シンガポール・ダイヤモンド投資取引所(SDIX)が新たな投資商品「ダイヤモンド塊(Diamond Bullion)」を発売した。どことなく金塊を思わせるデザインをほどこしたクレジットカードサイズの容器に、時価10万~20万ドルの研磨済みのダイヤモンド5個が納められている。SDIXのモバイルアプリやサイトを通し、リアルタイムな価格データに基づいた取引が行える世界初の投資グレードの電子ダイヤモンド取引商品だ。

天然のままのダイヤモンドの売上は2030年にかけて年間1~4%、供給は最高1%の成長を続けるとの予想されているなど、ダイヤモンド市場は低迷から回復の兆しを見せている。

洗練されたデザイン、追跡マイクロチップ内蔵

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(画像=Diamondmintサイトより)

2017年10月にから発売されているこの新商品。ケースはゴールド、シルバーの2色から選べ、ちょっとしたディスプレーとしても目をひくだろう。発行元はシンガポール・ダイヤモンド・ミントカンパニーだ。

投資家はSDIXのモバイルアプリやサイトから常にリアルタイムな価格データを知ることができるほか、ダイヤモンドの取引から鑑定、関連データへのアクセスまで豊富なサービスツールを利用可できる。ほかのコモディティー取引にように卸値で取引し、プロセスに透明性と信頼をもたらすことで、ダイヤモンドが安全資産に生まれ変わる。

またマイクロチップを内蔵 しているため、紛失や盗難の被害にあった際、簡単に追跡可能だ。

トレーダーはSDIXの電子決済取引機関に登録されるが、将来的にはブロックチェーン技術を利用した分散型台帳システムの導入も検討中だ。

ミントカンパニー会長「投資家がダイヤモンドの真の価値にアクセスできる初の機会」

SDIXは世界初のダイヤモンド投資専用取引所 として2015年に設立された。これまでダイヤモンドが資産取引には不向きとされてきた理由は、天然の鉱物であるがゆえに原石の価値が主観的であったためだ。一方同じ天然の鉱物にも関わらず、金は安全資産としての地位を確立している。

SDIXはこうしたハードルを取り除き、ダイヤモンドを金と同等の安全資産の位置付けに押し上げることを目標としている。シンガポール・ダイヤモンド・ミントカンパニーのタン・スリ会長が「ダイヤモンド版金の延べ棒」と称する新商品は、「投資家がダイヤモンドの真の価値にアクセスできる初めての機会」と期待されている。

SDIXの試みによってダイヤモンドが安全資産として受け入れられる環境が整えば、投資商品として世代を超えて受け継がれていく資産になる可能性は高い。

同社のサイモン・マレー副会長は、「SDiXはコモディティ取引技術をダイヤモンド市場に採用することで、本当の価値を発見するメカニズムを構築した」と述べている。

投資商品としての価値が高いダイヤモンド、金やプラチナに勝る利点とは?

SDIXの狙い通り、ダイヤモンドは安全資産として受け入れられる日がくるのだろうか?

ジュエリーに加工されたダイヤモンドは資産運用としての価値が低いが、投資商品という観点で見るとダイヤモンド自体の価値は高い。また金やプラチナにはない利点もある。

重量によって金額が増す金やプラチナの場合、買い増せば買い増すだけ広い保管場所が必要になり、換金の際の持ち運びも労力を要する。ダイヤモンドであればいくら額が大きくなっても、両手で持ち運べないサイズになることは考えられない。価格変動も金やプラチナほど激しくなく、安定性がある。

資産運用としてダイヤモンドを所有する際の注意点はカラット数だ。1カラットに満たない小ぶりのものでは価値がつきにくいという。

低迷から回復の兆しを見せた2016年ダイアモンド市場 売上2割増

ベイン・アンド・カンパニーが2017年12月11日に発表した調査報告 によると、2015年は低迷していたダイヤモンド市場だが、2016年は天然のままのダイヤモンドの売上20%増、トップ5の製造業者の営業利益は3%増と回復の兆しを見せている。天然のままのダイヤモンドの需要は2030年にかけて好調な伸びを維持すると予想されている。ジュエリーとしてのダイヤモンドの売上には変動が見られなかった。

最近ではロンドンのダイヤモンド製造業者ジェム・ダイヤモンドがアフリカでゴルフボールの大きさに匹敵する910カラットのダイヤモンドを掘り当てた。無色のダイヤモンドの中でも希少価値の高いタイプAで、世界で5番目、発見されたレソト鉱山では最大にして最高級のダイヤモンドだという(ブルームバーグ2018年1月15日付記事 )。

前述したように、ダイヤモンドの価格を正確に予想するのは困難を極めるが、リベラム・キャピタルのアナリスト、ベン・デーヴィス氏は4000万ドル相当と見積もっている。

ジェム・ダイヤモンドにとってこの巨大ダイヤモンドは、今年1月初旬に採掘した117カラットと110カラットに続く掘りだしものだ。2017年12月以降70ペンス前後で低迷していた同社の株価は2018年1月15日、93ペンスまで値を上げた。2月9日現在は86ペンスに落ち着いている(ロンドン証券取引所データ )。

「ダイヤモンドは安全資産になり得る」との認識を社会に促すと同時に、こうしたポジティブな情報がひんぱんに市場を騒がせれば、より多くの投資家が投資商品としてのダイヤモンドに目を向けるかも知れない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)