高級ブランドデザイナーが教える「起業成功のコツ」

2016年に1000万ドルを売り上げたジュエリーショップ「キャットバード 」。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下のセフォラなどのデザイナーだったロニー・ヴァーディ氏が2004年に立ち上げた。トレンドを意識しないカジュアルだが高級感あふれるシンプルなデザインが人気を呼び、現在は化粧品やホームアクセサリーも取り扱っている。キャットバードの運営チームは女性中心で、従業員51人中男性はたったひとりだそうだ。

独立したジュエリー小売業者としては異例の成功をおさめた秘訣について、ヴァーディ氏は「(ビジネスを)常に長期戦でとらえること」「流行に流されず、納得できるものだけを作ること」と語っている。起業を考えている人へのアドバイスは、「最初から利益をだせると期待しない」「節約できるとことは節約して、将来利益になると思うところは賭けにでる」。

例えばオフィスを構えるにあたり予算がかぎられているのであれば、スタイリッシュで高価な家具は我慢して、事業に役立つ高価なソフトウェアに投資する。ヴァーディ氏自身、最初の店は自ら内装を手掛け、家具は安価なIKEAばかりだったという。(ガールボス2016年7月26日付より )。

ささいなことではあるものの、最初から無理しない、長い目で事業を育てていくというのが、男女関係なくどんな起業にも共通する成功のカギなのだろう。

女性設立者のスタートアップを支援するインドの女性起業家

インドの女性起業家アヌ・ダッガール氏 は自分で事業を始めるだけではなく、女性起業家を支援する目的で、女性が立ちあげた事業のみに投資するベンチャーキャピタル企業フィーメール・ファウンダーズ・ファンド を運営している。

ダッガール氏自身はインド初のワインバーを開店させた後、インドにインスパイアされたファッションやジュエリーを販売する会員制オンラインショップ、エクスクルーシブリー(Exclusively)を設立。ニューヨークのヴァッサー大学卒業後、ロンドンビジネススクールでMBAを取得している。

2013年に立ち上げたフィーメール・ファウンダーズ・ファンドは、過去2回の調達ラウンドで総額3500万ドルを獲得。出会い系サイト「デーティング・リング(Dating Ring)」、ブライダルコンシェルジュサイト「Lover.ly」、学生向け職探しサイト「ウェイアップ(WayUp)」、女性専用オンラインクリニック「メイヴィン・クリニック」など、2017年12月までに合計38社の女性設立者によるスタートアップに投資している。

世界的規模で見ると、女性の社会進出を促進する動きが高まっているわりには、期待通りの効果を発揮しているとはいいがたい。しかしゆっくりではあるが女性が起業しやすい環境が整い始めている。こうした風潮が世界中に広がり、政府や大手企業などによる支援体制が強化されれば、より多くの女性がビジネスアイデアを形にすることができるのではないだろうか。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)